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第48話 トウモロコシご飯、ミニトマトとナスとエリンギの中華マリネサラダ②

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 俺は思わずカイアを抱き上げて、そっと抱きしめた。俺が喜んでいるのが分かって、カイアも嬉しそうに抱きついてくる。
「お仕事の邪魔しないなら、お父さんと一緒にいるか?」
 俺はそう言ってカイアを部屋に入れ、膝の上に座らせた。

 カイアは俺の作業を興味深げに見ていた。
「今はな、魔法陣、っていうのを作ってるんだ。家の柱にもこの間作った、同じようなのが貼ってあるだろう?
 これをたくさん作れないか試してみてるところなんだ。お父さんはカイアと違って魔法が使えないけど、これがあれば使えるようになるかも知れないんだよ。」

 カイアが俺の顔を見上げる。
「ん?やってみたいのか?
 これはお父さんの大事なやつだからな、やるなら、お父さんと一緒に、ちょっとだけやってみようか。」
 俺はカイアの枝の手に重ねるようにマウスを持って、消しゴムツールで魔法陣の内側の汚れを消していく。

「おお、上手だぞ、カイア、」
 カイアは嬉しそうにもっとやりたがった。
 消しても大きなトラブルにならなそうな、白の面積の広いところのゴミを、一緒に消していく。
「ほーら、きれいになったな。
 こうやって、全部の汚れを消して、本の魔法陣と同じものを再現していくんだ。」

 広い場所の汚れをカイアと一緒に消したあと、いったん保存してから、
「ここは細かいからお父さんがやるな。」
 と言って、文字の周辺の消え残りを、文字を消さないように消していく。
 今回俺が選んだのは、火魔法の使える魔法陣だ。文字や円が少ないので、作業が一番やりやすいからという理由だ。

 まずは作りやすい魔法陣で試してみて、これを清められた紙に、ミスティさんが作ってくれた魔導具で魔力を込めた、インクカートリッジを使って魔法陣を印刷したら、どこか人のいないところで試してみて、それで問題なく魔法が使えるようなら、自分で魔法が使える魔法陣を量産出来るのだ。

 そう考えると地味な作業も楽しかった。
「よし、綺麗に出来たな。」
 画像扱いで駄目なら、インデザインに貼って書類扱いにしてみて、それでも駄目ならイラストレーターで、これを下書きにして作るしかない。それでも駄目なら、初めて無属性の魔法使いを探してみよう。

 俺はマジックバッグから、ミスティさんが作ってくれた、無属性魔法を付与出来る魔導具を取り出すと、黒のカートリッジを中に入れた。ボタンを押すと小さく音がして光を放ち、それが消える。これで無属性魔法の魔力付与完了だとミスティさんは言っていた。

 さて、問題は紙なんだよな。清められた紙は、日頃使っているようなしっかりした均等な厚みの紙じゃなく、どこか和紙のように均等じゃなく薄い箇所があったりする代物だ。これをきちんとプリンターが巻き取ってくれるのかどうか。

 紙は一枚だけ入れると、引っかかって逆に出てこなかったりするので、ある程度枚数を入れる必要がある。俺は清められた紙を100枚出してプリンターの給紙トレイの引き出しをあけ、中におさめた。のだが。
「これ……、A4でもB5でもないな。」

 現代の規格で作られていないのか、用紙のサイズを合わせる部分にピッタリと合わないのだ。仕方がなく定規を出して縦横の長さを図る。縦が250センチで横が200センチだった。このスキャナープリンターは不定形サイズの紙でも印刷出来るので、手差し印刷の蓋をあけてそこに紙を置く。

 定形外を印刷するのに、プリンタードライバーを、いちいちネットからダウンロードして登録するタイプのバージョンでなくて良かった。パソコンから出し直しになっちまう。
 俺はインデザインに画像を貼って、ドキュメント設定のレイアウト調整から、用紙の幅と高さの値を変更した。

 無属性の魔力の込められた黒のインクカートリッジと、それ以外の色のカートリッジをプリンターにセットする。他の色は別に必要ないのだが、入っていないとプリンターが反応しないから入れる必要があるのだ。
 印刷指定で手差しトレイを選択して、モノクロを指定し印刷を開始する。

 ここでカラーを選択すると、魔力の込められていない他のカラーのカートリッジまで反応して、すべての色を使用した状態で、フルカラーの黒色印刷が出て来てしまうので要注意だ。魔力の込められたインクの量が減る。
 無事にスキャナープリンターが紙を吸い込んでいき、印刷された紙がはきだされた。

 同じようにモノクロ印刷で10枚魔法陣を印刷する。複数試してみないことには、必ず発動するかの不安があるからだ。
「よし……。あとは人のいないところで使ってみて、魔法が発動するようなら、これを大量に印刷しよう。」
 俺はインデザインで作ったデータを保存して、パソコンの電源を落とした。

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