上 下
501 / 504
第3章

第500話 スカーレット嬢をスカウト

しおりを挟む
 スカーレット嬢が、契約魔法の書類にサインをして血判を押し、それを空中に放り投げると、それが青い炎をまとって消えた。

 普段商人と取引してる鍛冶職人、かつ魔道具職人だけあって、契約魔法には驚かないみたいだね。みんな初めてで驚くんだけどな。

「──これで契約完了ですね。ではまず、僕の国、フルバティエにご案内いたします。」
「あ、あんたの国!?ねえ待って、さっきからどういうことなのか理解出来ない!」

「ここは人が来るかも知れませんし、移動先でゆっくりご説明しますので、まずは僕について来ていただけませんか?タンザビアさんと一緒ですので、ご安心ください。」

「う……、おじいちゃんも、一緒?」
「ああ、そうだ。だから安心して一緒に来るがいい。おじいちゃんが元龍神なことは、スカーレットもわかっているだろう?」

「おじいちゃんの強さは知ってるよ……。
 わかった、一緒に行くよ……。ついたらちゃんと色々と説明してよね……。」
「はい、もちろんです。」

 驚くスカーレット嬢とタンザビアさんを伴って、時空の扉を出し、魔道昇降でフルバティエに到着した。つくまでの間、スカーレット嬢はずっとキョロキョロしながら、タンザビアさんがまとうマントの裾を握っていた。

 眉を下げてこわごわといった表情だったから、初めて見る時空の扉も、時空の海の中も怖かったんだろうな。そもそも契約魔法の件で、ちょっと不安がらせちゃったし。

 まあ、僕も初めて時空の海の中に入った時は、凄くワクワクもしたけど、同時にちょっと怖かったしね。基本真っ暗で、アイテムボックスの扉だけが光ってる空間だし。

「──つきましたよ!
 ここが僕の国、フルバティエです!
 ここはなんと雲の上なんですよ!」
「く、雲の上ぇ!?」

「どうだ、驚いたろう。俺も初めて聞いた時は驚いたもんさ。ほらそこ、雲が動いているだろう?ここが雲の上って証拠さ。」
「ひえっ!?」

 タンザビアさんが地面の脇で動く雲を指さして、楽しげに笑っている。スカーレット嬢を驚かせたいから、雲の上ってことは内緒にしてくれって言われてたんだよね。

 タンザビアさんって、ひょっとして結構イタズラ好きの人なのかも?スカーレット嬢は魔道昇降の出口のすぐ脇で動く雲を見て、怯えたようにバッと後ろに飛び退いた。それを楽しそうに笑ってみているタンザビアさん。

「お、お、お前、そんなとこにいないで、もうちょっとこっち来いよ。風でも吹いたら、おっこっちまうかも知れねえだろ?」

「え?ああ、だいじょうぶですよ。ほら、見えませんけど、ここにシールドが張ってあるので、空に見えますけど、壁なんです。」

 僕はシールドに手をついて、グッと押して見せたんだけど、スカーレット嬢は、ヒイイイイ!と悲鳴を上げて、ますます怖がった。

「そんな土の際っきわに張っているような、薄っぺらいもんなんて、な、なんかの拍子で割れちまうかも知れねえだろうが……。
 あ、あたし高いとこ駄目なんだよ……。」

 タンザビアさんの後ろに隠れるように、というか、捕まって落ちないようにしているみたいに、ギュッとマントにしがみついてる。

「ああ、すみません……。じゃあ、雲の下が見えるのも怖いですよね……。早速城に移動しましょうか。ここに足を乗せれば、地面が移動するので、すぐですので。」

「ひっ!ヒイイイイ!動いた!
 地面が動いた!気持ち悪い!」
「すみません、慣れて下さい……。」
「なんだよ、楽しいだろ?」

 怖がるスカーレット嬢とは正反対に、動く地面に毎回楽しそうなタンザビアさん。
 どうやって動かしてるんだ?って気にしていたから、道具職人の血が騒ぐのかな。

 お茶会の時に、タンザビアさんは、スカーレット嬢と同じく、鍛冶職人と道具職人のスキルを持っているって言ってたからね。

「これが魔道具だったらなあ。どうやって動かしているのか知りたいとこだったが。」
「すみません、僕のスキルで出したので、何で動いてるのかまではわからなくて……。」

「は?出した?スキルで?」
 驚いた表情で、タンザビアさん越しに僕を見るスカーレット嬢。並び順は、スカーレット嬢、タンザビアさん、僕、って感じだ。

「ええ、僕のスキルが、こうした、特殊なものを生み出せるスキルだったので……。」
「だからって、雲の上に国や城を作るかね?
 普通考えないだろ?そんなこと。」

 まあ、考えたのはキリカなんだけど……。
「英雄候補たちを、他の国の干渉から守る為には、誰にも手出し出来ない、安全な場所に国を作る必要があったので。」

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...