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第62話 公爵家に潜む敵②
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「この人数が入るのですか?
随分と大きいものをお持ちなのですね。
分かりました、そうしましょう。」
「──私が役人のところに向かいます。
チャーリーはこのま馬車の護衛を。」
「ハリー!怪我はもういいのかね?」
怪我をしていた兵士がパーティクル公爵にそう言い、驚いた表情でパーティクル公爵がハリーさんに尋ねる。
「はい、先程お客様に精霊魔法で手当をしていただきましたので。服は破れましたが、怪我はもうなんともありません。」
「そうか、分かった。では頼む。
──セレスが怯えておりますので、私は彼女と一緒の馬車に乗りたいと思います。
申し訳ないのですが、ジョージさんとサニーさんは、アシュリーさんとララさんと一緒の馬車に乗っていただけないでしょうか?」
「ええ、もちろんです。」
「そのほうがよろしいでしょうな。
我々は、どちらの馬車に?」
サニーさんもいつの間にか馬車から降りてきて、パーティクル公爵に尋ねた。
「そうですね、我々がセレスの馬車に乗りますので、アシュリーさんとララさんは、私の馬車にご移動願えませんでしょうか?」
「ええ、もちろん構わないわ。」
「2人きりのほうが気が休まりますものね、では前の馬車に行きましょうか。」
アシュリーさんとララさんが、パーティクル公爵の馬車に移動したので、俺はサニーさんに手伝って貰って、盗賊たちをマジックバッグの中に入れてから馬車に乗り込んだ。
馬車が再び、だがパーティクル公爵の指示で、先程よりもゆっくりめに動き出した。
「──とんでもないことになりましたが、全員無事で良かったです。」
サニーさんが俺の隣でホッと胸をなでおろした。
「この道には、いつもこのような盗賊が出るのですか?山道でもあるまいに……。
普通に人の住んでいる場所に、あのような輩が現れるのであれば、役人に警備をよこして貰わないといけないですよね。」
サニーさんが、アシュリーさんとララさんに尋ねる。
「いいえ?普段は出ないわ。私たちの集落に、定期的に泥棒は忍び込むけれど……。」
「ここは乗り合い馬車の通り道ですもの、盗賊が頻繁に現れるようなことがあれば、それこそ役人が出てきます。」
アシュリーさんとララさんがそう言う。
「こちらに向かうのは急遽決まったことなのに、セレス様を待ち伏せていた……ということでしょうか?もしそうであれば、パーティクル公爵家の中に、セレス様を狙う手のものが潜んでいることになります。」
俺の言葉に、みんなが一斉に俺を見る。
「その可能性はあるわね、お屋敷の人たちはみんないい人ばかりだったし、正直考えたくはないけれど……。」
俺も、サニーさんも、アシュリーさんも、ララさんも、楽しかった昨夜のパーティーを思い出して目線を落とした。
馬車がコボルトの集落の前についた。
塀づくりが既に終わったので、今日は集落の入口には誰も立っていなかった。
「まずは私たちとジョージだけで、元王家の王女様と、コボルトの店の内装を手掛けて下さる業者の方がいらしたことを、みんなに伝えたほうがいいと思うの。」
アシュリーさんの言葉に俺はうなずいた。
「サニーさんは、少し馬車で待っていて下さい。人間に抵抗のあるコボルトも多いので、急に知らない人間が大勢で押しかけると、刺激してしまうかも知れませんので。」
俺と、アシュリーさんと、ララさんが、まずは馬車から降りた。
後ろの馬車の御者が、パーティクル公爵に声をかけてドアを開ける。馬車から降りようとしたパーティクル公爵を俺は止めた。
「先に俺とアシュリーさんとララさんで、コボルトの集落に向かいます。みなさんがいらしたことをお伝えしてから、中にお入りいただいたほうがよいかと。」
「そうか……。コボルトを刺激してしまうかも知れないから……かな?」
「──ええ。」
「困ったわ……。」
セレス様が恥ずかしそうに柳眉を下げる。
「どうかなさいましたか?」
「お化粧が崩れてしまって……。
直したいのだけれど、化粧担当の子を連れてきていないものだから。」
ああ、貴族は自分でメイクをしないのか。
確かによく見ると、先程とは違って、セレス様の口紅が唇からはみ出ていた。落ちない口紅とか、この世界にないだろうしな。
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随分と大きいものをお持ちなのですね。
分かりました、そうしましょう。」
「──私が役人のところに向かいます。
チャーリーはこのま馬車の護衛を。」
「ハリー!怪我はもういいのかね?」
怪我をしていた兵士がパーティクル公爵にそう言い、驚いた表情でパーティクル公爵がハリーさんに尋ねる。
「はい、先程お客様に精霊魔法で手当をしていただきましたので。服は破れましたが、怪我はもうなんともありません。」
「そうか、分かった。では頼む。
──セレスが怯えておりますので、私は彼女と一緒の馬車に乗りたいと思います。
申し訳ないのですが、ジョージさんとサニーさんは、アシュリーさんとララさんと一緒の馬車に乗っていただけないでしょうか?」
「ええ、もちろんです。」
「そのほうがよろしいでしょうな。
我々は、どちらの馬車に?」
サニーさんもいつの間にか馬車から降りてきて、パーティクル公爵に尋ねた。
「そうですね、我々がセレスの馬車に乗りますので、アシュリーさんとララさんは、私の馬車にご移動願えませんでしょうか?」
「ええ、もちろん構わないわ。」
「2人きりのほうが気が休まりますものね、では前の馬車に行きましょうか。」
アシュリーさんとララさんが、パーティクル公爵の馬車に移動したので、俺はサニーさんに手伝って貰って、盗賊たちをマジックバッグの中に入れてから馬車に乗り込んだ。
馬車が再び、だがパーティクル公爵の指示で、先程よりもゆっくりめに動き出した。
「──とんでもないことになりましたが、全員無事で良かったです。」
サニーさんが俺の隣でホッと胸をなでおろした。
「この道には、いつもこのような盗賊が出るのですか?山道でもあるまいに……。
普通に人の住んでいる場所に、あのような輩が現れるのであれば、役人に警備をよこして貰わないといけないですよね。」
サニーさんが、アシュリーさんとララさんに尋ねる。
「いいえ?普段は出ないわ。私たちの集落に、定期的に泥棒は忍び込むけれど……。」
「ここは乗り合い馬車の通り道ですもの、盗賊が頻繁に現れるようなことがあれば、それこそ役人が出てきます。」
アシュリーさんとララさんがそう言う。
「こちらに向かうのは急遽決まったことなのに、セレス様を待ち伏せていた……ということでしょうか?もしそうであれば、パーティクル公爵家の中に、セレス様を狙う手のものが潜んでいることになります。」
俺の言葉に、みんなが一斉に俺を見る。
「その可能性はあるわね、お屋敷の人たちはみんないい人ばかりだったし、正直考えたくはないけれど……。」
俺も、サニーさんも、アシュリーさんも、ララさんも、楽しかった昨夜のパーティーを思い出して目線を落とした。
馬車がコボルトの集落の前についた。
塀づくりが既に終わったので、今日は集落の入口には誰も立っていなかった。
「まずは私たちとジョージだけで、元王家の王女様と、コボルトの店の内装を手掛けて下さる業者の方がいらしたことを、みんなに伝えたほうがいいと思うの。」
アシュリーさんの言葉に俺はうなずいた。
「サニーさんは、少し馬車で待っていて下さい。人間に抵抗のあるコボルトも多いので、急に知らない人間が大勢で押しかけると、刺激してしまうかも知れませんので。」
俺と、アシュリーさんと、ララさんが、まずは馬車から降りた。
後ろの馬車の御者が、パーティクル公爵に声をかけてドアを開ける。馬車から降りようとしたパーティクル公爵を俺は止めた。
「先に俺とアシュリーさんとララさんで、コボルトの集落に向かいます。みなさんがいらしたことをお伝えしてから、中にお入りいただいたほうがよいかと。」
「そうか……。コボルトを刺激してしまうかも知れないから……かな?」
「──ええ。」
「困ったわ……。」
セレス様が恥ずかしそうに柳眉を下げる。
「どうかなさいましたか?」
「お化粧が崩れてしまって……。
直したいのだけれど、化粧担当の子を連れてきていないものだから。」
ああ、貴族は自分でメイクをしないのか。
確かによく見ると、先程とは違って、セレス様の口紅が唇からはみ出ていた。落ちない口紅とか、この世界にないだろうしな。
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