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第39話 ルピラス商会と王宮へ②
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「店舗内装なら、うちの出入りに腕のいいやつがいるから、そこはそいつと相談してくれ。看板職人も紹介しよう。」
「何からなにまでありがとうございます。」
「なあに、ジョージにはこれからも儲けさせて貰うつもりでいるからな、今のうちにタップリと恩を売っておきたいのさ。」
そう言いながら、商売をする人を心から応援したいんだろうなあ、と俺は思った。
店の中を見ながら、ワクワクしている様子からもそれが分かる。
仕方無しに仕事を選ぶ人もいるだろうが、エドモンドさんは自分から選んで商人になったのだろうな、という気がした。
「そういや、保証人になってくれる貴族ってのに、今のうちに会わせて貰えるかい?
……大丈夫だとは思うが、万が一があるからな。俺たちルピラス商会が関わることを話しておきたい。」
「王宮勤めだと言っていましたから、商品をおさめる時にお会いできると思いますよ。セレス様という方です。」
「セレス様だって!?」
「何か?友人の上司みたいですが。」
「ジョージ……、セレス様がどんなお立場の方か知らないのか?現国王の妹君だぜ?
確かに結婚して貴族に降嫁したから、既に王族ではないが、それでも公爵家だ。」
「は?嘘でしょう?」
俺は思わず呆気に取られた。
一介の宮廷料理人であるロンメルが、直接会って話しをしたというから、まさか元王族の、公爵家だなんて思わなかった。
ましてや、あの料理対決に、元王族が審査員に加わっていただなんて。
いや……、あのパトリシア王女の親戚だ。それくらいお転婆でもおかしくはないのか。
確かに俺の料理と俺自身を気に入って下さっていたようだけれど、だからって、そんな相手に、あんな簡単な手土産を持って、直接頼みに行くだなんて誰が思う?
ロンメル……!大胆すぎだろう!不敬罪で首をはねられる可能性だって、あるんじゃないのか?この世界なら!
「確か、ロンメルさんが頼みに行ったんだったか?随分と大胆な人なんだな。人は見かけによらないな……。」
「ええ、本当にそう思います……。」
俺とエドモンドさんは、2人してロンメルの屈託のない笑顔を思い出しながら、その行動に戦慄していた。
同じ職場に勤めているのだから、俺のように立場を知らなかったというのはありえないだろう。ましてや現国王の妹君ともなれば、降嫁したとはいえ、周囲がそれとなく噂したり、教えたりする筈だ。
セレス様自身はその応対の仕方を許しているのかも知れないが、料理長が知ったら大目玉を食らうんじゃないだろうか。
少なくとも人の目につくところでやっていなけりゃいいが。ロンメルが夢中になると周囲が見えなくなるのは、先日のパトリシア王女に料理を作る際、厨房の中に着替えもしていない俺を入れたことで、なんとなく感じてはいたが。
厨房で仕事をする際は、現代でも、清潔な服装に着替えて、髪の毛が落ちないようにしまって、服についた髪の毛をとって、手を爪の間と肘まで洗って、ようやく厨房の中に入れるものだ。食中毒の心配や、料理に髪の毛が入らないよう、細心の注意をはらう。
人が口にするものを、お金をとって提供するというのは、それくらい責任が伴う。
こちらでも消毒をするというし、それを宮廷料理人であるロンメルは、知ったうえで俺を厨房に直接連れ込んだのだ。
それだけ焦っていて、周囲が見えていなかったということだろうと思う。
料理人にあるまじき行動だからな。年齢の割に落ち着いた奴だと思っていたが、焦ったり夢中になるとそうでもないらしい。
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「何からなにまでありがとうございます。」
「なあに、ジョージにはこれからも儲けさせて貰うつもりでいるからな、今のうちにタップリと恩を売っておきたいのさ。」
そう言いながら、商売をする人を心から応援したいんだろうなあ、と俺は思った。
店の中を見ながら、ワクワクしている様子からもそれが分かる。
仕方無しに仕事を選ぶ人もいるだろうが、エドモンドさんは自分から選んで商人になったのだろうな、という気がした。
「そういや、保証人になってくれる貴族ってのに、今のうちに会わせて貰えるかい?
……大丈夫だとは思うが、万が一があるからな。俺たちルピラス商会が関わることを話しておきたい。」
「王宮勤めだと言っていましたから、商品をおさめる時にお会いできると思いますよ。セレス様という方です。」
「セレス様だって!?」
「何か?友人の上司みたいですが。」
「ジョージ……、セレス様がどんなお立場の方か知らないのか?現国王の妹君だぜ?
確かに結婚して貴族に降嫁したから、既に王族ではないが、それでも公爵家だ。」
「は?嘘でしょう?」
俺は思わず呆気に取られた。
一介の宮廷料理人であるロンメルが、直接会って話しをしたというから、まさか元王族の、公爵家だなんて思わなかった。
ましてや、あの料理対決に、元王族が審査員に加わっていただなんて。
いや……、あのパトリシア王女の親戚だ。それくらいお転婆でもおかしくはないのか。
確かに俺の料理と俺自身を気に入って下さっていたようだけれど、だからって、そんな相手に、あんな簡単な手土産を持って、直接頼みに行くだなんて誰が思う?
ロンメル……!大胆すぎだろう!不敬罪で首をはねられる可能性だって、あるんじゃないのか?この世界なら!
「確か、ロンメルさんが頼みに行ったんだったか?随分と大胆な人なんだな。人は見かけによらないな……。」
「ええ、本当にそう思います……。」
俺とエドモンドさんは、2人してロンメルの屈託のない笑顔を思い出しながら、その行動に戦慄していた。
同じ職場に勤めているのだから、俺のように立場を知らなかったというのはありえないだろう。ましてや現国王の妹君ともなれば、降嫁したとはいえ、周囲がそれとなく噂したり、教えたりする筈だ。
セレス様自身はその応対の仕方を許しているのかも知れないが、料理長が知ったら大目玉を食らうんじゃないだろうか。
少なくとも人の目につくところでやっていなけりゃいいが。ロンメルが夢中になると周囲が見えなくなるのは、先日のパトリシア王女に料理を作る際、厨房の中に着替えもしていない俺を入れたことで、なんとなく感じてはいたが。
厨房で仕事をする際は、現代でも、清潔な服装に着替えて、髪の毛が落ちないようにしまって、服についた髪の毛をとって、手を爪の間と肘まで洗って、ようやく厨房の中に入れるものだ。食中毒の心配や、料理に髪の毛が入らないよう、細心の注意をはらう。
人が口にするものを、お金をとって提供するというのは、それくらい責任が伴う。
こちらでも消毒をするというし、それを宮廷料理人であるロンメルは、知ったうえで俺を厨房に直接連れ込んだのだ。
それだけ焦っていて、周囲が見えていなかったということだろうと思う。
料理人にあるまじき行動だからな。年齢の割に落ち着いた奴だと思っていたが、焦ったり夢中になるとそうでもないらしい。
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