上 下
447 / 485
第3章

第501話 英雄専用武器を作るには

しおりを挟む
「それが雲の上ってこと?
 ……まあ確かに、鳥でもなきゃこんなとこまで来られないだろうけどさ。」
 あたりをキョロキョロ見回しながら言う。

「ええ。そう思って。」
「だからって、国を作るかね?
 隠れ家程度の家じゃ駄目だったわけ?」
 スカーレット嬢は疑問そうだ。

「うーん、僕らはリシャーラ王国にも家がありますので。実はリシャーラ王家のルーデンス王太子殿下が、僕の奥さんに手出ししてきていて、守る目的がありましたので。」

「王太子殿下が?それヤバいやつじゃん。」
「ええ、それで。仕方なく急ぎました。」
「女1人守る為に、国を作っちまおうってんだから、アレックスは面白いやつだろう?」

 タンザビアさんが快活に笑う。
「まあ、じいちゃんが好きそうなタイプだよね、荒唐無稽っていうか……。」
 そうかな?僕、普通だと思うんだけどな?

 お城について宴会場に戻ると、バイデン伯爵令息が獣人たちの訓練の見学から戻って、みんなとお茶を楽しんでいるところだった。

「アレックス、おかえりなさい。」
「ただいま、ミーニャ。ヒルデ。
 兄さまたちも。」

「おかえり、アレックス。」
「おかえりなさい、アレックス。」
「遅かったじゃんか、アレックス!」
「え?そんなに話さなかったんだけどな。」

「やあ、アレックス、戻ったのかい。
 僕はそろそろ失礼しようと思ってね。さすがに見学だけというのも飽きたのでね。なにせ参加出来ないから、落ち着かないんだ。」

 紅茶のカップを手にしたまま、椅子に座った状態で僕を振り返り、バイデン伯爵令息が困ったように眉を下げた笑顔でそう言った。

「そりゃあ悪かったな、坊っちゃん。
 まあ、専用武器が出来るまで、ちいっとばかし待ってくれや。すぐに出来るからよ。なにせ、うちの期待の後継者が来たからな!」

「え?じいちゃん、どういうこと?」
「この坊っちゃんも、英雄候補さ。俺は坊っちゃんの武器を作る依頼を受けてるんだ。」

「え、英雄候補……!
 あ、あたしも、じいちゃんと一緒に、英雄候補の武器も作れるのか!?」

「ああ、だが話した通り、お前はお前自身も英雄候補の1人だからな。英雄候補としての訓練も、頑張らないといけないぞ?」
「わかってる!うわあ……!楽しみだ!」

「この僕が!そう!英雄候補の1人、フィンリー・バイデンなのだよ!伯爵令息だ!
 よろしく、美しい方。」

 キラキラした目で、両手の拳をグッと握りしめてバイデン伯爵令息を見るスカーレット嬢に、バイデン伯爵令息が席から立ち上がって、恭しくかしずいてみせた。

 普段なら令嬢の手を取って、手の甲にキスをするバイデン伯爵令息だけど、触れるべきその手を、スカーレット嬢は握りしめたまま差し出してはくれなかったからね。

「あの、バイデンさん、ちょっと手や体を触らせてもらってもいいですか?」
「おや?君もタンザビアと同じことを言うのだね?いいだろう、存分に触りたまえ。」

 髪をかきあげて、腰に手を当てたポーズで顎を上げるバイデン伯爵令息は、寸法を測るかのような動きなんだけど、でもそれだけじゃない感じで動くスカーレット嬢に、体中を触られるがままにしていた。

「それは何をしているんですか?」
「──筋肉の付き方を見てるのさ。
 人間は使う筋肉が偏るもんだからね。」
「へえ……そういうものなんですね。」

「それにあわせて、付き方を矯正した作りにするのか、それとも今の付き方で動かしやすいような作りにするのかを考えるんだ。」

 そう言いながら、バイデン伯爵令息の体中を遠慮なく触っている。オーダーメイドの武器って、こういう風に作る準備がいるんだ。

 それにしても、スカーレット嬢は、あんなに遠慮なく男性の体に触って恥ずかしくないのかな?これが職人ってやつ?むしろバイデン伯爵令息のほうが恥ずかしそうだよね。

 なんかちょっと焦ったように、照れたようにしながら、それを表情に出さないようにしてプルプルしてるもの。だって……キレイな女の子に、あんなとこまで触られるの?

 僕だったら恥ずかしくて無理だよ!
 内股の付け根だとかオシリだとか……。
 プロ根性が凄いんだろうな。スカーレット嬢はぜんぜん動じていないや。

 そもそもバイデン伯爵令息は、自らを貴族だと名乗ったのに、僕相手の時とまったく態度が変わらないものね。貴族だろうとお客はお客って感じなのかな。

「貴族って聞いても、動じないのね?
 スカーレットさん。」
 ミーニャがそこを突っ込んでくる。

「確かに……。普通は緊張するわよね。
 だってヘタに怒らせたら、なにされるかわからないもの。貴族なんてものは。」
 とヒルデも同意する。

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。