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第3章

第462話 世界樹のかわりになる力

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 レスタト兄さまが椅子を引いて、母さまはそこに腰掛けて紅茶をひと口飲んだ。
 あらこれ美味しいわね、と嬉しそうにしている。紅茶に母さまの加護がつくかもね。

 捧げ物として神殿におさめれば、母さまたちのところに届くみたいだけど、いかんせん世界中からだから、数が多いからねえ……。いちいち全部吟味してられないんだろうな。

「それで、リシャーラ王国の話をしていたんだったわね?私もアレックスと同意見なの。
 思い出の土地だから潰したくはないわ。」

 母さまに優しくそう言われて、兄さまたちがちょっとしょんぼりとする。
「でも、王族に対しての話は別よ?
 もしもこれ以上何かしてくるのなら……。」

「神罰だね!?母さま!!」
 マルグス兄さまが楽しそうに言う。僕も国王さま次第では、それはありだと思う。そこまで腐ってるとは考えたくないけど……。

「エザリス王国だったかしら?2000年前の時は……。あそこと同じには、したくないのよ。だから神託の内容を考えなくてはね。」
 母さまが穏やかにそう言った。

 2000前の時は、他の大国は国ごとなくなって、エザリス王国だけは残ったけど、他の国から存在を無視されてしまったからね。

「確かに、国や土地が残っても、人間の国から爪弾きにされてしまっては、国は死んだも同然であるな。そこは考慮しようと思う。」

「神託の言葉を、もっと人の言葉に寄せる?
 僕たち全員で神託を降ろすなら、短い言葉の中に無理やりたくさんの意味を詰め込まなくてもいいからね。」

 スローン兄さまもそう言った。
 確かにななつをすべしものの神託なんて、ほんと分かりづらいからねえ。おかげで僕のことを探しにくくはなったんだけど……。

 というか、神託って基本一文で表すから、意味がわかりにくいよね。結果がともなって初めて、ああそういうことだったのか、ってわかる感じっていうのかな。

 次世代の“選ばれしもの”が現れるっていう神託に関しては、毎回同じ内容だから、さすがにすぐにわかるようになってるけど。

「そうね、その時までに神託の内容を考えておきましょう。伝わりやすい言葉でね。」
 エリシア姉さまが紅茶を飲んでそう言う。

「──そうだ、母さまとお会い出来た時に伺おうと思っていたことがあるんですが。」
 念話はスタミナを消費するから、あんまりゆっくり話せないしね。

「なあに?」
「世界樹のことなんです。
 世界樹が発芽すると、魔王の力を吸い取って、封印することができるのですよね?」

「そうね。ただし発芽させるには、たくさんの聖なる力が必要ね。世界樹が育つもとになる栄養は神聖力だけれど、瘴気に満たされた世界には、そもそもそれがないから。」

「……だから、勇者の命を吸うのですか?
 勇者と聖女は代々神によって召喚された存在で、この世界に来た時から、神の力が宿った肉体を持っているから。」

 母さまは少し寂しそうに微笑みながら、
「……そうね。最悪、そうなるわね。
 だけど肉体を失うことで、勇者と聖女はもとの世界に戻れるようにもなるわ。」

「代々の勇者たちは、もとの世界に戻りたいから、最後の手段として、自分の心臓を使って、世界樹の種を発芽させることを厭わないということですか?」
「……そのようね。心を覗いた限りは。」

「だけど、もともと母さまたちは、この世界の人たちが、勇者や聖女になれるように、世界を構築されたのですよね?
 ならばこの世界の人たちが肉体を犠牲にした場合、その人たちはどうなるのですか?」

 僕はずっと、そのことが気になっていたんだ。だって、この世界の人間が勇者になった場合、死んでも戻る世界なんてないんだ。

 そして僕は、叔父さんとヒルデに、まずは勇者になって貰おうと思っているから、最悪の時は2人のどちらかが、または両方の命が犠牲になってしまうってことなんだ。

「その場合は、私たちの世界に来るのよ?」
「母さまたちの世界?神界ですか?」
「ええ、その身を犠牲にして世界を救った功績で、神の世界に来ることが出来るの。」

「人間はもともと、人間だった時代の功績次第では、我々の世界に来ることが可能なように、世界が作られているのだよ。……まあ、滅多にそういうことにはならないがね。」

 ガレシア兄さまがそう教えてくれる。
 だったら叔父さんは、最悪の時のことを気にしないかも知れないなあ……。
 だってむしろ母さまに会えるようになるだけなんだもの。

「他の方法はないのでしょうか?世界樹の力をもってしても、それでも封印しか出来なくて、結局時間が経てばまた復活してしまいます。それでは意味がないです。」

「あなたがその方法を作ればよいのよ。」
 母さまがニッコリと微笑んだ。
「僕が?」

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