上 下
54 / 448

第20話 牛肉のしぐれ煮(常備菜)と、それを使った肉うどん(讃岐うどん)②

しおりを挟む
 ……それじゃ意味がないな。
「例えばどんな魔物だと防げないですか?
 マンドラゴラ、ミノタウロス、クラーケンだと、何が必要になるでしょう。」
 俺はもう1度食べたいと思っていた魔物の名前を上げた。

「Sランクでも、マンドラゴラなんかは魔法攻撃しかしてこねえんで、ミスリルで事足りますがね。
 Aランクでもミノタウロスだけは、物理中心かつ強化魔法を使うんで、アダマンタイト以上がないとちょっと危ないんでさ。」

「クラーケンはどうですか?」
「あれこそ魔法と物理の両方ですぜ。オリハルコンじゃなきゃ、まあ無理でしょうな。
 パーティーに耐性付与や防具の防御力を上げられる魔法使いでもいれば、別に関係ねえですがね。」

 近接職だけのパーティー、または俺1人なら耐性付与の防具が必須ということか。
「武器も同じでしょうか?」
「マンドラゴラは魔法さえ防げれば、時間はかかっても普通の武器でも倒せますがね。その魔法が問題なんで。」

「というと?」
「1体でいることがないのと、混乱と発狂と暗黒の魔法を使いますんで、目が見えない状態で、いきなりパーティーメンバーに襲われたりします。解除出来る魔法使い必須でさあね。」

 なんと。それは俺にはどうしようもないな……。ミノタウロスは問題なさそうだが……。
 こればっかりは、どこかのパーティに入れて貰うしかないかも知れない。

「クラーケンはどんな魔法を?」
「水の広域魔法ですがね、それより属性耐性が高くて物理攻撃が効きにくくて、倒しにくいんで。雷属性付与のオリハルコン武器がないとキツイでしょうな。」

 同じSランクでも、色々と違うんだな。相手について詳しく知らずに立ち向かうのは相当危険というわけだ。
「ところで、盾にのぞき穴のあるものはありませんか?それと、立てておけるような支えが底についてるとなおいいんですが。」

 前回のワイバーン退治の際は、大きな盾を肩で支えながらライフルを使っていたから、非常に狩りづらかったのだ。覗き穴がないから音しか頼りになるものもない。出来れば立てておけて、覗き穴からライフルを出して待ち伏せが出来れば最高なんだが。

「そんなものを求める人は聞いたことがありやせんが、まあ、注文すればどんなものでも作れるとは思いますよ。
 店頭に置いてある防具には、まず存在しませんがね。」

 やはりそうなのか。あるのであれば出せばいいだけだが、ないとなると、これもオリハルコンに魔法耐性を付与したものを、ヴァッシュさんの工房で作って貰うしかないだろうな。オリハルコン銃よりも当然オリハルコンの使用量が多くなるから、果たして幾らになるやら……。

「わかりました。少し検討したいと思います、ありがとうございました。」
 俺は武器防具屋の主人に別れを告げて、冒険者ギルドに立ち寄った。メンバー募集がどの程度出ているものか確認したかったのだ。

 だが、クエストの数に対し、Sランクのメンバー募集はかなり少ないものだった。冒険者ギルドの職員に尋ねると、Sランクともなると、一緒にパーティを組んだ仲間と挑戦することが殆どで、新規に募集することがほぼないのだと言う。

 まいったな……。
「Aランクですが、ミノタウロスであれば、現時点で1人募集しているところがありますよ。」
 なんだって?

「その方たちはいずれSランクに挑戦するでしょうから、今から実力を確認しておいて、一緒にSランクに挑まれてはいかがですか?」
 冒険者ギルドの受付嬢がそうすすめてくれる。

 確かにそうだな。初対面の相手とSランクでいきなり戦うんじゃ、立ち回りが分からなくて混乱する気がする。
 それなら事前に何度か狩りをしておいたほうがいいだろう。

「ちなみにその方たちは、どうすれば会えますか?」
「今隣の店で食事を取りながら、応募があるのを待っている筈ですから、行けばすぐに会えると思いますよ。」

 ツイてるな。これは会ってみるしかないだろう。
「男性2人、女性1人で、近距離が2人の魔法使いが1人です。
 女性はかなりお綺麗な方でしたから、見ればすぐに分かると思いますよ。」

 俺はさっそく隣の店に入ってみた。中を見渡すと、冒険者や町の人たちで溢れかえっていたが、大半が男ばかりだ。女性を入れた3人組は、その中で1組だけだったので、遠くからでもすぐに分かった。

 だが、俺は近づくに連れ、すぐに回れ右することに決めた。お綺麗な女性というのが、ナナリーさんの店で会った下品な女だったからだ。防具を身に着けていたから冒険者だとは思ったが、まさかコイツだったとは。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした

あおアンドあお
ファンタジー
ギガン城と呼ばれる城の第一王女であるリコット王女が、他の世界に住む四人の男女を 自分の世界へと召喚した。 召喚された四人の事をリコット王女は勇者と呼び、この世界を魔王の手から救ってくれと 願いを託す。 しかしよく見ると、皆の希望の目線は、この俺...城川練矢(しろかわれんや)には、 全く向けられていなかった。 何故ならば、他の三人は若くてハリもある、十代半ばの少年と少女達であり、 将来性も期待性もバッチリであったが... この城川練矢はどう見ても、しがないただの『おっさん』だったからである。 でもさ、いくらおっさんだからっていって、これはひどくないか? だって、俺を召喚したリコット王女様、全く俺に目線を合わせてこないし... 周りの兵士や神官達も蔑視の目線は勿論のこと、隠しもしない罵詈雑言な言葉を 俺に投げてくる始末。 そして挙げ句の果てには、ニヤニヤと下卑た顔をして俺の事を『ニセ勇者』と 罵って蔑ろにしてきやがる...。 元の世界に帰りたくても、ある一定の魔力が必要らしく、その魔力が貯まるまで 最低、一年はかかるとの事だ。 こんな城に一年間も居たくない俺は、町の方でのんびり待とうと決め、この城から 出ようとした瞬間... 「ぐふふふ...残念だが、そういう訳にはいかないんだよ、おっさんっ!」 ...と、蔑視し嘲笑ってくる兵士達から止められてしまうのだった。 ※小説家になろう様でも掲載しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

処理中です...