上 下
175 / 448

第59話 料理対決の結果③

しおりを挟む
「そうだ、アシュリーさんとララさんを、ロンメルに紹介しないとな。」
 ソワソワしているアシュリーさんとララさんを、改めてロンメルに紹介した。
「あなたの料理、本当に素晴らしいわ!
 ねえ、うちにお嫁にこない?」

「はは、夫でなく、嫁ですか?」
 ロンメルが笑っている。アシュリーさん、俺の時と同じことを言ってるな。本当に食い道楽だよな。アシュリーさんとは価値観も合うし、アシュリーさんが人間だったらなあ。本当に嫁にしたいところだ。

 ロンメルはコボルトの料理に興味があったらしく、店が出来る前に、仕事終わりや休みに手伝いに行きたいと言ってくれた。
 店が本格的にスタートした後だと、無償であっても掛け持ちで仕事をすることになり、それは違反になるからスマンと言われた。

「とんでもないわ、あなたにそこまで迷惑かけられないもの。コボルトの料理を教わりに来るというていで、開店前とはいえ手伝いに来るだけでも、結構すれすれなんじゃない?それなのに、そんな風に言ってくれてホントにありがとう。」

 アシュリーさんの言葉に、ロンメルが優しく微笑む。ロンメルはやっぱり、俺の知人とか関係なく、誰にでも優しい男だよな。
 それにしてもこの料理……カイアにも食べさせてやりたいよなあ……。でも、この場に出すわけにもいかないからな……。

 そんな風に思っていると、
「そういえば、今日はお前の子ども、大丈夫なのか?結構遅い時間だけど。」
 とロンメルが、グラスにつがれたカハービアを飲みながら言ってくる。俺はちょうどカイアのことを考えていたので、思わずごまかす言葉が浮かばす黙ってしまった。

「──子ども!?
 ジョージ、お前子どもがいたのか?」
 エドモンドさんが驚いた顔で見てくる。
「あ……、いや、まあ、……はい。」
「ほう?男の子かね?女の子かね?」
 パーティクル公爵に尋ねられて困ってしまった。どうしよう、ないんだよな、性別。

「奥様はどんな方ですか?」
 と、悪気なく聞いてくるサニーさん。
「いえ、俺は独身です……。」
「ということは、家で1人か、それとも誰かに預けているの?
 ごめんなさいね、ジョージの都合も考えずに、急に料理をさせてしまって……。」

 セレス様が申し訳無さそうに眉を下げる。マジックバッグに入れて連れてきてるから、別にそこは今日は心配ないんだが。
 どうしよう……。本当のことを言うべきだろうか……。考えあぐねて黙ってしまった俺を見て、明るかったパーティー会場が、急にシン……としてしまう。まずいな。

「何か、言えない事情でもあるの?」
 俺の普通ではない様子を見て、セレス様が尋ねてくる。
「そこは聞かないで差し上げてください、セレス様。ジョージさんのお子さんは、ちょっと事情のある存在なので、言い出しづらいんだと思います。」
 ララさんがそう言ってくれる。

「私たちには紹介しづらい、何かがあるということね?性別も言えないってことは、身体的な何かで、あまり人には言いたくない内容ということかしら。」
「いえ、そういう、病気的な何かではないのですが……。」
 セレス様は困った様子の俺を見て、うーんと首を捻った。

「私たちが人に話すと、困るような何かということかしら。──それなら、私はこの場で話を聞いた人たちが、人に決して話せないであろう秘密を、みんなに話すわ。
 もしジョージのお子さんの話が他の人から私の耳に入ったら、私は私の話した内容も、ここにいる誰かが、他人に言いふらしたと判断するわ。それなら決して誰も話すことは出来ないでしょう?」

「そうだね。私はぜひとも、ジョージさんのお子さんを紹介して欲しいと思っているよ。
 だけどそれが出来ないのは、大勢の人に知られては困る何かを抱えているからというのが理由であるのなら、その心配を取り除いて欲しいとも思っている。」
「パーティクル公爵……。」

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』

ふつうのにーちゃん
ファンタジー
転生者グレイボーンは、前世でシュールな死に方をしてしまったがあまりに神に気に入られ、【重弩使い】のギフトを与えられた。 しかしその神は実のところ、人の運命を弄ぶ邪神だった。 確かに重弩使いとして破格の才能を持って生まれたが、彼は『10cm先までしかまともに見えない』という、台無しのハンデを抱えていた。 それから時が流れ、彼が15歳を迎えると、父が死病を患い、男と蒸発した母が帰ってきた。 異父兄妹のリチェルと共に。 彼はリチェルを嫌うが、結局は母の代わりに面倒を見ることになった。 ところがしばらくしたある日、リチェルが失踪してしまう。 妹に愛情を懐き始めていたグレイボーンは深い衝撃を受けた。 だが皮肉にもその衝撃がきっかけとなり、彼は前世の記憶を取り戻すことになる。 決意したグレイボーンは、父から規格外の重弩《アーバレスト》を受け継いだ。 彼はそれを抱えて、リチェルが入り込んだという魔物の領域に踏み込む。 リチェルを救い、これからは良い兄となるために。 「たぶん人じゃないヨシッッ!!」 当たれば一撃必殺。 ただし、彼の目には、それが魔物か人かはわからない。 勘で必殺の弩を放つ超危険人物にして、空気の読めないシスコン兄の誕生だった。 毎日2~3話投稿。なろうとカクヨムでも公開しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...