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第50話 畑作りとコボルトの新たな技術②
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食べるものと環境が卵を作るから、今考えると至極当然のことなのだが。
カイアにも卵を食べさせてやりたいなあ。どうせ無農薬で野菜を作るんだし、こっちでも鶏を飼おうかな?俺の貰った能力は、生き物も出すことが出来るしな。
もし飼うなら、洗わずに食べられる飼い方にチャレンジしてみたいよなあ。実家のやつよりも大きな鶏小屋にして、中でも遊べるようにとまれる木を渡して、健康を保つ為の砂場を作って、卵を産む場所は別に用意して、野菜くずを餌に混ぜて……。
オスはどうしようかな。近所に家がないから、別に騒音問題は気にならないが。
ヒヨコが生まれたら、カイアが喜ぶかな?
もしヒヨコを育てるなら、温度管理の出来る鶏小屋にしないとなあ……。
ヒヨコがすぐに死んじまう。
うちには途中からオスもいたので、定期的にヒヨコが生まれるようになったのだが、うちの父親は生き物に対して気を使わない人だったので、ヒヨコが生まれても、鶏小屋はむき出しの金網のままで暖かくなかったし、何度言ってもヒヨコが飲みやすい大きさの水飲み場を用意してはくれなかった。
いつものように朝、鶏小屋に卵を取りに行った子どもの俺は衝撃を受けた。
無理に水を飲もうとして、落ちて溺れてしまったのだろう。洗面器に入れられた水の上に浮いているヒヨコを見て、父のせいだと悲しくなったのを今も思い出す。
小さな水飲み場を用意さえすれば、あの子は死なずに済んだのにと。
飼い猫が怯えるから、猫が部屋にいる時はやめてくれ、別の部屋に移してからにしてくれと何度頼んでも、平気で掃除機をかけて、飼い猫が掃除機の音に怯えて網戸を突き破って脱走してしまい、父以外の家族で近所中を探し回ったこともある。
子どもの世話もするし、炊事洗濯風呂掃除も毎日やっていたし、定期的に週末家族で遊びにも連れて行ってくれたし、夏と冬は必ず毎年家族旅行にも行ったし、月に1回母とデートをするし、結婚記念日も祝うし、10年目記念のダイヤもあげていたし、挙句の果ては、自分の妻の母親の介護までやっていた。
俺の親世代の父親としては、お手本のようなよい夫だったと思う。
だが、そういう無神経な、相手が自分に合わせて当然という感覚の人でもあり、怒ると子どもが膝をついて崩折れる程の腹パンを平気でしてくる人でもあった。
釣りを教えてくれたのも、将棋を教えてくれたのも、野菜作りを教えてくれたのも父だった。だが俺は苦手に感じている。
子どもが出来たら、父のような父親にだけはなるまいと思って生きてきたが、そもそも子どもどころか結婚すらしないで生きることになるとは思っていなかったが。
だからカイアには、楽しくのびのび育って欲しいと思っている。カイアにしてやりたいことが、すべて父から教わったことなのは、正直皮肉な話だがな。
「さて、畑はこんなところにして、コボルトのみんなのところに行こうか。色々と確認しないといけないことがあるからな。」
俺は道具を片付けて、カイアをマジックバッグに入れると、コボルトの集落に向かう乗合馬車に乗った。
そういえば海に行ったのに釣りをしなかったな、今度教えてやろう、と思いながら。
コボルトの集落につくと、塀がすっかり出来上がっていた。てっぺんに屋根がつけられて、その上に忍返しもつけられている。
「ジョージさん!」
コボルトたちが笑顔で出迎えてくれる。
「すっかり完成したじゃないですか、漆喰の塗りもいい出来ですね。」
俺は塀を撫でながら言う。
「かなり最初は試行錯誤しましたけどね、今じゃ慣れたもんですよ。」
コボルトの若者が笑って言った。俺もつられて笑う。彼は確か、ルムランさんだったかな。
「アシュリーさんはいますか?」
「はい、さっき見かけたんで。
──呼んで来ましょうか?」
ルムランさんが首を傾げながら俺に尋ねてくれる。
「ああ、ぜひお願いします。」
「分かりました、ちょっと待っててくださいね。」
ルムランさんがアシュリーさんを呼びに行って戻るまでの間に、俺はカイアをマジックバッグから出した。
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カイアにも卵を食べさせてやりたいなあ。どうせ無農薬で野菜を作るんだし、こっちでも鶏を飼おうかな?俺の貰った能力は、生き物も出すことが出来るしな。
もし飼うなら、洗わずに食べられる飼い方にチャレンジしてみたいよなあ。実家のやつよりも大きな鶏小屋にして、中でも遊べるようにとまれる木を渡して、健康を保つ為の砂場を作って、卵を産む場所は別に用意して、野菜くずを餌に混ぜて……。
オスはどうしようかな。近所に家がないから、別に騒音問題は気にならないが。
ヒヨコが生まれたら、カイアが喜ぶかな?
もしヒヨコを育てるなら、温度管理の出来る鶏小屋にしないとなあ……。
ヒヨコがすぐに死んじまう。
うちには途中からオスもいたので、定期的にヒヨコが生まれるようになったのだが、うちの父親は生き物に対して気を使わない人だったので、ヒヨコが生まれても、鶏小屋はむき出しの金網のままで暖かくなかったし、何度言ってもヒヨコが飲みやすい大きさの水飲み場を用意してはくれなかった。
いつものように朝、鶏小屋に卵を取りに行った子どもの俺は衝撃を受けた。
無理に水を飲もうとして、落ちて溺れてしまったのだろう。洗面器に入れられた水の上に浮いているヒヨコを見て、父のせいだと悲しくなったのを今も思い出す。
小さな水飲み場を用意さえすれば、あの子は死なずに済んだのにと。
飼い猫が怯えるから、猫が部屋にいる時はやめてくれ、別の部屋に移してからにしてくれと何度頼んでも、平気で掃除機をかけて、飼い猫が掃除機の音に怯えて網戸を突き破って脱走してしまい、父以外の家族で近所中を探し回ったこともある。
子どもの世話もするし、炊事洗濯風呂掃除も毎日やっていたし、定期的に週末家族で遊びにも連れて行ってくれたし、夏と冬は必ず毎年家族旅行にも行ったし、月に1回母とデートをするし、結婚記念日も祝うし、10年目記念のダイヤもあげていたし、挙句の果ては、自分の妻の母親の介護までやっていた。
俺の親世代の父親としては、お手本のようなよい夫だったと思う。
だが、そういう無神経な、相手が自分に合わせて当然という感覚の人でもあり、怒ると子どもが膝をついて崩折れる程の腹パンを平気でしてくる人でもあった。
釣りを教えてくれたのも、将棋を教えてくれたのも、野菜作りを教えてくれたのも父だった。だが俺は苦手に感じている。
子どもが出来たら、父のような父親にだけはなるまいと思って生きてきたが、そもそも子どもどころか結婚すらしないで生きることになるとは思っていなかったが。
だからカイアには、楽しくのびのび育って欲しいと思っている。カイアにしてやりたいことが、すべて父から教わったことなのは、正直皮肉な話だがな。
「さて、畑はこんなところにして、コボルトのみんなのところに行こうか。色々と確認しないといけないことがあるからな。」
俺は道具を片付けて、カイアをマジックバッグに入れると、コボルトの集落に向かう乗合馬車に乗った。
そういえば海に行ったのに釣りをしなかったな、今度教えてやろう、と思いながら。
コボルトの集落につくと、塀がすっかり出来上がっていた。てっぺんに屋根がつけられて、その上に忍返しもつけられている。
「ジョージさん!」
コボルトたちが笑顔で出迎えてくれる。
「すっかり完成したじゃないですか、漆喰の塗りもいい出来ですね。」
俺は塀を撫でながら言う。
「かなり最初は試行錯誤しましたけどね、今じゃ慣れたもんですよ。」
コボルトの若者が笑って言った。俺もつられて笑う。彼は確か、ルムランさんだったかな。
「アシュリーさんはいますか?」
「はい、さっき見かけたんで。
──呼んで来ましょうか?」
ルムランさんが首を傾げながら俺に尋ねてくれる。
「ああ、ぜひお願いします。」
「分かりました、ちょっと待っててくださいね。」
ルムランさんがアシュリーさんを呼びに行って戻るまでの間に、俺はカイアをマジックバッグから出した。
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