上 下
152 / 448

第52話 みんなでおでんパーティー①

しおりを挟む
 その時、ドンドンドン、とアシュリーさんの家のドアが叩かれて、俺たちはドアを振り返る。アシュリーさんがドアを開けると、いつもカイアと遊んでくれる、ナティス君とヨシュア君が立っていた。
「カイアちゃんが来てるってほんと!?」

 カイアがゆっくりとソファから降りて玄関に向かうと、お互いキャッキャしている。
「カイアちゃん、一緒に遊ぼう!」
「遊ぼうよ!」
 嬉しそうに言う2人に、お伺いをたてるかのように、カイアが俺を振り返る。

「まあ、あなたたち、急によそさまの家に来て、相手の都合も聞かずにそんなことを言っては駄目よ?ジョージさんはお仕事でこちらにいらしているのよ?」
 めっ、という表情でララさんが言う。
「うちに泊まっていけばいいじゃない?私もジョージの料理が食べたいわ。またみんなで料理をしましょうよ、ジョージ。」

「アシュリーさんまで……。」
 ララさんが苦笑したように言う。
「だって……。
 私だけがジョージの料理を食べたことが分かったら、みんなに恨まれてしまうわ?
 でもジョージの料理はどうしても食べたいんだもの。」
 困っちゃう、という表情でアシュリーさんが言う。いつも一番たくさん食べてくれるものなあ。ありがたいが。

「特に用事もありませんし、そうしたいのはやまやまですが、オンスリーさんがいらっしゃらない中、アシュリーさんお一人の家に泊めていただくわけにも……。」
「──私がどうかしましたかな?」
「あら、おじいちゃん、早かったのね、おかえりなさい。」
 そこに、噂をすれば影で、オンスリーさんが玄関にひょっこり顔を出す。

「おじいちゃん、ジョージを家に泊めても構わないでしょ?」
「ああ、もちろんだよ、問題ない。」
「ですって!ジョージ!」
 アシュリーさんは目をキラキラさせて言ってくる。カイアといい勝負だ。
 アシュリーさんにはかなわないな。
「分かりました、何か作りましょう。
 ただ、大人数となると、作れるものは限られますけど、構いませんか?」

「もちろんよ!
 さっそくみんなに声をかけてくるわ!」
 アシュリーさんはそう言って、ウキウキと家を出ていく。ララさんも、私も伝えて来ますね、と言ってそれについて行った。
「カイア、遊んで来ていいぞ。」
「やった!いこう!カイアちゃん!」
「遊ぼう!遊ぼう!」
「ピョルル!ピョルピョル!」
 ナティス君とヨシュア君が、カイアと手を繋いで家を出て行った。

 急だし、大人数だからなあ。色々仕込んでる時間はないから、大半は市販品に頼るとして、おでんでも作るかな。
「オンスリーさん、申し訳ありませんが、キッチンをお借りしますね。」
「ああ、もちろん構いませんよ。」
 オンスリーさんは笑顔でそう言うと、用事があると言って2階に上がって行った。

 俺は合いびき肉、豚ひき肉、玉ねぎ、切り餅、万能ねぎ、しいたけ、生姜、油揚げ、クリームチーズ、卵、塩、コショウ、ナツメグ、片栗粉、バター、サラダ油、顆粒だしの素、昆布だしの素、業務用の甘いめんつゆ、爪楊枝、丸い菜箸、業務用の寸胴鍋、キッチンペーパータオルを出した。

 鍋に油揚げが浸る程度のお湯を沸かし、熱湯の中に油揚げを入れ、中火で2分加熱したら、お湯を捨てて水で冷やしたあと、手で絞ってキッチンペーパータオルで余分な水気を拭き取ってやる。
 電子レンジがあれば一番良かったんだが、ないから仕方がない。

 別にザルに入れて熱湯をかけるだけでもいいし、ザルにあけて冷ましてから水気を絞ってもいいのだけど、ザルについた油って地味に洗いにくくて落ちにくいのだ。
 油抜きの為だけにそれをするのは嫌なんだよな。電子レンジだと、キッチンペーパータオルで油揚げを包んで、水を浸して加熱するだけだから、皿を洗うだけで楽なんだが。

 まな板の上に油揚げを置いたら、丸い菜箸を端から軽く押し付けるようにして、全体にコロコロと転がしてやり、端っこを包丁で切って、切れ目から袋状に広げてやる。
 包丁の背を使って全体をしごいてやってもいいが、包丁だと破れやすいので、丁寧に優しくやるのがコツだ。麺棒でも構わない。

 しいたけ8枚に対して生姜4欠片をそれぞれみじん切りにし、ボウルに豚ひき肉800グラム、小口切りにした万能ねぎを120グラム、溶き卵4個の割合で、塩コショウ少々と混ぜ合わせ、スプーンで油揚げの中に詰めたら、口を爪楊枝で閉じてやる。

 卵を1個ずつ小さな器に割り入れたら、同じく油揚げの中に入れてやり、ひだを寄せるように爪楊枝で閉じる。肉の時よりも寄せたほうが、中身が出にくくていい。
 ひき肉は固形だからほぼ真っすぐに閉じても構わないが、卵は殆ど液体だからな。
 同じように小さくカットした切り餅を油揚げの中に入れて、爪楊枝で閉じる。

 玉ねぎ2個をみじん切りにして、バターで炒めたら、ひき肉800グラムに対して、ナツメグ、塩、コショウをそれぞれ少々加えて、粘りが出るまでこねたら、卵2個、片栗粉大さじ4、炒めた玉ねぎを加えて更にこねて、しばらく休ませる。本当は冷蔵庫に入れたいところなんだがないから仕方がない。

 適当な大きさにとめて、まんなかにクリームチーズを適量入れ、しっかり包み込みながら丸めてやったら、フライパンにサラダ油を薄くひいて肉に火を入れる。後で煮込むので、型崩れしないように焼くだけだ。
 これらをおでん出汁の中にいれて、そのままじっくりと味がしみるまで煮てやるのだ。
 これらはすべて、関東ではばくだんと呼ばれるおでんの具だが、単品で煮物なんかに使われることもある料理だ。

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

Sランク冒険者の受付嬢

おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。 だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。 そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。 「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」 その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。 これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。 ※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。 ※前のやつの改訂版です ※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...