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第58話 大根のカナッペと、ブリヌイと、ミルクレープ②
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絶対に買ってきてすぐの物を使わないと、この食感は出ない。大根の葉っぱ側を普通は料理に使って、先端は少し辛いから、味噌汁や漬物、大根おろしに向いていると言われるけれど、あえて使ってやることで合う料理ってのもあるんだよな。
ちなみに、葉っぱに近いの部分が辛味少なめで一番甘いと言われている。辛い大根おろしが苦手な人はこの部分を使うといい。
冷蔵庫から生地を取り出すと、サラリと仕上がっている。いい感じだ。
フライパンにサラダ油をしいて、中火で温めたら、お玉で生地を流し込む。ちなみにお玉はパーティクル公爵家にもあった。
大根と同じくらいの大きさの、小さいクレープを作っていく。
生地に焼き色がついたらひっくり返して、裏面は10秒くらい焼いてやる。
一枚ずつ生地を焼いては皿に重ねてゆき、さましてやる。弱火で焼くと生地がフライパンにくっついてしまうので、必ず中火で焼く。次を焼く時はフライパンの熱が高すぎれば、濡れ布巾にあてて冷ましてやる。
氷水をはったボウルの上に、ボウルを重ねて、生クリームを200ミリリットル入れ、グラニュー糖を20グラム加えて、角が立つくらいまで泡立て器で混ぜる。
さました生地を何枚か重ねて、平たい皿を乗せ、その周囲に合わせて包丁で丸く切り抜いてやる。余った部分は適当に食べる。
一枚の生地に、食事を食べる時のナイフで、生クリームを薄く伸ばしたら、上に生地を重ねて、また薄く伸ばしていく。
専門の道具もあるが、うちでは使わない。この、均等に薄くのばすのが大変なんだよなあ。真ん中に生クリームをたらして、外側に広げるように、生地のほうを皿ごと回してやると、ちょっとやりやすい。
食事を食べる時のナイフを縦に立てて、あまった生クリームをこそぎ落とし、きれいに成形したら、また冷蔵庫で冷やして、ミルクレープの完成だ。カットする大きさで作る場合は、包丁をちょっとお湯で温めてやると、生地が綺麗に切りやすい。
焼いた生地に、カットしたバターとキャビアをそえて、別の生地にはいちごジャムと生クリームをそえて、ロシア伝統料理、ブリヌイの完成だ。
伝統的なブリヌイは、赤キャビアを添えるだとか、発酵させて作る薄いパンケーキだとか言うが、俺が小学生の頃食べたロシア料理の店はこのやり方だった。
今はその伝統のやり方でやっているところは少ないんだそうな。ブリニが正しいんだとか、色々言われたが、よく分からないまま、まあ、自分がうまいと思うやり方で作っている。大根のカナッペ同様、何を乗せても美味いが、俺は甘じょっぱいキャビアの組み合わせが一番好きだ。
逆に言うと、これ以外のやり方でキャビアを食べたり、キャビア単体で食べても美味いと感じない。ブリヌイの分の生地は、持ち上げて食べるので、気持ち厚めに焼いてある。俺が食べた店もそうだったしな。
もう今はなくなっちまって残念だが。
一度食べて虜になって、もう一度だけ誕生日に連れてきて貰ったのだが、かなりお高い店だったらしく、また連れてきて欲しいと頼んだが、それ以降連れてきて貰ったことはない。どうしても諦められずに、自分で調べて作るようになってしまった。
一度本場にも食べに行きたかったけど、叶わぬ夢となったなあ。
「ほー。初めて見る料理ばっかりだな。さすがジョージだ。何を作ったんだ?」
ロンメルが覗きこんでくる。
「大根のカナッペと、ブリヌイと、ミルクレープというお菓子さ。」
ロンメルが興味深げに、早く食べたそうな顔でじっと料理を見ていた。
「俺からすると、お前の作る料理も、初めて見るもの、美味いものばかりさ。」
そうか?とロンメルが嬉しそうに微笑む。
「お前は何を作ったんだ?」
「最近研究してた、コカトリスと、シーサーペントと、一角兎さ。コカトリスの毒袋を取り除いて料理するのと、シーサーペントの鱗を柔らかくするのに苦労したよ。
お前のは、なんか見事に前菜とデザートだな?メインはどうしたんだ?」
「お前こそ、メインばかりじゃないか。
対決の形を取るとは言っても、みんなで食べるつもりなんだろう?メインばかりじゃ飽きちまうからな。俺がそっちを作った。
これでバランスよく、みんなでパーティが出来るからな。審査が終わっても食べやすいよう、手に取りやすいものにしたよ。」
俺たちは顔を見合わせて、ふふっと笑い、肘と肘をぶつけあって、お互いの思いやりを再確認した。
ロンメルは俺の為に料理対決を提案し、俺はロンメルの料理を生かして、コースになるようにした。息ぴったりだな。
「さあ、食堂に運ぼうか。みんなお腹をすかせて待ってるぞ。」
「ああ、きっと喜んでくれる筈だ。」
俺たちは、パーティクル公爵家の料理人やナンシーさんに手伝って貰って、料理を台車に乗せると、食堂に運んでいった。
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ちなみに、葉っぱに近いの部分が辛味少なめで一番甘いと言われている。辛い大根おろしが苦手な人はこの部分を使うといい。
冷蔵庫から生地を取り出すと、サラリと仕上がっている。いい感じだ。
フライパンにサラダ油をしいて、中火で温めたら、お玉で生地を流し込む。ちなみにお玉はパーティクル公爵家にもあった。
大根と同じくらいの大きさの、小さいクレープを作っていく。
生地に焼き色がついたらひっくり返して、裏面は10秒くらい焼いてやる。
一枚ずつ生地を焼いては皿に重ねてゆき、さましてやる。弱火で焼くと生地がフライパンにくっついてしまうので、必ず中火で焼く。次を焼く時はフライパンの熱が高すぎれば、濡れ布巾にあてて冷ましてやる。
氷水をはったボウルの上に、ボウルを重ねて、生クリームを200ミリリットル入れ、グラニュー糖を20グラム加えて、角が立つくらいまで泡立て器で混ぜる。
さました生地を何枚か重ねて、平たい皿を乗せ、その周囲に合わせて包丁で丸く切り抜いてやる。余った部分は適当に食べる。
一枚の生地に、食事を食べる時のナイフで、生クリームを薄く伸ばしたら、上に生地を重ねて、また薄く伸ばしていく。
専門の道具もあるが、うちでは使わない。この、均等に薄くのばすのが大変なんだよなあ。真ん中に生クリームをたらして、外側に広げるように、生地のほうを皿ごと回してやると、ちょっとやりやすい。
食事を食べる時のナイフを縦に立てて、あまった生クリームをこそぎ落とし、きれいに成形したら、また冷蔵庫で冷やして、ミルクレープの完成だ。カットする大きさで作る場合は、包丁をちょっとお湯で温めてやると、生地が綺麗に切りやすい。
焼いた生地に、カットしたバターとキャビアをそえて、別の生地にはいちごジャムと生クリームをそえて、ロシア伝統料理、ブリヌイの完成だ。
伝統的なブリヌイは、赤キャビアを添えるだとか、発酵させて作る薄いパンケーキだとか言うが、俺が小学生の頃食べたロシア料理の店はこのやり方だった。
今はその伝統のやり方でやっているところは少ないんだそうな。ブリニが正しいんだとか、色々言われたが、よく分からないまま、まあ、自分がうまいと思うやり方で作っている。大根のカナッペ同様、何を乗せても美味いが、俺は甘じょっぱいキャビアの組み合わせが一番好きだ。
逆に言うと、これ以外のやり方でキャビアを食べたり、キャビア単体で食べても美味いと感じない。ブリヌイの分の生地は、持ち上げて食べるので、気持ち厚めに焼いてある。俺が食べた店もそうだったしな。
もう今はなくなっちまって残念だが。
一度食べて虜になって、もう一度だけ誕生日に連れてきて貰ったのだが、かなりお高い店だったらしく、また連れてきて欲しいと頼んだが、それ以降連れてきて貰ったことはない。どうしても諦められずに、自分で調べて作るようになってしまった。
一度本場にも食べに行きたかったけど、叶わぬ夢となったなあ。
「ほー。初めて見る料理ばっかりだな。さすがジョージだ。何を作ったんだ?」
ロンメルが覗きこんでくる。
「大根のカナッペと、ブリヌイと、ミルクレープというお菓子さ。」
ロンメルが興味深げに、早く食べたそうな顔でじっと料理を見ていた。
「俺からすると、お前の作る料理も、初めて見るもの、美味いものばかりさ。」
そうか?とロンメルが嬉しそうに微笑む。
「お前は何を作ったんだ?」
「最近研究してた、コカトリスと、シーサーペントと、一角兎さ。コカトリスの毒袋を取り除いて料理するのと、シーサーペントの鱗を柔らかくするのに苦労したよ。
お前のは、なんか見事に前菜とデザートだな?メインはどうしたんだ?」
「お前こそ、メインばかりじゃないか。
対決の形を取るとは言っても、みんなで食べるつもりなんだろう?メインばかりじゃ飽きちまうからな。俺がそっちを作った。
これでバランスよく、みんなでパーティが出来るからな。審査が終わっても食べやすいよう、手に取りやすいものにしたよ。」
俺たちは顔を見合わせて、ふふっと笑い、肘と肘をぶつけあって、お互いの思いやりを再確認した。
ロンメルは俺の為に料理対決を提案し、俺はロンメルの料理を生かして、コースになるようにした。息ぴったりだな。
「さあ、食堂に運ぼうか。みんなお腹をすかせて待ってるぞ。」
「ああ、きっと喜んでくれる筈だ。」
俺たちは、パーティクル公爵家の料理人やナンシーさんに手伝って貰って、料理を台車に乗せると、食堂に運んでいった。
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