上 下
187 / 448

第63話 集落での挨拶②

しおりを挟む
「そうですね、正しい判断だと思います。
 そのままいらして下さったら、少々過激な連中は、事情も聞かずに、皆さんを集落から追い出していたことでしょう。」
 オンスリーさんはそう言ってうなずいた。
「ぜひオンスリーさんからも、集落をまとめている方に、彼らを迎え入れるよう、お口添えいただけないでしょうか?」

「もちろんです。私もぜひお会いしたいと思います。さっそく参りましょう。
 奴からみんなに話をさせます。」
 オンスリーさんはそう言って、俺たちについてくるように言った。俺はその前にララさんの家に立ち寄って、ララさんの家族も心配しているだろうから、まずは無事の報告とお詫びがしたいと言った。

「ああ、そうですね、娘たちも心配していることでしょう。ではまず、先にララの家に向かいましょう。」
 俺とララさん、オンスリーさんが、ララさんの自宅に向かい、同じようにご家族に事情を説明してわびた。

 ララさんのご両親からは、むしろうちの娘がご迷惑をおかけして申し訳なかったと、俺とオンスリーさんは謝罪を受けた。
 ララさんの行動によって、万が一パーティクル公爵が悪い人だったら、ララさんもアシュリーさんも危険な目にあっていただろうから、まあ無理もない。

 ララさんは両親と、弟2人で暮らす5人家族だった。お父さんと年の離れた弟さんが2人いて、お父さんと一番小さい弟さんが、ララさんと同じパピヨンタイプのコボルトで、お父さんも弟さんも大変可愛らしかった。
 こりゃあパーティクル公爵は、見た途端大興奮だろうなあ……。

 お母さんと上の弟さんは、アシュリーさんと同じくアフガンハウンドタイプのコボルトで、お母さんがアシュリーさんのお母さんと姉妹なのだそうだ。
 2人は従姉妹だったんだな。
 ララさんのお母さんも上の弟さんも、アシュリーさん同様大変きれいだったから、オンスリーさんの奥さんは相当きれいな人だったんだろうなと思った。

 その足で、コボルトの集落をまとめているオッジさんの家へと向かった。
 オッジさんはセレス様たちを連れてきた事情を聞いて、とても喜んでくれた。
「これは快挙だよ。みんなに伝えて、集落をあげて歓迎しようじゃないか。」

 その言葉に、さっそく俺たちは、俺とオンスリーさん、オッジさんとララさんの二手に別れて、コボルトの集落に、歓迎の催しを開きたい旨を広めて回った。
 みんな、セレス様がオンスリーさんに感謝をのべるためにいらして下さったことに、特に年配のコボルトほど感動していた。

 集落のみんなが広場に集まった。ずっと馬車の中でお待たせするというわけにもいかないので、まずはオッジさんの自宅でくつろいでいただき、その間に歓迎の催しの準備を整えましょう、ということになった。
 歓迎の催し会場は、以前塩焼きそばを作るのに鉄板を借りた、食堂を営むハンザさんの店とその周辺と決まった。

 各自の家で作った料理を持ち寄ることになり、お年寄りと子どもたちが、ハンザさんの店の飾り付けを開始した。
 俺とララさんは、パーティクル公爵たちを迎えに馬車へと戻り、コボルトたちが歓迎の催しを開いてくれることになったと告げた。

「コボルトたちが……。本当ですか?」
 パーティクル公爵は感激のあまり、思わず目をうるませている。憧れのコボルトの集落で、まさかそんなに歓迎を受けるとは思っていなかったらしい。
「突然来たのに、なんだか申し訳ないわ。」
 とセレス様は柳眉を下げた。

「みんなが受け入れる気持ちになったのだもの、気にせず楽しんでくれたほうが、みんなも喜ぶと思うわ。」
 アシュリーさんの言葉に、セレス様も納得がいったようだ。
 馬車を降りて集落の入り口に向かうと、オンスリーさんとオッジさんが待っていた。

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...