上 下
155 / 432

第53話 ドライアドの復活と聖なる守護②

しおりを挟む
「恐らく呼んでいるのです、コボルトを守護するドライアド様が、カイア様を。」
「コボルトを守護するドライアドの子株が、カイアを……ですか?ここに来ているのがずっと分かっていたのでしょうか。」
 カイアが怯えているのは、初めての経験だからだろうか。今まで他のドライアドの子株たちと、やり取りをしたことがないのかな?

「ドライアド様の本体は、子株がどちらにいるのか把握されており、遠距離で会話をすることも可能だとのことですので、子株同士が会話することも可能なのかも知れません。
 私もドライアド様の生態にそこまで詳しいわけではないのですが、以前何度か当地のドライアド様が、同じような光に包まれたのを見たことがございます。」

「コボルトを守護するドライアドが、カイアを呼んでいるのだとしたら、会いに行ってもいいということなんでしょうか。
 案内していただけませんか?そのドライアドの子株のいるという、茨のある場所へ。」
「分かりました。そういうことならご案内しましょう。──アシュリー。お前はここで待っていてくれ。」

「いやよ、私もドライアド様にお会いしたいわ。生まれてから一度もお目にかかったことがないのよ?
 これを逃したら、二度とお会いできないかも知れないわ、私に精霊魔法を与えて下さったドライアド様に。」
 アシュリーさんは引かなかった。

「そうだな……お前は特別な加護をいただいている。あまり大勢で押しかけるのもよくないと思ったが、お前なら大丈夫かも知れないな。分かった、全員で行こう。」
 オンスリーさんの言葉に、急いで朝食の残りを平らげると、食べ終わった朝食の片付けもそこそこに、俺たちはこの土地のドライアドの子株に会いに行くことにした。

 俺は不安げなカイアを抱っこしたまま、以前調査に向かった森とは、反対側の別の森の奥地へと案内された。
 前回の森は薄暗かったが、この森はよく日があたり、暖かな場所だった。
 見たことのない花などの植物がたくさんはえていて、とても美しい森だった。
 ここにカイアの年の離れた兄弟が……。

「──こちらです。」
 巨大な棘のついた茨が絡み合い、ゆくてを遮る門のように生えている場所が、ドライアドの子株がいるという場所の前だった。
「これじゃ奥に進めませんね。
 呼ばれたのはカイアだけで、遠距離通信で話したかっただけなのかな……。」
 俺がそう言った時だった。

「おお……茨が……。」
 目の前の茨が生き物のようにうごめいたかと思うと、さあっと広がって、アーチのような通り道の空間を作る。
「入っていい……ということでしょうか?」
「恐らく……。」
「すすんでみましょう、入ってみるしか、状況が分からないわ。」

「この茨の棘には毒があります。間違っても触れぬようにお気をつけ下さい。」
 オンスリーさんの言葉に、カイアがさらに怯えてギュッと俺に抱きついてくる。
「大丈夫だ、お父さんがいるから。」
 俺はカイアを抱っこしたまま、そっと頭を撫でてやる。カイアが俺の胸に頭をつける。

 俺たちは長い長い茨のアーチを抜けた。
「素敵……。」
 思わずアシュリーさんがつぶやく。
 美しい草花に囲まれながら、日の当たる開けた場所に1本の巨大な樹木が立っている。その目の前には鏡のような透明な泉があり、その美しい風景を水面に映していた。
「これが……カイアの兄弟……。」

 俺たちは泉のまわりをぐるりと回って、ドライアドの子株に近付いた。
 子株というにはかなり大きいとは聞いていたが、本当に親のような大きさだった。
 俺がカイアを抱いて近付くと、ドライアドの子株とカイアが、突然同じ光に包まれて光った。それはとても幻想的な光景だった。

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

処理中です...