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第3章

第487話 使徒候補だった人

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「まあその場合は、アレックスに授けたスキルは与えられなかったがな。あれは使うのにかなりの素地を必要とする。」
 ガレシア兄さまが遠くを見るように言う。

「そうねぇ。だからアレックスを半神半人として使徒にしない時のことを考えて、既にスキルを渡している人間もいるのよねぇ。」
 エリシア姉さまがのんびりと言った。

「え!?そうなんですか!?」
 初耳だよ!僕が使徒に選ばれなかった場合に、代わりになる筈だった人がいたなんて!

「だって後から渡せないもの。このスキルは唯一無二のもの。それに使いこなす為には普通の人間の体じゃ無理だもの。」
 ミボルフィア姉さまがそう言った。

「その子どもには、どのようになってもいいように、スキルの種というスキルを、与えて生まれさせてあるのだ。これならアレックスを使徒にしなかった場合にも、使徒にした場合にも、対応が可能だというわけだな!」
 レスタト兄さまがカッカッカと笑う。

「それでもアレックスと同じスキルは無理だけどね。与えたところで普通の体じゃ使いこなせないからさ!」
 マルグス兄さまがそう言った。

「その人は……、今どこに?」
「あなたの近くにこの間までいたじゃない?
 最近離れてしまったけど。」
 ミボルフィア姉さまが僕を見てくる。

「え?最近まで一緒にいた人……。
 まさかリリーフィア王女ですか!?」
 でも、過去に魚人が英雄にも勇者にも、当然使徒になった記録もないんだけどな。

 魚人は魔族と婚姻することが多いから、そもそも7英雄候補じゃないんだよね。
 どちらかというと魔族側、人間の側にも魔族の側にもつかないのが魚人族なんだ。

 でも他に最近まで近くにいた人って……。
「──誰?」
「王女?また新しい女の人?」

 ヒルデとミーニャが、笑っているのに、なんだかおっかない顔でこちらを見てくる。
「え、えと、僕の店の従業員で、自分の国から家出してきた王女さまというか……。」

「まさか一緒に住んでるの?」
「まさか!女性専用の宿屋を、従業員宿舎として借り上げて、使ってもらってるよ!」
「そ、ならいいわ。」

 そう言ってヒルデが紅茶を口にする。
 ミーニャもヒルデも、僕がちょっと知らない女の人の名前を口に出すと、なんだかとっても怖くなるよね……?

「王家の影が、この間までアレックスの護衛をしていただろう。今はオフィーリアのところにいるのだったか。」
 とディダ姉さまが言う。

「レンジアだったかな?アレックスが呼んでいた彼女の呼び名は……。彼女は先代勇者と獣神の子どもだからね。アレックスの代わりとしてはちょうどよかったんだ。」
 スローン兄さまがそう言って微笑んだ。

 え……。
「えええええ~~~!?レ、レンジアですか!?た、確かに先代勇者と獣神の子どもなら、スペックは高いかと思いますけど……。」

「わ、私の子どもが使徒さま候補……。」
 それを聞いたラーラさんが目を丸くして、口をぽかんと開けている。

「アレックスにスキルを授けるまで、獣神になられたら困るから、彼女の獣化を止めることになってしまったけれどね……。
 そこは申し訳なかったわ。」
 ミボルフィア姉さまが眉を下げる。

「アレックスを使徒と決めたことで、それを止める理由がなくなったが、自ら自然に獣化出来なくなってしまったのだ。」
 ガレシア兄さまが眉を潜める。

「オニイチャンが手助けしたので、そこは大丈夫です。レンジアさんは無事、獣神ルートに進んでいらっしゃいますから。」
 とキリカが言った。

「あ、レンジアが今まで獣化出来なかったのって、そういう理由があったんですか。てっきり捨て子だったからだと思ってました。」

 捨てられたことで獣化の仕方を、仲間から教えて貰えなかったからだと思ってたけど、それだけじゃなかったってことだね。

「まあ、実際それもあったんだけど、獣化するとより獣人らしくなって、獣神ルートに入っちゃうからね!」
 マルグス兄さまが明るくそう言う。

 獣人の生理現象である獣化が出来ないと、獣人は成長が止まってしまうんだって、キリカが教えてくれたっけ。だからレンジアはちょっと幼い体型をしていたんだよね。

 それが僕の代わりに、神の使徒になる可能性があったからだったなんて申し訳ないな。
「じゃあ、僕が使徒になったことによって、彼女のスキルの種はどうなるんですか?」

 僕が使徒じゃなかったら、僕の代わりに使徒になる為のスキルになる筈だったわけだよね?でも実際僕が使徒になったからには、代わりのスキルに変化してる筈だよね?

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