こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中

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第27話 玉ねぎ丸ごとスープとデザートのスモア②

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「ここ当たりだったな!来て良かった!」
「そうだな!早く他も見にいこう!」
 インダーさんとザキさんが、溢れるような笑顔でそううながしてくる。
 どちらにしろ、ここは突き当りだから、戻るしかなかった。

「じゃあ次は、2番目に希望の多かった、右の洞穴に進もう。」
 アスターさんの言葉に全員がうなずき、一度戻って右の洞穴にすすんだが、右の洞穴はただの行き止まりで何もなかった。

「ということは……。ジョージの選んだ真ん中から、この近隣に現れる魔物が出てきている可能性があるな。」
「更に奥で分かれている可能性もあるけど、一度ここで回復しておいたほうがいいね。」

 ザキさんとマジオさんの言葉に全員がうなずく。
 俺たちは持ってきた弁当を広げることにした。
 お湯を沸かして、コーヒーを淹れ始めたアスターさんに俺が驚く。

「コーヒーですか?」
 以前アスターさんの家に行った時にはお茶が出たのだ。
「ああ。贅沢品だから、こんな時くらいしか飲まないけどな。」

 コーヒーあるんだな、この世界。
 俺は防水シートを地面に置いて、弁当を広げた。俺の広げた弁当に、みんなが一斉にわあー!っと声をあげる。初めて見たアシュリーさんは目を丸くしている。

「これ、ジョージが作ったの?」
「ええ、食い道楽なもんで。」
 ひとくち食べた途端、アシュリーさんは、
「ジョージ、私のところにお嫁にこない?」
 と言った。婿じゃなくてですか。俺は思わす笑う。

 みんなが弁当を食べ進める中、俺は湯を沸かしていた。
「ジョージ、食べないのか?」
「食べてますよ、でも、ちょっと作りたいものがあって。」
と笑う。

「はいどうぞ、玉ねぎ丸ごとスープです。」
 俺はどうしても温かいものを食べるのを諦めきれず、家で準備をしてきていたのだ。その場でも作れるものだから、今まさに作ったともごまかせる。

 玉ねぎの皮をむいて、根っこと葉の部分をくり抜き、500ミリリットルの水に対してコンソメキューブを1つ入れて、落し蓋をして中火で30分煮るだけ。キャンプでもよく食べる。お好みで黒胡椒とみじん切りしたパセリを乗せれば完成だ。

 ウインナーを追加したり、色々アレンジ出来て便利な料理だ。俺は自宅から持ってきたデカめのマグカップに、玉ねぎ丸ごとスープを入れて全員に配った。
「うまい!温かいスープは最高だな!」

 みんながワイワイ盛り上がる中、俺は更に、マシュマロを火であぶって溶かし、クラッカーの間に板チョコと重ねて挟んだものを作っていた。
「はい、デザートのスモアです。」

 これもキャンプでよく食べられる伝統的なデザートだ。
 至って簡単だが、あるとテンションがあがる。特に自分で作るとなおのこと。
 みんながおかわりを欲しがったので、試しに作って貰ったところ、楽しそうにマシュマロを焼いて挟んで食べていた。

「うーん、お腹いっぱいよ。」
「最高だ……。
 このまま寝たいくらいだぜ。」
 みんなが防水シートの上に、めいめいに横になり、腹ごなしをはじめた。
 俺はそれを見て嬉しくなって笑った。

「さて、いつまでもこうしていられないな、俺たちは事前調査に来たんだ、奥にすすまないと。」
 アスターさんがガバっと起き上がってそう言い、みんなも気を引き締めたような表情になる。

「じゅうぶん回復出来たし、どんな魔物が出てもきっと大丈夫だわ、いきましょう。」
 アシュリーさんもそう言い、全員立ち上がる。俺は防水シートを畳んでアイテムバッグにしまった。

 休憩したことで照明の魔宝石が消えてしまったので、インダーさんが新しい魔宝石を使った。
 奥へ進んでいくと、更にぽっかりと開けた場所に出る。

 半径10メートルは照らす筈の照明の魔宝石でも届かない程、中は広いらしい。
「全員で照明の魔宝石を使ってみよう。
 これじゃあ、何がなんだか分からないからな。」

 アスターさんの言葉にみんながうなずき、少し広がって輪になり、俺をはじめとして、全員で照明の魔宝石を使った。
「な……!!!」
 洞窟の中が照らし出される。

 祭壇のような場所の壁に、黒い球体の中心に目があり、黒い触手が太陽の紅炎のようにうごめく巨大な魔物が貼りついている。
「テネブル!?」
「闇の王が、なぜこんなところに……!」

 驚いていないのは俺だけだった。
 確かに見た目が気持ち悪いが、みんなが何をそこまで驚いているのかが、さっぱり分からないのだ。
「あれは一体なんなんです?」
 俺はこっそりとアスターさんに尋ねる。

「テネブルは、別の種族の魔物を操ることの出来る、別名、魔物の王、闇の王とも呼ばれる魔物だ。
 魔物が生まれる瘴気が集まって生まれたものとも言われている。俺たちのかなう相手じゃない。みんな、逃げるぞ!」

 壁に張り付いて動く様子を見せないテネブルに、俺たちは一斉に回れ右して外に出ようとした。だが。
「なんてことなの……!
 囲まれてしまったわ……!」
 アシュリーさんが悲鳴をあげる。

 入ってきた入り口を、いつの間にか現れたたくさんの、ゴブリン、オーク、オーガ、トロールが塞いでいる。
「戦わないと逃げられないぞ!」
「けど、こんな数をどうやって!?」
 みんながパニックになる中、俺は1人、さて、どうしようかなと考えていた。
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