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第52話 みんなでおでんパーティー②
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おでんの具は他に、大根、ゆで卵、こんにゃく、しらたきをねじって巻いたもの、ハンペン、イワシのつみれ、ちくわぶ、がんもどき、厚揚げ、昆布巻、うずら巻という練り物を出した。こんなもんか。
これらは売ってるものがあるので、それを出して適当な大きさに包丁でカットして、鍋にぶちこんだら、顆粒だしの素と昆布だしの素と、業務用の甘いめんつゆを適当に入れて、味を見ながら煮ていく。
別に普通のめんつゆでもいいが、このめんつゆ、店に流通してなくて、いつも父が車で遠くまで買いに行っていたものなので、この味を再現するのが無理なんだよな。
うちではおでんは父が必ず作るもので、味付けはこれと決まっている。別にそこにこだわらなければ、市販のめんつゆでも、おでん専用のつゆでも構わない。
ただ、これがないとうちのおでんという気がしないのだ。うちでは煮物もうどんも、何を味付けするにも大体これを使う。
祖母の家で同じ料理を出された時に、味付けの違いに慣れなくて、食べられなかったことがあるくらい、この味に慣れている。
でも未だに父の味にはならない。他に何を入れていたんだか謎なんだよな……。
ちなみに我が家では、おでんをオカズにご飯を食べる。まあ、殆どおでんで腹一杯になっちゃうんだけどな。
ちなみにチーズ入りの肉団子だけは、俺が後から入れるようになったもので、実家のおでんには出てこない。ほかは父と同じだ。
おでんを煮ていると、アシュリーさんが戻ってきて、何を作っているの?と鍋を覗き込んできたので、おでんです、と答えた。
「──ねえ、ジョージ。」
アシュリーさんが急に真面目な顔になる。
「……種族が違うから、間違いなんて決しておこらないのに、それでもあなたは、当たり前のことのように、私を女性として気遣ってくれるのよね。ジョージのそういうところが、私は信用出来ると思うのよ。
だからあなたの言うことなら、やってみたいと思えたの。分かってくれる?」
その言葉に、俺は思わず微笑んだ。
コボルトは人間ではないけれど、個人として彼らを尊重している気持ちが、しっかりと伝わった気がして。
「いいにおーい!」
「お腹すいた~!」
「ピョル!」
そこにドヤドヤと、ナティス君とヨシュア君がカイアを連れて戻ってくる。
「皆さん外にテーブルと椅子とお皿を用意して、待ってらっしゃいますよ。」
ララさんも戻って来た。そこにオンスリーさんが2階から降りてくる。
「やけにいい匂いが、2階まで漂ってきましたよ?すっかり腹が減ってしまって……。」
オンスリーさんのお腹がぐうううううううううううううううううううううううう、と物凄く長いことなって、みんなで大笑いする。
「そろそろいい感じに煮えてますよ。じゃあ、みんなでいただきましょうか。」
俺はアシュリーさんにドアを開けてもらって、鍋つかみを出して鍋を持ちながら、オンスリーさんと共に、えっちらおっちら広場に鍋を運んでいく。業務用のデカい寸胴鍋を出してしまったので、さすがに中身の入ったこれを、1人で運ぶのはしんどかった。
みんなのワクワクする顔が広場に待っていた。それぞれ鍋から好きな具を取り出して皿に乗せると、ワイワイと食べだす。
「美味しい!」
「なにこれ?ふわふわ!卵かと思ったら違うのね!溶けてなくなるみたいに口の中で消える食物なんて初めて食べるわ!」
「それはハンペンといいます。魚のすり身を使ってるんですよ。」
「これ、食べたら、中からちっちゃな卵が出てきたよ!」
「それはうずらの卵だね。俺も小さい時、これが出てくるのが楽しみだったなあ。」
ナティス君がうずらの卵を、宝物のように眺めたあと、嬉しそうに噛みしめる。
「この黒いのは……?」
フォークで掴んだものの、恐る恐る見ながらコボルトの老人が言う。
「こんにゃくです。こんにゃく芋という専用の芋を作って作られたものです。」
「芋!これが芋!……不思議な食感だ……。
味がしみていて、とても美味いな!」
「私はこの食感が好きだわ。これはなんなのかしら。家でも出来たらいいのに。」
「ちくわぶと言って、小麦粉から作られたものです。モチモチしていてとても美味しいですよね。俺も子どもの頃から好きですよ。」
「わっ!これ中がのびるよ!あふっ!」
「それは餅巾着っていうんだ。
一気に食べると喉を詰まらせることがあるから、気をつけて食べるんだぞ?」
ヨシュア君にそう言うと、急いで食べようとしていたのを、ゆっくり少しずつ食べるようになった。素直な子だな。
「これは癖になりますな……。」
「おいひい!さすがジョーヒね!」
「やだ……食べ過ぎちゃう。」
オンスリーさんは昆布巻と厚揚げばかり、アシュリーさんは大根とゆで卵ばかり、ララさんは巾着ものばかり食べている。
ちなみに子どもたちの中で一番人気だったおでんの具は、クリームチーズ入りの肉団子だったのだが、カイアはハンペンとイワシのつみれが特にお気に入りらしい。俺の子どもの時と一緒だなあ、と思わず微笑む。
みんなおでんの珍しさと美味しさに、夢中になって食べてくれたのだった。
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これらは売ってるものがあるので、それを出して適当な大きさに包丁でカットして、鍋にぶちこんだら、顆粒だしの素と昆布だしの素と、業務用の甘いめんつゆを適当に入れて、味を見ながら煮ていく。
別に普通のめんつゆでもいいが、このめんつゆ、店に流通してなくて、いつも父が車で遠くまで買いに行っていたものなので、この味を再現するのが無理なんだよな。
うちではおでんは父が必ず作るもので、味付けはこれと決まっている。別にそこにこだわらなければ、市販のめんつゆでも、おでん専用のつゆでも構わない。
ただ、これがないとうちのおでんという気がしないのだ。うちでは煮物もうどんも、何を味付けするにも大体これを使う。
祖母の家で同じ料理を出された時に、味付けの違いに慣れなくて、食べられなかったことがあるくらい、この味に慣れている。
でも未だに父の味にはならない。他に何を入れていたんだか謎なんだよな……。
ちなみに我が家では、おでんをオカズにご飯を食べる。まあ、殆どおでんで腹一杯になっちゃうんだけどな。
ちなみにチーズ入りの肉団子だけは、俺が後から入れるようになったもので、実家のおでんには出てこない。ほかは父と同じだ。
おでんを煮ていると、アシュリーさんが戻ってきて、何を作っているの?と鍋を覗き込んできたので、おでんです、と答えた。
「──ねえ、ジョージ。」
アシュリーさんが急に真面目な顔になる。
「……種族が違うから、間違いなんて決しておこらないのに、それでもあなたは、当たり前のことのように、私を女性として気遣ってくれるのよね。ジョージのそういうところが、私は信用出来ると思うのよ。
だからあなたの言うことなら、やってみたいと思えたの。分かってくれる?」
その言葉に、俺は思わず微笑んだ。
コボルトは人間ではないけれど、個人として彼らを尊重している気持ちが、しっかりと伝わった気がして。
「いいにおーい!」
「お腹すいた~!」
「ピョル!」
そこにドヤドヤと、ナティス君とヨシュア君がカイアを連れて戻ってくる。
「皆さん外にテーブルと椅子とお皿を用意して、待ってらっしゃいますよ。」
ララさんも戻って来た。そこにオンスリーさんが2階から降りてくる。
「やけにいい匂いが、2階まで漂ってきましたよ?すっかり腹が減ってしまって……。」
オンスリーさんのお腹がぐうううううううううううううううううううううううう、と物凄く長いことなって、みんなで大笑いする。
「そろそろいい感じに煮えてますよ。じゃあ、みんなでいただきましょうか。」
俺はアシュリーさんにドアを開けてもらって、鍋つかみを出して鍋を持ちながら、オンスリーさんと共に、えっちらおっちら広場に鍋を運んでいく。業務用のデカい寸胴鍋を出してしまったので、さすがに中身の入ったこれを、1人で運ぶのはしんどかった。
みんなのワクワクする顔が広場に待っていた。それぞれ鍋から好きな具を取り出して皿に乗せると、ワイワイと食べだす。
「美味しい!」
「なにこれ?ふわふわ!卵かと思ったら違うのね!溶けてなくなるみたいに口の中で消える食物なんて初めて食べるわ!」
「それはハンペンといいます。魚のすり身を使ってるんですよ。」
「これ、食べたら、中からちっちゃな卵が出てきたよ!」
「それはうずらの卵だね。俺も小さい時、これが出てくるのが楽しみだったなあ。」
ナティス君がうずらの卵を、宝物のように眺めたあと、嬉しそうに噛みしめる。
「この黒いのは……?」
フォークで掴んだものの、恐る恐る見ながらコボルトの老人が言う。
「こんにゃくです。こんにゃく芋という専用の芋を作って作られたものです。」
「芋!これが芋!……不思議な食感だ……。
味がしみていて、とても美味いな!」
「私はこの食感が好きだわ。これはなんなのかしら。家でも出来たらいいのに。」
「ちくわぶと言って、小麦粉から作られたものです。モチモチしていてとても美味しいですよね。俺も子どもの頃から好きですよ。」
「わっ!これ中がのびるよ!あふっ!」
「それは餅巾着っていうんだ。
一気に食べると喉を詰まらせることがあるから、気をつけて食べるんだぞ?」
ヨシュア君にそう言うと、急いで食べようとしていたのを、ゆっくり少しずつ食べるようになった。素直な子だな。
「これは癖になりますな……。」
「おいひい!さすがジョーヒね!」
「やだ……食べ過ぎちゃう。」
オンスリーさんは昆布巻と厚揚げばかり、アシュリーさんは大根とゆで卵ばかり、ララさんは巾着ものばかり食べている。
ちなみに子どもたちの中で一番人気だったおでんの具は、クリームチーズ入りの肉団子だったのだが、カイアはハンペンとイワシのつみれが特にお気に入りらしい。俺の子どもの時と一緒だなあ、と思わず微笑む。
みんなおでんの珍しさと美味しさに、夢中になって食べてくれたのだった。
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