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第3章
第425話 消しますか?
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休憩時間になって、僕はヒックスさんに、あの子のことが気になるの?と聞いてみることにした。あの子、と言われて、ヒックスさんがビクッとした表情で僕を見る。
「ア、アレックス……。」
僕に対しても、何かをいいたげで言い出せない雰囲気のヒックスさん。いつもの様子とまるで違う。いったいどうしたんだろうか?
【オニイチャン。】
その時、キリカが頭の中で僕に話しかけてくる。どうしたの?
【私に聞いてください。
──ヒックスさんに何があったのかを。】
ああ、そうか、キリカは見ているんだものね。僕が命にかかわらないことは教えないでと言ったから、キリカは出来るだけ、僕が尋ねるまで人のことを伝えなくなったから。
……放っておくと、聞いてはまずい他人の秘密まで、教えてしまうからね……。
キリカ、ヒックスさんはどうしたの?
どうしてこういう状況なのかな。
【回答、パル・ヒックスの知り得た秘密について。先日パル・ヒックスは王太子、ルーデンス・ソバト・リシャーラと、その側近の秘密を目撃しました。】
──王太子の秘密?
それってどんなこと?
【王太子、ルーデンス・ソバト・リシャーラは、学園の平民や下位貴族の女生徒たちを騙して、乱暴を働いています。】
乱暴?
【はい、性的な意味合いで行う特別な乱暴です。パル・ヒックスはその現場に居合わせてしまい、決定的な場面こそ目にしていませんが、かなり王太子、ルーデンス・ソバト・リシャーラたちを疑っている状態です。
パル・ヒックスが先程から気にしている女生徒が、その時の被害者になります。
その話を詳しく彼女としたいけれど、出来ないでいるという状況のようです。】
王太子と側近の秘密ってことは、宰相の子息とかのことだよね。あそこは小さい時からずっと一緒に行動しているもの。
【オニイチャンは彼らとは、あんまり親しくないんですよね。】
うん、なんとなく反りが合わなくて……。
なんていうか、彼らは良くも悪くも、この国の貴族らしい貴族だからね。平民や下位貴族を見下しているところがあるからさ。
僕はミーニャのこともあるし、ミーニャの母親である僕の乳母のマーサは、母さまが亡くなってから母親代わりだったから、平民を見下す感覚がわからなくてさ。
うちは貴族の純血を守ることが、貴族の使命だって人たちが多い国だけど、能力第1主義の国だってたくさんあるからね。そういう国だと活躍している平民も多いし。
【まあ、それが懸命だと思います。
そんなわけで、パル・ヒックスはずっと気を揉んでいる状態だということですね。】
うちの中枢部に関わる人たちって、どうしてみんなそういう感じなのかなあ……。
王宮に見学に行った際に見た、彼らの父親を見る限りでも、遺伝子を感じるよ。
【ただ貴族に生まれたというだけで、特権階級を与え過ぎたことによる、勘違いを引き起こしているのでしょうね。自分たちを他人の存在を踏みにじって良い立場の人間であると考えているのであろうことが明確です。】
僕からすると、たまたまその地位に生まれたっていうだけのことなんだけどなあ。
それだけで僕が他人よりも優れているだなんて、思ったこともないよ。
【オニイチャンはそうでしょうね。
でも大半の人間は違うんですよ。
ちやほやされて生きることを、当たり前として享受して生きていますから。】
どうしてそんなことをするのかなあ。
それに無理やりなんて気持ちが悪いよ。
行為そのものだけをすることの、何が楽しいのか、僕にはわからないや。
結婚前から好きな人を愛人にして、政略結婚の相手が亡くなってすぐに再婚した父さまや、1人の女性を思って独身を貫いている叔父さんにも、理解出来ないことだと思う。
もちろん生涯お祖母さまを愛していたお祖父さまだってそうだろうし。多分リアムもだろうね。キャベンディッシュ侯爵家の血筋でそれをしたがる男性はいないと思うな。
というかそもそもリシャーラ王国は、王族会議に参加している国だからね。
さすがに他国に知られたらまずいことくらい、みんなわかりそうなものだけどな。
自分たちの、王太子という立場や、将来の宰相候補としての地位を考えたら、不用意なことは出来ないと考えるのが自然なのに。
【知られたらまずいことを知っていてなお、彼らにとっては魅力的な行動なのでしょう。
他人の尊厳を踏みにじることに、快感を得る人たちが一定数存在するようですね。
消しますか?この国。──地図から。】
消さないよ!?
大半の国民はまともな人達だからね!?
一部が腐っているからって、その人たちごと消したり出来るわけがないでしょう!?
────────────────────
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「ア、アレックス……。」
僕に対しても、何かをいいたげで言い出せない雰囲気のヒックスさん。いつもの様子とまるで違う。いったいどうしたんだろうか?
【オニイチャン。】
その時、キリカが頭の中で僕に話しかけてくる。どうしたの?
【私に聞いてください。
──ヒックスさんに何があったのかを。】
ああ、そうか、キリカは見ているんだものね。僕が命にかかわらないことは教えないでと言ったから、キリカは出来るだけ、僕が尋ねるまで人のことを伝えなくなったから。
……放っておくと、聞いてはまずい他人の秘密まで、教えてしまうからね……。
キリカ、ヒックスさんはどうしたの?
どうしてこういう状況なのかな。
【回答、パル・ヒックスの知り得た秘密について。先日パル・ヒックスは王太子、ルーデンス・ソバト・リシャーラと、その側近の秘密を目撃しました。】
──王太子の秘密?
それってどんなこと?
【王太子、ルーデンス・ソバト・リシャーラは、学園の平民や下位貴族の女生徒たちを騙して、乱暴を働いています。】
乱暴?
【はい、性的な意味合いで行う特別な乱暴です。パル・ヒックスはその現場に居合わせてしまい、決定的な場面こそ目にしていませんが、かなり王太子、ルーデンス・ソバト・リシャーラたちを疑っている状態です。
パル・ヒックスが先程から気にしている女生徒が、その時の被害者になります。
その話を詳しく彼女としたいけれど、出来ないでいるという状況のようです。】
王太子と側近の秘密ってことは、宰相の子息とかのことだよね。あそこは小さい時からずっと一緒に行動しているもの。
【オニイチャンは彼らとは、あんまり親しくないんですよね。】
うん、なんとなく反りが合わなくて……。
なんていうか、彼らは良くも悪くも、この国の貴族らしい貴族だからね。平民や下位貴族を見下しているところがあるからさ。
僕はミーニャのこともあるし、ミーニャの母親である僕の乳母のマーサは、母さまが亡くなってから母親代わりだったから、平民を見下す感覚がわからなくてさ。
うちは貴族の純血を守ることが、貴族の使命だって人たちが多い国だけど、能力第1主義の国だってたくさんあるからね。そういう国だと活躍している平民も多いし。
【まあ、それが懸命だと思います。
そんなわけで、パル・ヒックスはずっと気を揉んでいる状態だということですね。】
うちの中枢部に関わる人たちって、どうしてみんなそういう感じなのかなあ……。
王宮に見学に行った際に見た、彼らの父親を見る限りでも、遺伝子を感じるよ。
【ただ貴族に生まれたというだけで、特権階級を与え過ぎたことによる、勘違いを引き起こしているのでしょうね。自分たちを他人の存在を踏みにじって良い立場の人間であると考えているのであろうことが明確です。】
僕からすると、たまたまその地位に生まれたっていうだけのことなんだけどなあ。
それだけで僕が他人よりも優れているだなんて、思ったこともないよ。
【オニイチャンはそうでしょうね。
でも大半の人間は違うんですよ。
ちやほやされて生きることを、当たり前として享受して生きていますから。】
どうしてそんなことをするのかなあ。
それに無理やりなんて気持ちが悪いよ。
行為そのものだけをすることの、何が楽しいのか、僕にはわからないや。
結婚前から好きな人を愛人にして、政略結婚の相手が亡くなってすぐに再婚した父さまや、1人の女性を思って独身を貫いている叔父さんにも、理解出来ないことだと思う。
もちろん生涯お祖母さまを愛していたお祖父さまだってそうだろうし。多分リアムもだろうね。キャベンディッシュ侯爵家の血筋でそれをしたがる男性はいないと思うな。
というかそもそもリシャーラ王国は、王族会議に参加している国だからね。
さすがに他国に知られたらまずいことくらい、みんなわかりそうなものだけどな。
自分たちの、王太子という立場や、将来の宰相候補としての地位を考えたら、不用意なことは出来ないと考えるのが自然なのに。
【知られたらまずいことを知っていてなお、彼らにとっては魅力的な行動なのでしょう。
他人の尊厳を踏みにじることに、快感を得る人たちが一定数存在するようですね。
消しますか?この国。──地図から。】
消さないよ!?
大半の国民はまともな人達だからね!?
一部が腐っているからって、その人たちごと消したり出来るわけがないでしょう!?
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