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第64話 みんなでタコパ④

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 火力が必要なのでガスで直火で焼くのがおすすめだ。我が家で作るタコ焼きはカリカリなので、しっとりしたタコ焼きも嫌いではないが、あんまり食べた気がしないんだよな。
 ──ちなみに何度も言うが、我が家は代々東京生まれの東京育ちである。

 なのになぜか我が家にだけタコ焼き器があって、まだタコパという言葉が一般的でない時代から、子供の頃、日曜日に父がいない日は、時々お昼ご飯がタコ焼きだった。
 母方の親戚が大阪にいたので、そこで食べて母が気に入ったのかも知れないが。
 美味しいと思ったものは何でも取り入れるスタイルの親だったからな。

「さあ出来たぞ、順番に配ってくれ。かなり熱いから、少し冷ますように。」
 俺はめんつゆ入りと生クリーム入りを、3つずつ皿にのせて、めんつゆ入の方にだけ爪楊枝を刺し、それぞれ味が違うことを説明してくれるよう、ハンザさんに伝えた。
 ちなみに青のりは、俺がタコ焼きにかけるのが苦手なのでかけない。お好み焼きにはかけるんだがな。鰹節は一応皿の横にマヨネーズとお好み焼きソースとともにそえた。

 みんなが、ワアアアアーッ!という声とともに集まってくる。
「待て待て、まずはお客様からだ。」
 お皿を手にして歩くハンザさんに群がるコボルトたちに、ハンザさんがそう言って皿を持ったまま通り過ぎると、セレス様たちのテーブルに近付いた。

「ジョージからです。タコ焼きというものだそうです。こちらの小さな串が刺さっているものと、刺さっていないもので、若干生地の味がことなります。お好みでソースなどをつけてお召し上がり下さい。」
 料理を並べるハンザさんの横で、オッジさんがそう言って、皿の横にフォークとナイフをセットした。……しまった。そのまま爪楊枝で食べるものだと伝え忘れた。

「かなり熱い料理とのことなので、ナイフを入れたあとで、少し待って冷ましてから口に運んで下さい。」
 セレス様、パーティクル公爵、サニーさんが、不思議そうにタコ焼きにナイフを入れ、フォークで口に運ぶ。それでもまだ熱かったらしく、目を白黒させていたが、声を出さないのはさすが上級貴族だった。

「──美味しい!!この不思議なソースは何かしら!片方はピピルだけれど……。
 合わせて食べると本当に美味しいわ!」
「生地そのものに味があるようだね。
 料理の熱さには驚いたが、それもうまさのひとつかもしれない。
 中に入っているものは何だろうか……?」
 セレス様もパーティクル公爵も、不思議そうに、でもとても美味しそうにタコ焼きを食べている。

「外がカリカリなのに、中がふわっとしていて……。生地のそれぞれの味が、しっかりついているわけでもないのに味の違いをちゃんと感じさせてくれますね。
 そのままでも美味しいですが、ここにソースを加えるとまた味が変わって、いくらでも食べれてしまいそうです。」
 サニーさんも嬉しそうだ。

 それを見たコボルトたちが、特にアシュリーさんが、よだれを垂らしそうな表情でセレス様たちを見ていた。みんな可愛いな。
「ジョージ!もう我慢出来ないわ!」
「大丈夫だ!どんどん焼いているから、順番に取りに来てくれ!」

 押し寄せてくるコボルトたちに、焼いたタコ焼きの皿を渡しつつ、ハンザさんにも手伝って貰いながら、次々にタコ焼きを焼いていく。カイアもコボルトの子どもたちと楽しそうにタコ焼きを頬張っていた。──すると。
「……セレス様?」
 普段なら給仕など絶対人に任せているであろうセレス様が、直接お皿を手にして、それを俺にコッソリと差し出していた。

 はしたないことをしているという意識があるのだろう、俺に気付かれてちょっと恥ずかしそうだ。
 コボルトたちがみんな夢中で食べているから、おかわりが欲しいのに誰に頼んでいいか分からなくなっちゃったんだな。
 俺は思わず微笑ましく感じて笑いながら、セレス様のお皿を受け取って、タコ焼きのおかわりを入れたのだった。

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