72 / 470
第26話 たまには料理しないこともある。②
しおりを挟む
集落の中で一番大きな木の建物が冒険者ギルドだった。到着の報告に来ると、中にはコボルトしかいなかった。
「コボルトの冒険者もいるんだな。」
受付カウンターで受付嬢に対応されているコボルトは、装備を身に付けており、明らかに依頼者の風体ではない。
「めったに居ないけどな。コボルト独自の拳闘士と魔法使いがいるぜ。」
冒険者ギルドの受付嬢は、ピンクの毛並みの、可愛らしい赤のイヤーシュシュを耳に付けて、ツインテールのようにした、黒目の大きなパピヨンのようなコボルトだった。
「かっ……!可愛い……!!」
俺は思わず声に出してしまう。
コボルトの受付嬢は、ふふっと笑うと、
「人間は皆さんそうおっしゃってくださいます。ララと言います。
今日は現地調査にいらしてくださったんですよね?お話は承っています。」
「あ、はい、すみません、初対面の女性にいきなり……。」
「いえいえ。
受付を済ませますので、冒険者登録証をお願いいたします。」
俺たちは冒険者登録証をララさんに渡す。
「分かるぜ、俺たちもすっかり初対面でやられちまったからなあ、ララさんには。」
アスターさんたちにも笑われた。
「あら、ララだけなの?」
声がして振り返ると、アフガンハウンドのような金色の毛並みの、美人のコボルトが立っていた。
冒険者のような出で立ちで、ララさんとにこやかに挨拶している。
「おお、アシュリー、久しぶりじゃないか。相変わらず美しいな。」
「ありがと。この間はオークのお肉をありがとね。みんな喜んでたわ。」
「なんのなんの、アシュリーにはいつも助けられているからな、冒険者は持ちつ持たれつさ。」
アスターさんたちとにこやかに話しているところを見ると、気心の知れた間柄らしい。
「今日は私が現地に同行することになっているのよ。案内と、この地域のギルドへの優先報告係ね。」
「それは頼もしい。よろしく頼むよ。
ああ、ジョージは初めてだったよな。」
「ジョージ・エイトです。よろしくお願いいたします。」
「アシュリーよ。
精霊魔法使いをやってるわ。」
「精霊魔法使い?」
「ジョージは精霊魔法使いは初めてか?」
「ええ。精霊自体は、このあいだトレントを退治したくらいで……。」
「トレントを!?
……ひょっとして、最近出回ってるステータス上昇の実は、お前さんの仕業か?」
アスターさんがこっそり耳打ちしてくる。
「まあ……当たらずとも遠からずというか、そんなところだ。」
そのままだけどな。
「コボルトは、精霊が味方してくれることが多いの。一般的な魔法使いは、元素をもとにして、この世界にあるものを使って魔法を出すけれど、精霊魔法使いは、精霊の力を借りて魔法を使うのよ。
人間にもまれにいるけれど、精霊魔法使いといえば、大体の人はコボルトを連想するわね。」
「そうなのか、俺は魔法はさっぱりだからなあ……。魔物が使っているところしか見たことがないんだ。」
「なんだジョージ、魔法使い自体が初めてなのかい?こりゃあ、いいところを見せないとだな。」
魔法使いのインダーさんが張り切ってみせる。
「魔法といえば、冒険者ギルドから支給品が届いてますよ?」
ララさんが声をかけてくれる。
「おお、目くらましと爆音の魔宝石じゃないか、ありがたい。」
ザキさんが代表して魔宝石を受け取る。
「魔宝石……?」
「宝石自体に魔法がかけられていてな、こいつの場合は、地面に投げると強い光と爆音を放って、敵から逃げやすくなるものだ。
強さによっては魔物が気絶することもあるぞ?」
ようするに、スタングレネード魔法版ということか。
「今回の調査は、危険な魔物が出る可能性もあるわけだし、冒険者ギルドも、討伐に切り替えてもいいとはいっても、逃げる前提で考えてるんだろうね。」
弓使いのマジオさんが言う。確かにこの支給品はその為のものだろう。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「コボルトの冒険者もいるんだな。」
受付カウンターで受付嬢に対応されているコボルトは、装備を身に付けており、明らかに依頼者の風体ではない。
「めったに居ないけどな。コボルト独自の拳闘士と魔法使いがいるぜ。」
冒険者ギルドの受付嬢は、ピンクの毛並みの、可愛らしい赤のイヤーシュシュを耳に付けて、ツインテールのようにした、黒目の大きなパピヨンのようなコボルトだった。
「かっ……!可愛い……!!」
俺は思わず声に出してしまう。
コボルトの受付嬢は、ふふっと笑うと、
「人間は皆さんそうおっしゃってくださいます。ララと言います。
今日は現地調査にいらしてくださったんですよね?お話は承っています。」
「あ、はい、すみません、初対面の女性にいきなり……。」
「いえいえ。
受付を済ませますので、冒険者登録証をお願いいたします。」
俺たちは冒険者登録証をララさんに渡す。
「分かるぜ、俺たちもすっかり初対面でやられちまったからなあ、ララさんには。」
アスターさんたちにも笑われた。
「あら、ララだけなの?」
声がして振り返ると、アフガンハウンドのような金色の毛並みの、美人のコボルトが立っていた。
冒険者のような出で立ちで、ララさんとにこやかに挨拶している。
「おお、アシュリー、久しぶりじゃないか。相変わらず美しいな。」
「ありがと。この間はオークのお肉をありがとね。みんな喜んでたわ。」
「なんのなんの、アシュリーにはいつも助けられているからな、冒険者は持ちつ持たれつさ。」
アスターさんたちとにこやかに話しているところを見ると、気心の知れた間柄らしい。
「今日は私が現地に同行することになっているのよ。案内と、この地域のギルドへの優先報告係ね。」
「それは頼もしい。よろしく頼むよ。
ああ、ジョージは初めてだったよな。」
「ジョージ・エイトです。よろしくお願いいたします。」
「アシュリーよ。
精霊魔法使いをやってるわ。」
「精霊魔法使い?」
「ジョージは精霊魔法使いは初めてか?」
「ええ。精霊自体は、このあいだトレントを退治したくらいで……。」
「トレントを!?
……ひょっとして、最近出回ってるステータス上昇の実は、お前さんの仕業か?」
アスターさんがこっそり耳打ちしてくる。
「まあ……当たらずとも遠からずというか、そんなところだ。」
そのままだけどな。
「コボルトは、精霊が味方してくれることが多いの。一般的な魔法使いは、元素をもとにして、この世界にあるものを使って魔法を出すけれど、精霊魔法使いは、精霊の力を借りて魔法を使うのよ。
人間にもまれにいるけれど、精霊魔法使いといえば、大体の人はコボルトを連想するわね。」
「そうなのか、俺は魔法はさっぱりだからなあ……。魔物が使っているところしか見たことがないんだ。」
「なんだジョージ、魔法使い自体が初めてなのかい?こりゃあ、いいところを見せないとだな。」
魔法使いのインダーさんが張り切ってみせる。
「魔法といえば、冒険者ギルドから支給品が届いてますよ?」
ララさんが声をかけてくれる。
「おお、目くらましと爆音の魔宝石じゃないか、ありがたい。」
ザキさんが代表して魔宝石を受け取る。
「魔宝石……?」
「宝石自体に魔法がかけられていてな、こいつの場合は、地面に投げると強い光と爆音を放って、敵から逃げやすくなるものだ。
強さによっては魔物が気絶することもあるぞ?」
ようするに、スタングレネード魔法版ということか。
「今回の調査は、危険な魔物が出る可能性もあるわけだし、冒険者ギルドも、討伐に切り替えてもいいとはいっても、逃げる前提で考えてるんだろうね。」
弓使いのマジオさんが言う。確かにこの支給品はその為のものだろう。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
492
お気に入りに追加
1,851
あなたにおすすめの小説


誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……


凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる