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第3章

第438話 英雄育成の説明

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「ミルドレッドさん?こんな風にわがままを言うのなら、この際使役を外しますよ?」
 僕の言葉に、ミルドレッドさんがビクッとして、目をパチクリさせている。

「ア、アレックス……?まさか、よもやわらわを手放そうと言うのではあるまいえ?」
「それもやむなしですね。」

「じゃ、じゃが!わらわの認識阻害魔法がなければ、敵から姿を隠していられないのであろ?わらわがいなくては困るであろ?」

「僕はもうすぐ自分の国を作るつもりです。
 そこは雲の上、僕の許可した人間以外入ることが出来ません。ドラゴンですら、雲の上までは飛べない。そこなら安全ですから。」

「く、雲の上に国を作るじゃと!?」
「僕のスキルはそれが可能なんです。」
 驚いて目を丸くしているミルドレッドさんと、ヒルデにも説明する為に伝える。

 それに、と僕は付け加える。
「……飲んだら敵の目の代わりになる薬が市場に出回っているんです。ついにそれを飲んだ人間が僕の前に現れました。」

「敵の目の代わり?」
「薬を飲んだ人間の目を通して、敵が物を見ることが可能なんです。単体認識阻害魔法は僕を僕だと認識いている人には通じない。」

「なら広域認識阻害魔法をかければよいであろ?それならまだわらわに使い道が、」
 僕は手のひらを向けて言葉を制した。

「それだとルカリア学園に通えませんし、取引の際にも困るから、あえて単体魔法をお願いしているわけじゃないですか。」

「じゃが、普段は雲の上におるからよいとしても、地上にいる場合困るじゃろうが。」
 ミルドレッドさんはあくまで引かない。

「それならそれに即した魔法なりスキルなりを生み出すだけですよ。僕がスキルを生み出せるのは、さっき見たばかりですよね?」

「ぐぬぬ……。」
 ついには何も反論出来なくなったミルドレッドさん。ガックリとうなだれると、

「あい、わかったのじゃ……。
 もうワガママは言わぬゆえ、アレックスのそばに置いてたも。」
 と言った。

「わかっていただけて何よりです。」
「じゃが!わらわは諦めぬからの!いつの日かアレックスの妻におさまってみせる!」

「期待しないで待ってますよ。」
 と僕はニッコリした。とりあえず、今すぐどうのこうのという話ではなくなったので、僕はほっと息を吐いた。

 まあ、ミルドレッドさんが英雄になれる可能性があるのなら、僕もそこを検討しないといけないかも知れないんだけどね。
 ミルドレッドさんは竜人じゃないしな。

「それで、ルーデンス王太子たちの件は、いったんこれで進めるとして、英雄としての話を、ミーニャと、ヒルデと、レンジアにしたいんだ。オフィーリア嬢には、あとで僕から話すから、まずは3人に聞いて欲しい。」

「レンジア?」
 ヒルデが聞き慣れない名前に軽く首をひねったところで、僕はレンジアに、出てきて、とお願いをした。

「──お願い、了解……。」
 そう言って、隠密をといたレンジアが姿を現して、思わずヒルデがビクッとする。

 ミルドレッドさんは僕の家で何度も会っているから、特に動揺した素振りもない。
「彼女はレンジア。オフィーリア嬢専属の、王家の影だよ。彼女も英雄候補なんだ。」

「そ、そうなの。伯爵令嬢に王家の影がついているって……。皇太后さま絡み?」
「たぶんね。ルーデンス王太子殿下にも、専属の王家の影はいないからね。」

「ああ、そういえば、王家の影は政務を担っている人にしか持てないとかなんとか。
 聞いたことがあるわ。」
 ヒルデが1人で納得している。

「レンジアとも既に、口外禁止の魔法の契約書を結んであるから、安心して。
 僕は明日先代の英雄だった人に会う為に、そのお孫さんに会いに行くつもりなんだ。」

「──先代勇者の孫?」
「うん、意外なことに、アタモナイの町に住んでいたんだよ。その人なら居場所を知っている筈だからって教えてもらって。」

「会いに行ってどうするの?」
「実はもう1人、既に先代英雄の賢神に、英雄育成の強力をお願いしてあるんだ。
 その人は今、魔塔の賢者をしてるんだ。」

「え……、ちょっと待って、先代って、200年も前よね?そんな昔の人たちが、まだ生きてるっていうの?」

「うん、1人はダークエルフで、もう1人はナムチャベト王国出身なんだ。ナムチャベト王国は竜人とドワーフの血が混じった人がたくさん住んでいる、優秀な鍛冶職人がたくさんいる国だからね。長生きなんだと思う。」

「ああ、ナムチャベト王国出身なの……。
 それなら不思議じゃないわね。」
「お孫さんも鍛冶職人と道具職人をしている人で、やっぱり英雄候補なんだよ。」

「英雄の孫だっていうのなら、その人も仲間に入れるってこと?」
「僕としては、彼女にもお願いしたいなって思ってるよ。龍神の可能性が高いからね。」

「「──彼女?」」
 僕の言葉に、ミーニャとヒルデの目がキラリと光ったことに、僕は気付けないでいた。

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