191 / 470
第64話 みんなでタコパ②
しおりを挟む
「パーティクル公爵がそのようにおっしゃられるのであれば……。
分かりました。僭越ながら、このサニー・ブラウン、挨拶させていただきます。」
サニーさんは緊張した面持ちで、ギクシャクしながら中央に進み出た。
「サニー・ブラウンと申します。
今回わたくしがコボルトの店の内装を手掛けるキッカケになりましたのは、ルピラス商会から依頼を受けてのことでした。
世界を革命する力を持つ店を作りたい、その内装をわたくしに頼みたい、──そういった依頼でした。」
エドモンドさんはそんなことを考えてくれていたのか。
「ルピラス商会副長のエドモンドさんは、わたくしにこうおっしゃいました。
コボルトの店の内装を頼みたいだなんて、他の人間の内装業者は、きっと全員が断るだろう。だが、全員が引き受けたとしても、俺はサニーさんに頼みたい。」
目線を落としがちなサニーさんの重ね合わせた手は、緊張からか震えていた。
「あんたは住む人や、店を営む人の望む、だが依頼主の頭の中では、漠然としたその内装像、導線づくりを、形に出来る唯一の内装業者だからな、と。」
そしてその言葉をきっかけに、目線を下に落としがちだったサニーさんが、顔を上げ、強い目線でコボルトのみんなをじっと見つめる。
「わたくしは感動に震えました。
わたくしは、パーティクル公爵やセレス様のような、以前からのコボルトに対する強い思いがあったわけではありません。
ですが、人間のコボルトに対する見方を変えたい、それを自分の内装で実現できたらどんなに素晴らしいかと思いました。」
サニーさんが、重ね合わせていた手を、ぐっと握りしめる。
「微力ながら、わたくしも皆さんの夢の実現に手を貸すことをお許し下さい。
そして、初対面の忌むべき存在である人間のわたくしたちを、こうして受け入れ、歓迎して下さってありがとうございます。
これが本来のコボルトの姿であると、人間に伝わる店を作りたいと思います。」
会場内に割れんばかりの拍手が響いた。
サニーさんは恥ずかしそうにしながら中央から退いた。
「それでは歓迎の催しを始めよう。
それぞれ手にローザンの花は持ったね?
皆さまを歓迎し、我らの新たな友人として迎え入れられることを祝して。
──友人たちに、ドライアド様の祝福がありますよう!」
コボルト達が手に手に花を持って掲げる。そしてそのローザンの花は、セレス様、パーティクル公爵、サニーさん、護衛の兵士たちにそれぞれ手渡された。
これがコボルトの正式な歓迎の仕方なのだそうだ。
オンスリーさん、アシュリーさん、ララさんが近付いて来て、俺にもローザンの花を手渡してくれる。
「ジョージの時はご飯を食べるばっかりで、歓迎の催しをしていなかったものね。この機会にジョージも改めて祝福するわ。」
とアシュリーさんが言ってくれた。
「ローザンの花は、ドライアド様の近くにしか咲かない珍しい花なんです。まるでドライアド様を守るように咲く姿が、私たちコボルトのようだと言われているんですよ。」
と、ララさん。
「だから新たな友人を集落に迎え入れて歓迎する際は、コボルト総出でこの花を渡すことにしているんです。
──我々の心を象徴するものとして。」
「嬉しいです。」
オンスリーさんの言葉にそう答えると、俺はマジックバッグからカイアを出してやり、カイアを抱っこしたまま、貰った花をカイアに渡した。カイアは嬉しそうに微笑んだ。
今日はコボルトの子どもたちも準備に追われて、催しの前に出してやっても、誰もカイアの相手をしてくれないから、準備が終わる前に出すと可哀想だなと思ったからだ。
カイアの姿を見つけて、コボルトの子どもたちが集まってくる。一緒にごちそうを食べようと声をかけてくれ、カイアはコボルトの子どもたちに連れられて行った。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
分かりました。僭越ながら、このサニー・ブラウン、挨拶させていただきます。」
サニーさんは緊張した面持ちで、ギクシャクしながら中央に進み出た。
「サニー・ブラウンと申します。
今回わたくしがコボルトの店の内装を手掛けるキッカケになりましたのは、ルピラス商会から依頼を受けてのことでした。
世界を革命する力を持つ店を作りたい、その内装をわたくしに頼みたい、──そういった依頼でした。」
エドモンドさんはそんなことを考えてくれていたのか。
「ルピラス商会副長のエドモンドさんは、わたくしにこうおっしゃいました。
コボルトの店の内装を頼みたいだなんて、他の人間の内装業者は、きっと全員が断るだろう。だが、全員が引き受けたとしても、俺はサニーさんに頼みたい。」
目線を落としがちなサニーさんの重ね合わせた手は、緊張からか震えていた。
「あんたは住む人や、店を営む人の望む、だが依頼主の頭の中では、漠然としたその内装像、導線づくりを、形に出来る唯一の内装業者だからな、と。」
そしてその言葉をきっかけに、目線を下に落としがちだったサニーさんが、顔を上げ、強い目線でコボルトのみんなをじっと見つめる。
「わたくしは感動に震えました。
わたくしは、パーティクル公爵やセレス様のような、以前からのコボルトに対する強い思いがあったわけではありません。
ですが、人間のコボルトに対する見方を変えたい、それを自分の内装で実現できたらどんなに素晴らしいかと思いました。」
サニーさんが、重ね合わせていた手を、ぐっと握りしめる。
「微力ながら、わたくしも皆さんの夢の実現に手を貸すことをお許し下さい。
そして、初対面の忌むべき存在である人間のわたくしたちを、こうして受け入れ、歓迎して下さってありがとうございます。
これが本来のコボルトの姿であると、人間に伝わる店を作りたいと思います。」
会場内に割れんばかりの拍手が響いた。
サニーさんは恥ずかしそうにしながら中央から退いた。
「それでは歓迎の催しを始めよう。
それぞれ手にローザンの花は持ったね?
皆さまを歓迎し、我らの新たな友人として迎え入れられることを祝して。
──友人たちに、ドライアド様の祝福がありますよう!」
コボルト達が手に手に花を持って掲げる。そしてそのローザンの花は、セレス様、パーティクル公爵、サニーさん、護衛の兵士たちにそれぞれ手渡された。
これがコボルトの正式な歓迎の仕方なのだそうだ。
オンスリーさん、アシュリーさん、ララさんが近付いて来て、俺にもローザンの花を手渡してくれる。
「ジョージの時はご飯を食べるばっかりで、歓迎の催しをしていなかったものね。この機会にジョージも改めて祝福するわ。」
とアシュリーさんが言ってくれた。
「ローザンの花は、ドライアド様の近くにしか咲かない珍しい花なんです。まるでドライアド様を守るように咲く姿が、私たちコボルトのようだと言われているんですよ。」
と、ララさん。
「だから新たな友人を集落に迎え入れて歓迎する際は、コボルト総出でこの花を渡すことにしているんです。
──我々の心を象徴するものとして。」
「嬉しいです。」
オンスリーさんの言葉にそう答えると、俺はマジックバッグからカイアを出してやり、カイアを抱っこしたまま、貰った花をカイアに渡した。カイアは嬉しそうに微笑んだ。
今日はコボルトの子どもたちも準備に追われて、催しの前に出してやっても、誰もカイアの相手をしてくれないから、準備が終わる前に出すと可哀想だなと思ったからだ。
カイアの姿を見つけて、コボルトの子どもたちが集まってくる。一緒にごちそうを食べようと声をかけてくれ、カイアはコボルトの子どもたちに連れられて行った。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
412
お気に入りに追加
1,851
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……


凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる