145 / 448
第50話 畑作りとコボルトの新たな技術①
しおりを挟む
今日は土作りがようやく終わったので、朝から野菜を植えている。いつもは朝食前に行っているが、カイアがいるのと、長い作業になるので、朝ごはんは既に済ませてある。
たまに新しいものにチャレンジすることもあるが、毎年大体作るものは決まっている。今はナスを植えようとしているところだ。
俺は寝室の隣の部屋から、接ぎ木苗されて、ポットに入ったナスの苗を持ってきた。
ポットの土の部分から、35センチ以上高さのある、一番最初の小さな蕾である、一番花のついた苗だ。
株元を固くする為に、屋根のある場所で外気にさらしておいたのだ。
ナスの病気に強い接ぎ木がなされている。
接ぎ木の台木のトルバムは、物凄く肥料を吸収するので、一番花を付ける前に植えてしまうと、木ばかりが大きくなってしまう、樹ボケという状態になる。
だが一番花の開花寸前に植えると、トルバムが急激に肥料をすって、一番花がすぐに実をつけて収穫出来るようにもなる。
植える前にたくさんジョウロで水を与えてポットの土を湿らせてやったあとで、メチオニンとグルタミン酸の入っている液肥を希釈して、ちょっとだけ苗にかけてやる。
1株に対して0.1~0.5グラムと、かなり少ない量しか使わないが、これがあるとないとでは成長がことなる。
ハンディタイプのホーラーという、穴あけをねじりながら、マルチフィルムの上から土に押し込んでいく。
引き抜く前に少し手で押してやる。土が湿っていれば、取手を引き抜くと土ごと持ち上がる。
開けた穴の近くに土を落とし、くっついてきたビニールは邪魔なので捨てる。
ポットからナスの苗を、軸を指で挟んで横に向け、左手でポットを抜いてやると、白い根っこがポットの形に土を守っている。
根っこが黒かったら植えてはいけない。
アドマイヤー粒剤という害虫用の薬を、3本指でひとつまみ植え穴に入れて、軽く土と混ぜた後、苗を穴に入れる。
苗についた土が、穴から1センチくらい上に出ているくらいでいい。台木部分が土に埋まらないようにする為だ。
穴をあけたときに出た土を、隙間なく穴に詰めて、両手で上から押してやり、余った土は入れない。これでナスが植えられた。
ナスは種から育てたことがない。こういう苗の状態まで育ったものが売っているので、それを土に植えるのだ。
それを繰り返していると、カイアが興味深げに作業をじっと見ていた。
「やってみるか?」
俺がホーラーを渡すと、穴をあけようとするが、力が弱くて、ホーラーをうまく深くまで押し込めないようだった。
代わりに掘ってやり、ナスの苗を渡す。
「ここに入れて優しく土をかぶせてあげるんだ。やってごらん。」
カイアがナスの苗を穴に置き、土を被せて自分の枝で土をならしてやる。
「上手だぞ。」
カイアが嬉しそうに俺を見上げて笑う。
こんな風に昔俺も、父親に教えて貰ったっけなあ。俺が自分の子どもに教える日は、もう来ないと思っていたが。
うちは父親が無農薬で野菜を作っていたので、キャベツによくモンシロチョウが卵をうんで、必ず幼虫がキャベツを食べてしまう。それを手でつまんで取り除いては、持ち帰って飼っていた鶏にあげていた。
うちで飼っていたのはチャボで、毎朝卵を取りに行くのが俺の仕事だった。
毎日掃除はするのだが、それでも必ず卵に糞がついていて、それを素手で取って洗って食べていたので、卵の殻は洗うと長持ちしなくなるということと、洗わずに出荷することの出来る卵を作っている養鶏場が存在しているのを知った時は驚いたものだ。
砂のある小さな庭で遊ばせていたので、それなりに健康だったのだろう、チャボの卵の殻はとても丈夫で厚くて、同じ感覚で力を入れてブロイラーの卵を割ったら、あまりの薄さに子どもの力でも、ぐしゃっと殻が潰れて卵を駄目にしてしまって驚いたことがある。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
たまに新しいものにチャレンジすることもあるが、毎年大体作るものは決まっている。今はナスを植えようとしているところだ。
俺は寝室の隣の部屋から、接ぎ木苗されて、ポットに入ったナスの苗を持ってきた。
ポットの土の部分から、35センチ以上高さのある、一番最初の小さな蕾である、一番花のついた苗だ。
株元を固くする為に、屋根のある場所で外気にさらしておいたのだ。
ナスの病気に強い接ぎ木がなされている。
接ぎ木の台木のトルバムは、物凄く肥料を吸収するので、一番花を付ける前に植えてしまうと、木ばかりが大きくなってしまう、樹ボケという状態になる。
だが一番花の開花寸前に植えると、トルバムが急激に肥料をすって、一番花がすぐに実をつけて収穫出来るようにもなる。
植える前にたくさんジョウロで水を与えてポットの土を湿らせてやったあとで、メチオニンとグルタミン酸の入っている液肥を希釈して、ちょっとだけ苗にかけてやる。
1株に対して0.1~0.5グラムと、かなり少ない量しか使わないが、これがあるとないとでは成長がことなる。
ハンディタイプのホーラーという、穴あけをねじりながら、マルチフィルムの上から土に押し込んでいく。
引き抜く前に少し手で押してやる。土が湿っていれば、取手を引き抜くと土ごと持ち上がる。
開けた穴の近くに土を落とし、くっついてきたビニールは邪魔なので捨てる。
ポットからナスの苗を、軸を指で挟んで横に向け、左手でポットを抜いてやると、白い根っこがポットの形に土を守っている。
根っこが黒かったら植えてはいけない。
アドマイヤー粒剤という害虫用の薬を、3本指でひとつまみ植え穴に入れて、軽く土と混ぜた後、苗を穴に入れる。
苗についた土が、穴から1センチくらい上に出ているくらいでいい。台木部分が土に埋まらないようにする為だ。
穴をあけたときに出た土を、隙間なく穴に詰めて、両手で上から押してやり、余った土は入れない。これでナスが植えられた。
ナスは種から育てたことがない。こういう苗の状態まで育ったものが売っているので、それを土に植えるのだ。
それを繰り返していると、カイアが興味深げに作業をじっと見ていた。
「やってみるか?」
俺がホーラーを渡すと、穴をあけようとするが、力が弱くて、ホーラーをうまく深くまで押し込めないようだった。
代わりに掘ってやり、ナスの苗を渡す。
「ここに入れて優しく土をかぶせてあげるんだ。やってごらん。」
カイアがナスの苗を穴に置き、土を被せて自分の枝で土をならしてやる。
「上手だぞ。」
カイアが嬉しそうに俺を見上げて笑う。
こんな風に昔俺も、父親に教えて貰ったっけなあ。俺が自分の子どもに教える日は、もう来ないと思っていたが。
うちは父親が無農薬で野菜を作っていたので、キャベツによくモンシロチョウが卵をうんで、必ず幼虫がキャベツを食べてしまう。それを手でつまんで取り除いては、持ち帰って飼っていた鶏にあげていた。
うちで飼っていたのはチャボで、毎朝卵を取りに行くのが俺の仕事だった。
毎日掃除はするのだが、それでも必ず卵に糞がついていて、それを素手で取って洗って食べていたので、卵の殻は洗うと長持ちしなくなるということと、洗わずに出荷することの出来る卵を作っている養鶏場が存在しているのを知った時は驚いたものだ。
砂のある小さな庭で遊ばせていたので、それなりに健康だったのだろう、チャボの卵の殻はとても丈夫で厚くて、同じ感覚で力を入れてブロイラーの卵を割ったら、あまりの薄さに子どもの力でも、ぐしゃっと殻が潰れて卵を駄目にしてしまって驚いたことがある。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
408
お気に入りに追加
1,848
あなたにおすすめの小説
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる