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第55話 ララさんの行方②
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「はい、急ぎましょう。」
俺たちはララさんがさらわれた方向を追って走り出した。それをサニーさんが心配そうに見つめていた。
「……多分、ここだわ。」
アシュリーさんが見つけた場所は、とても広くてきれいな庭を持つ大豪邸だった。
この国の貴族がどの程度のお金を持っているのか分からないが、とても下級貴族のものとは思えない。
「かなり立場が上のほうの貴族かも知れませんね……。エドモンドさんを連れてこなくて正解でした。人目につかない場所から庭に侵入しましょう。」
「ええ。」
俺とアシュリーさんは、裏門と正門の間の柵で周囲を見回した。
「──ここならひと目につかなそうです。
ここを乗り越えましょう。」
「ええ。」
俺が柵に手をかけて登ろうとすると、アシュリーさんが精霊魔法で体を浮かせて、柵の向こうへと運んでくれた。
「そんな魔法もあるんですね。」
「精霊魔法は人間の使う魔法にはないものも多いのよ。さっ。行きましょう。」
俺たちは身を屈めて、木々に隠れながら庭を突っ切って建物に近付いた。
「人のいない部屋のどこかが、窓の鍵がかかっていないといいんですが……。」
「鍵をあける魔法ならあるわよ?」
「本当ですか?ああ、そもそも罠解除は精霊魔法にしかないんでしたよね。鍵解除もあるってことですか。」
「ええ。」
「じゃあ、俺が部屋の中を確認します。これだけ広い家なら、誰もいない部屋もある筈です。そこの窓の鍵をあけてください。
そこから侵入しましょう。」
「分かったわ。」
俺はこっそりと窓の端から中を覗く。ベッドメイキングをしているメイドさんの姿が見えた。始めたばかりのようで、まだ時間がかかりそうだ。ここから離れた部屋で、あいている部屋があるといいんだが……。
俺たちは静かに移動すると、誰もいない部屋、かつ、さっきのメイドさんのいるベッドのある部屋から離れた部屋を見つけた。
「──ここにしましょう。」
「鍵をあけるわよ。」
アシュリーさんが魔法を使い、俺が窓をそっとあける。たてつけが悪くて音がしたらどうしようかなと心配したが、きちんと油をさしているのかスムーズに窓があいた。
「ここで靴を履き替えましょう。泥のついた靴跡を見られたら、後で人がこの部屋に来た時に、バレてしまいますからね。」
「ええ?でも、靴なんて……。」
俺は窓のヘリに腰掛けて、靴を出して履き替えると、泥のついた靴をマジックバッグの中にしまい、床に降り立った。
「はい、どうぞ、アシュリーさん。」
俺は続いて窓のヘリに腰掛け、靴を履き替えろと言われて、困った表情を浮かべたアシュリーさんに、靴を出して渡した。
「ええ?ジョージ、あなたどうして、コボルト専用の靴なんて持ち合わせていたの?
あなたに用なんてない筈でしょう?」
コボルトの足は俺たち人間とは大分違う。だから人間の靴は履けないし、俺たち人間もコボルトの靴は履けない。
なんというか、足首の先がちょっと短くて足首が大分細いのだ。元が犬の魔物だからだろう。手の指の長さも、犬に比べれば長いほうだが、人間に比べるとかなり短い。
「まあ……、店長就任祝いのプレゼントと思って下さい。」
まあ、半分はあながち嘘じゃない。実際、長時間の立ち仕事になるだろうから、靴をプレゼントしたいなとは考えていたのだ。アシュリーさんの普段遣いの靴は冒険者用のもので、貴族街の店に立てるような、仕立てのよいものがなかったから。服は制服を作ろうと思っているが、靴はいちから作るのもな。
「ジョージ……。ありがとう。凄く素敵な靴だわ。あとでじっくり眺めるわね。」
そう言ってアシュリーさんは靴を履き替えると、自分のマジックバッグの中に靴をしまって床に降り立った。
「感知魔法を使うわ。周囲に人がいないか確認してから外に出ましょう。」
「はい。」
アシュリーさんが感知魔法を使う。
「……大丈夫よ。近くには誰もいない。外に出ましょう。」
ドアノブをそっとあけて部屋の外に出る。
「こっちだわ。」
アシュリーさんがララさんの匂いを嗅いで、その後を俺がついていく。
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俺たちはララさんがさらわれた方向を追って走り出した。それをサニーさんが心配そうに見つめていた。
「……多分、ここだわ。」
アシュリーさんが見つけた場所は、とても広くてきれいな庭を持つ大豪邸だった。
この国の貴族がどの程度のお金を持っているのか分からないが、とても下級貴族のものとは思えない。
「かなり立場が上のほうの貴族かも知れませんね……。エドモンドさんを連れてこなくて正解でした。人目につかない場所から庭に侵入しましょう。」
「ええ。」
俺とアシュリーさんは、裏門と正門の間の柵で周囲を見回した。
「──ここならひと目につかなそうです。
ここを乗り越えましょう。」
「ええ。」
俺が柵に手をかけて登ろうとすると、アシュリーさんが精霊魔法で体を浮かせて、柵の向こうへと運んでくれた。
「そんな魔法もあるんですね。」
「精霊魔法は人間の使う魔法にはないものも多いのよ。さっ。行きましょう。」
俺たちは身を屈めて、木々に隠れながら庭を突っ切って建物に近付いた。
「人のいない部屋のどこかが、窓の鍵がかかっていないといいんですが……。」
「鍵をあける魔法ならあるわよ?」
「本当ですか?ああ、そもそも罠解除は精霊魔法にしかないんでしたよね。鍵解除もあるってことですか。」
「ええ。」
「じゃあ、俺が部屋の中を確認します。これだけ広い家なら、誰もいない部屋もある筈です。そこの窓の鍵をあけてください。
そこから侵入しましょう。」
「分かったわ。」
俺はこっそりと窓の端から中を覗く。ベッドメイキングをしているメイドさんの姿が見えた。始めたばかりのようで、まだ時間がかかりそうだ。ここから離れた部屋で、あいている部屋があるといいんだが……。
俺たちは静かに移動すると、誰もいない部屋、かつ、さっきのメイドさんのいるベッドのある部屋から離れた部屋を見つけた。
「──ここにしましょう。」
「鍵をあけるわよ。」
アシュリーさんが魔法を使い、俺が窓をそっとあける。たてつけが悪くて音がしたらどうしようかなと心配したが、きちんと油をさしているのかスムーズに窓があいた。
「ここで靴を履き替えましょう。泥のついた靴跡を見られたら、後で人がこの部屋に来た時に、バレてしまいますからね。」
「ええ?でも、靴なんて……。」
俺は窓のヘリに腰掛けて、靴を出して履き替えると、泥のついた靴をマジックバッグの中にしまい、床に降り立った。
「はい、どうぞ、アシュリーさん。」
俺は続いて窓のヘリに腰掛け、靴を履き替えろと言われて、困った表情を浮かべたアシュリーさんに、靴を出して渡した。
「ええ?ジョージ、あなたどうして、コボルト専用の靴なんて持ち合わせていたの?
あなたに用なんてない筈でしょう?」
コボルトの足は俺たち人間とは大分違う。だから人間の靴は履けないし、俺たち人間もコボルトの靴は履けない。
なんというか、足首の先がちょっと短くて足首が大分細いのだ。元が犬の魔物だからだろう。手の指の長さも、犬に比べれば長いほうだが、人間に比べるとかなり短い。
「まあ……、店長就任祝いのプレゼントと思って下さい。」
まあ、半分はあながち嘘じゃない。実際、長時間の立ち仕事になるだろうから、靴をプレゼントしたいなとは考えていたのだ。アシュリーさんの普段遣いの靴は冒険者用のもので、貴族街の店に立てるような、仕立てのよいものがなかったから。服は制服を作ろうと思っているが、靴はいちから作るのもな。
「ジョージ……。ありがとう。凄く素敵な靴だわ。あとでじっくり眺めるわね。」
そう言ってアシュリーさんは靴を履き替えると、自分のマジックバッグの中に靴をしまって床に降り立った。
「感知魔法を使うわ。周囲に人がいないか確認してから外に出ましょう。」
「はい。」
アシュリーさんが感知魔法を使う。
「……大丈夫よ。近くには誰もいない。外に出ましょう。」
ドアノブをそっとあけて部屋の外に出る。
「こっちだわ。」
アシュリーさんがララさんの匂いを嗅いで、その後を俺がついていく。
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