108 / 432
第38話 思わぬ流通革命③
しおりを挟む
分かりました、と言ってロッケンさんが外に出ていき、しばらくするとザワザワと声がして、大勢の作業員がやってきた。
「よし、始めようか。ある程度積んだら、木の板を上に重ねて、その上に更にキッチンペーパーを重ねてくれ。」
木の板を持ってくる班、積み重ねる班に分かれて手早く作業を進めていく。
俺が出すキッチンペーパーを、作業員が次々と重ねていくが、思ったようにはいかなかった。キッチンペーパーが柔らかくて、高くまで重ねると崩れてしまうのだ。
「エドモンドさん、これ、無理ですね。
上に木の板を重ねても、はしから崩れちまいます。」
「なんてこった……。思わぬ弊害だな。」
ビニールパッケージはすべるから余計になんだろうなあ。
「エドモンドさん、これ、使ってみて貰えませんか?」
「ん?なんだそりゃ。」
「折りたたみ式のコンテナです。使わない時は畳めて場所を取りませんし、上に重ねることも可能です。」
俺はマジックバッグから出すふりをして、大きな折りたたみ式の輸送コンテナをいくつか出した。
従業員が試しにペーパータオルを詰めて、いくつかコンテナを重ねてみている。
「問題なさそうです。」
1つの許容内容物質量は120キロだが、重ねるとなると限界はあるけれど、中身がペーパータオルなら問題ないだろう。
「それ、売ってくれないか!ジョージ!
流通革命だ!」
それを見たエドモンドさんが食い気味に俺の手を握る。
「構いませんけど、商人ギルドに登録してからでないと……。
それに、1つのコンテナに120キロまで入れられますが、重ねた場合は、あまり重たいものを入れると壊れると思いますよ?
これ自体が4キロありますし……。」
3階建てくらいの高さはありそうな倉庫をいっぱいになるまでとなると、一番下が心配だ。最大200キロまで入るものもあるらしいが、俺は天井まで折りたたみ式コンテナを重ねて使っているのを見たことがない。
そこまでの高さを重ねる場合は、重たいものの場合、コンテナを使わずに、ダンボール梱包そのままに、間に板を重ねて外側をビニールシートで巻いたりするからな。
「これは効果が分かりやすいから、申請すればすぐに許可が通る筈だ、最短料金を支払えばその場で対応してくれる。今すぐ商人ギルドに行こう!馬車を用意してくれ!」
気が急いたエドモンドさんに連れられて、俺は再び商人ギルドへと戻り、折りたたみ式コンテナを登録申請した。
エドモンドさんが受付嬢に最短で、と伝えてお金を払っているようだった。そして、本当にその場で登録が完了してしまった。
そしてすぐさま再び馬車に乗って、倉庫へととってかえしたのだが……。
「ジョージ……大丈夫か……?」
「ちょっと……酔いました……。」
ガタガタと揺れる馬車に、俺は気持ちが悪くなってしまった。
「少し休むか?」
「ちょっと座ってていいですか?
休みながらでも、出すのは出せるので大丈夫です……。」
そう言って倉庫の壁にもたれかかると、床もレンガの壁も、とてもひんやりして気持ちが良かった。
俺は折りたたみ式コンテナと、キッチンペーパーを、座りながら次々と出した。
マジックバッグの入り口を正面に向けて、その中に手を入れて念じれば、マジックバッグの中から、品物が勝手に飛び出して来ているかのように出すことが出来る。
エドモンドさんが数をメモしながら、従業員が折りたたみ式コンテナに、キッチンペーパーを詰めて、次々倉庫内に重ねていく。
あっという間に倉庫が満杯になった。
「……折りたたみ式コンテナの売買契約書を作りたいんだが……歩けるか?」
エドモンドさんの言葉に、まだ気持ち悪くて横になっていたかったが、俺はなんとか立ち上がった。だがふらつく俺の様子を見て、
「おい、馬車の荷台に毛布を敷いてやれ。」
エドモンドさんの指示で、馬車の荷台に毛布が重ねられ、俺はそこに横になった。
「ゆっくり走るからな。」
その言葉通り、エドモンドさんは静かに馬車を走らせた。
肩を支えられながら、ルピラス商会の事務所の中へと入る。残っていた従業員が、俺の様子を見て心配そうに駆け寄る。
「ジョージに毛布と水を持ってきてくれ。
事務所のソファに横になっているといい。その間に契約書を作るから。」
「すみません……。」
俺は素直にソファに横になった。自分で運転すると平気なんだけど、もともと車酔い激しいんだよな……。
コボルトの集落にも様子を見に行くつもりでいたが、今はちょっと動きたくなかった。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「よし、始めようか。ある程度積んだら、木の板を上に重ねて、その上に更にキッチンペーパーを重ねてくれ。」
木の板を持ってくる班、積み重ねる班に分かれて手早く作業を進めていく。
俺が出すキッチンペーパーを、作業員が次々と重ねていくが、思ったようにはいかなかった。キッチンペーパーが柔らかくて、高くまで重ねると崩れてしまうのだ。
「エドモンドさん、これ、無理ですね。
上に木の板を重ねても、はしから崩れちまいます。」
「なんてこった……。思わぬ弊害だな。」
ビニールパッケージはすべるから余計になんだろうなあ。
「エドモンドさん、これ、使ってみて貰えませんか?」
「ん?なんだそりゃ。」
「折りたたみ式のコンテナです。使わない時は畳めて場所を取りませんし、上に重ねることも可能です。」
俺はマジックバッグから出すふりをして、大きな折りたたみ式の輸送コンテナをいくつか出した。
従業員が試しにペーパータオルを詰めて、いくつかコンテナを重ねてみている。
「問題なさそうです。」
1つの許容内容物質量は120キロだが、重ねるとなると限界はあるけれど、中身がペーパータオルなら問題ないだろう。
「それ、売ってくれないか!ジョージ!
流通革命だ!」
それを見たエドモンドさんが食い気味に俺の手を握る。
「構いませんけど、商人ギルドに登録してからでないと……。
それに、1つのコンテナに120キロまで入れられますが、重ねた場合は、あまり重たいものを入れると壊れると思いますよ?
これ自体が4キロありますし……。」
3階建てくらいの高さはありそうな倉庫をいっぱいになるまでとなると、一番下が心配だ。最大200キロまで入るものもあるらしいが、俺は天井まで折りたたみ式コンテナを重ねて使っているのを見たことがない。
そこまでの高さを重ねる場合は、重たいものの場合、コンテナを使わずに、ダンボール梱包そのままに、間に板を重ねて外側をビニールシートで巻いたりするからな。
「これは効果が分かりやすいから、申請すればすぐに許可が通る筈だ、最短料金を支払えばその場で対応してくれる。今すぐ商人ギルドに行こう!馬車を用意してくれ!」
気が急いたエドモンドさんに連れられて、俺は再び商人ギルドへと戻り、折りたたみ式コンテナを登録申請した。
エドモンドさんが受付嬢に最短で、と伝えてお金を払っているようだった。そして、本当にその場で登録が完了してしまった。
そしてすぐさま再び馬車に乗って、倉庫へととってかえしたのだが……。
「ジョージ……大丈夫か……?」
「ちょっと……酔いました……。」
ガタガタと揺れる馬車に、俺は気持ちが悪くなってしまった。
「少し休むか?」
「ちょっと座ってていいですか?
休みながらでも、出すのは出せるので大丈夫です……。」
そう言って倉庫の壁にもたれかかると、床もレンガの壁も、とてもひんやりして気持ちが良かった。
俺は折りたたみ式コンテナと、キッチンペーパーを、座りながら次々と出した。
マジックバッグの入り口を正面に向けて、その中に手を入れて念じれば、マジックバッグの中から、品物が勝手に飛び出して来ているかのように出すことが出来る。
エドモンドさんが数をメモしながら、従業員が折りたたみ式コンテナに、キッチンペーパーを詰めて、次々倉庫内に重ねていく。
あっという間に倉庫が満杯になった。
「……折りたたみ式コンテナの売買契約書を作りたいんだが……歩けるか?」
エドモンドさんの言葉に、まだ気持ち悪くて横になっていたかったが、俺はなんとか立ち上がった。だがふらつく俺の様子を見て、
「おい、馬車の荷台に毛布を敷いてやれ。」
エドモンドさんの指示で、馬車の荷台に毛布が重ねられ、俺はそこに横になった。
「ゆっくり走るからな。」
その言葉通り、エドモンドさんは静かに馬車を走らせた。
肩を支えられながら、ルピラス商会の事務所の中へと入る。残っていた従業員が、俺の様子を見て心配そうに駆け寄る。
「ジョージに毛布と水を持ってきてくれ。
事務所のソファに横になっているといい。その間に契約書を作るから。」
「すみません……。」
俺は素直にソファに横になった。自分で運転すると平気なんだけど、もともと車酔い激しいんだよな……。
コボルトの集落にも様子を見に行くつもりでいたが、今はちょっと動きたくなかった。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
469
お気に入りに追加
1,865
あなたにおすすめの小説
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる