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第3章

第485話 別れた道

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 みんなが宴会場の巨大なテーブルに着席すると、スローン兄さまが神力でお茶とお茶菓子を準備してくれて、それらが自動で各自の目の前に配られていく。

「こんな魔法、初めて見たのにゃ!
 凄いのにゃ!」
 エルシィさんが楽しげにはしゃいでいる。

「これ、魔法じゃないんですよ、あとで詳しく説明しますけど……。まずは皆さんの自己紹介をお願いします。こちらの皆さんはスウォン皇国の獣神候補の皆さんたちです。」

「エルシィ・マメオにゃ!
 美毛猫族にゃ!」
「それがし、達犬族のポチギ・ギギルと申す者。よろしく頼む。」

「プッカ・ノーベルだよ。幻狸族なんだ。」
「綿羊族のぉ~、ヒナ・アッカですぅ~。」
「……星豹族の、ルリと呼んでくれ。
 訳あってフルネームは明かせない。」

 ルルゥさんは逡巡した結果そう告げた。
 ルリ自体も、偽名だけどね。御庭番だから本名は内緒にしてるみたいだ。

「他にスウォン皇国の皇帝であらせられる、クローディア・アウフモスさまも獣神候補のお1人なんだけど、国を離れて訓練には加われないってことで、不参加なんだ。」

「まあ確かに、他にいないならともかく、たくさん候補がいるのなら、王さまは戦いに参加しないわよね。」
「そうね、せいぜい王子さまくらい?」

 と、ヒルデとミーニャが納得している。
「こちらがミーニャとヒルデ。僕の奥さんたちです。既に自己紹介したから、わかってると思うけど、英雄候補の2人だよ。」

「俺は先代英雄の1人、元龍神のアイザック・タンザビアだ。スウォン皇国には何度も来たことがあるが、エルシィ以外は初めましてだな。師匠を引き受けることになった。」

「アイザックが師匠にゃんて、頼もしいのにゃ~。よろしく頼むのにゃ!」
「よろしくおねがいしますぅ~。」
「お頼み申す!」

 みんながめいめいに挨拶をしている。それと……、と僕は少し言葉を濁して話す。
「こちらが僕の兄弟たちです。」

「兄弟?アレックスもアタシたちに負けず劣らず、兄弟が多いにゃりんね。」
「これで全部じゃないんですけどね、僕の会ったことのない人たちもいるみたいで。」

「狩りと鍛冶の神、ガレシアだ!今日は英雄候補たちの様子を見に来たのだ。」

「私は大地と豊穣の神、ミボルフィアよ。闘技場に祝福を授けてあるから、戦いやすくなってると思うわ。」

「私は美と愛の神、エリシアよ。英雄候補のみんなには、期待してるわぁ。」

「僕はマルグス、健康と結婚の神だよ!
 みんな、緊張しないでね!」

「酒と音楽の神、スローンです。ちなみに先程お茶とお菓子を出したのは神力ですね。」

「我は知性と発展の神、レスタトである!
 胸を借りたければ、今日であればいくらでも相手をしてやろう!」

「私は嫉妬と誘惑の神、ディダ。横恋慕しているやつがいるとすぐにわかるぞ。
 叶えたいのなら協力してやってもいい。」

「私は情報と通信の女神キリカです。オニイチャンの唯一の妹です。まだ生まれたばかりの神なので、ご存じないと思いますけど。」

「それでね、僕が“ななつをすべしもの”であることは話したと思うけど、それ以外にも秘密があってね。僕も半分神さまなんだ。
 黙っててごめんね。」

 兄弟がそれぞれ名乗ったあと、ルルゥさんとラーラさんは呆然とし、他は全員意識が飛んでいて、意識が戻るまで少し待った。

「ど、どういうことにゃ!?アレックスが神で、アレックスの兄弟たちも神さまにゃ!?
 じょ、冗談きついにゃあ……。」

「いや、わざわざ情報秘匿の魔法契約をかわさせてまで話したのだ。これが冗談のたぐいとは思いにくい……。」
 ラーラさんが真剣な表情で言った。

「あなた方が神だと言うのならば、失礼を承知で聞いてみたいことがある。」
「ラーラ!?何いってるにゃ!?
 ほんとに神さまだったらどうするにゃ!」

「ふむ?内容によるが、聞いてやろう。
 何が聞きたいと言うんだ?」
 ガレシア兄さまが腕組みしながら答える。

「勇者と他の英雄のことだ。今までも代々勇者たちが現れては、各国で取り合いになり、私たちの時も、金も資材も出さないのに、成果だけを欲しがる王族に悩まされてきた。
 なのになぜ今回はこんなにも英雄候補を生み出したのか。それを教えてくれないか。」

「それを話していないのか。もともと英雄になれる可能性のある人間はたくさんいたんだが、人間はそうなる為の努力をしなかった。
 逆に魔族は与えられたスキルを鍛えて努力をし、どんどん力をつけていったんだ。」

「──魔族はもともと、あんなに強くなかったということか!?まさか魔王も!?」
「そうだ。もともと人間と魔族は変わらない力と可能性を持っていたのだよ。」
 ガレシア兄さまが静かに説明しだす。

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