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第3章
第415話 貴族の知らない平民の習慣
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──講習?
「そうですわね、わたくしも最初に講習を受けさせていただいて、それは助かりましたもの。皆さん受けたほうがよいですわね。」
とオフィーリア嬢が言う。講習って冒険者の講習?そんなのあったんだ。僕は叔父さんに言われて一応冒険者登録しただけだから、そういうのは受けなかったんだよなあ。
そういうギルドのサービスの詳しい説明とかも、聞いてみれば教えてくれたのかも知れないけど、……たぶん叔父さんが一緒だったから、基本的な説明だけされたんだろうな。
叔父さんから教わるだろうし、って。
でも、たまに冒険者ギルドでパーティーに参加してる新人らしき人を見かけるけど、講習を申し込んでる姿って見かけないなあ。
他の人も申し込みしていないのかな?
そもそも冒険者は、他の仕事につけなくて冒険者になる人が多いから、少しでも早くクエストに出て稼ぎたいだろうしね。
実際、僕は常に叔父さんと一緒に行動してるけど、大抵の人はパーティー募集の掲示板を見て、そこで人数を集めて行くからね。
ヒルデみたいなソロって珍しいんだ。
そこで誰か少しでも先輩のパーティーに入れてもらえれば、冒険者に必要なことは、僕が叔父さんに教えてもらったみたいに教えてもらえる筈だし、わざわざ講習を受けたがる人は少ないのかも知れないね。
「そうだな、特に貴族の子どもたちは、金を持たされて放逐されることがほとんどだからな。仕事が見つからなくて冒険者になるのなら、積極的に講習を受けたほうがいい。」
「テイラーギルド長。」
ヒルデの見た方を振り返ると、冒険者ギルド長である、ハリー・テイラーさんが、腰に右手を当てながら立っていた。
「俺は放逐などされん。」
サイラスが面白くなさそうにそう言う。
サイラスだって、後継者じゃないんだし、まだ婚約者だっていないんだから、わからないと思うけどなあ。
いつまでもオフィーリア嬢にこだわってないで、さっさと男爵家でもいいから婚約者を探さないと、貴族じゃなくなってしまうのがわからないかな?
せっかく貴族の子息子女が集まるルカリア学園にいるんだから、この機会に見つけたほうが良いと思うけどな?
「あんたはそうでも、後ろの子どもたちはそうじゃないみたいだな?」
そう言ってテイラーギルド長が首を傾げ、サイラスの後ろの男女数名に目線をやる。
もじもじした様子で目線をそらすのその子たちは、おそらくまだ婚約者がいなくて、一族の後継者でもない子たちなんだろう。
だから今のうちに冒険者登録をして、冒険者講習を受けにきたってことなのかな?
ヒルデもオフィーリア嬢も冒険者だし、知り合いが冒険者の先輩にいると心強いよね。
「ええ、皆さん学園で知り合ったんですの。あまり成績に自信がおありでないようで、就職が難しそうだとおっしゃるので、冒険者講習のことを紹介させていただいたのですわ。
身を守るためには大切なことですもの。」
とオフィーリア嬢が胸に手を当て言った。
「そうだな。仕事につけなかった貴族の子どもたちは、みんな一律冒険者になりにくる。
だが、そういう奴らは見ていてすぐにわかる。ギラギラしていないからな。」
「──そういう子どもを狙って専門に襲ってる奴らなんかもいるのよ。町の治安が悪くなるし貴族の側でももう少しどうにかして欲しいものだわ。放逐する子どもにお金を渡せばいいってもんじゃないのよ。お金を持ってて無防備な子どもなんて、そういう奴らからしたらいいカモが来たのと同じことだもの。」
と肩をすくめながらヒルデが言う。
「そうだな。平民は貴族にペコペコすると思っているようだが、平民がそれを恐れるのはその家の権力と兵士だけだ。」
テイラーギルド長が笑いながら言う。
「特定の場所で暮らす平民には、領地をおさめる貴族だったり、その関わりのある貴族たちと、回り回って関わることになる。だから睨まれると怖いんだ。だが犯罪者は違う。」
テイラーギルド長は、サイラスの目の奥を覗き込むようにして言った。
テイラーギルド長の迫力に、サイラスがゴクリ……と、ゆっくりと唾を飲み込んだ。
「貴族を襲ったところで、逃げてしまえばそれまでだ。決まった家や土地がない。いわば奪われる財産がない。──何も持たないやつは強い。なりふり構う必要がない。」
「それに、貴族にあって平民にない習慣を知らないものね。そこで元貴族なんだと、私たち平民にはすぐにわかるわ。」
とヒルデも言う。
「安い服を着ていても、それを知らない貴族は、自分たちが平民とは違うことを、行動で示してしまう。ましてや放逐されたばかりの貴族の子どもは、大半が金を持っている。」
「だからそこを狙われるのよ。
少しでも放逐される可能性があるのなら、貴族は全員知っておくべきことだわ。」
ヒルデは特にサイラスを見ながら言う。
「放逐された後の子どもと、連絡を取ってはいけないだかなんだか知らないけど、放逐された子どもがそこで大半死ぬか、犯罪者になることを知らないのね。」
と言うヒルデの言葉に、テイラーギルド長がうんうんと頷いている。
貴族の知らない平民の習慣って、なんだろうか……?僕もそれで最初狙われたのかな?
────────────────────
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ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。
「そうですわね、わたくしも最初に講習を受けさせていただいて、それは助かりましたもの。皆さん受けたほうがよいですわね。」
とオフィーリア嬢が言う。講習って冒険者の講習?そんなのあったんだ。僕は叔父さんに言われて一応冒険者登録しただけだから、そういうのは受けなかったんだよなあ。
そういうギルドのサービスの詳しい説明とかも、聞いてみれば教えてくれたのかも知れないけど、……たぶん叔父さんが一緒だったから、基本的な説明だけされたんだろうな。
叔父さんから教わるだろうし、って。
でも、たまに冒険者ギルドでパーティーに参加してる新人らしき人を見かけるけど、講習を申し込んでる姿って見かけないなあ。
他の人も申し込みしていないのかな?
そもそも冒険者は、他の仕事につけなくて冒険者になる人が多いから、少しでも早くクエストに出て稼ぎたいだろうしね。
実際、僕は常に叔父さんと一緒に行動してるけど、大抵の人はパーティー募集の掲示板を見て、そこで人数を集めて行くからね。
ヒルデみたいなソロって珍しいんだ。
そこで誰か少しでも先輩のパーティーに入れてもらえれば、冒険者に必要なことは、僕が叔父さんに教えてもらったみたいに教えてもらえる筈だし、わざわざ講習を受けたがる人は少ないのかも知れないね。
「そうだな、特に貴族の子どもたちは、金を持たされて放逐されることがほとんどだからな。仕事が見つからなくて冒険者になるのなら、積極的に講習を受けたほうがいい。」
「テイラーギルド長。」
ヒルデの見た方を振り返ると、冒険者ギルド長である、ハリー・テイラーさんが、腰に右手を当てながら立っていた。
「俺は放逐などされん。」
サイラスが面白くなさそうにそう言う。
サイラスだって、後継者じゃないんだし、まだ婚約者だっていないんだから、わからないと思うけどなあ。
いつまでもオフィーリア嬢にこだわってないで、さっさと男爵家でもいいから婚約者を探さないと、貴族じゃなくなってしまうのがわからないかな?
せっかく貴族の子息子女が集まるルカリア学園にいるんだから、この機会に見つけたほうが良いと思うけどな?
「あんたはそうでも、後ろの子どもたちはそうじゃないみたいだな?」
そう言ってテイラーギルド長が首を傾げ、サイラスの後ろの男女数名に目線をやる。
もじもじした様子で目線をそらすのその子たちは、おそらくまだ婚約者がいなくて、一族の後継者でもない子たちなんだろう。
だから今のうちに冒険者登録をして、冒険者講習を受けにきたってことなのかな?
ヒルデもオフィーリア嬢も冒険者だし、知り合いが冒険者の先輩にいると心強いよね。
「ええ、皆さん学園で知り合ったんですの。あまり成績に自信がおありでないようで、就職が難しそうだとおっしゃるので、冒険者講習のことを紹介させていただいたのですわ。
身を守るためには大切なことですもの。」
とオフィーリア嬢が胸に手を当て言った。
「そうだな。仕事につけなかった貴族の子どもたちは、みんな一律冒険者になりにくる。
だが、そういう奴らは見ていてすぐにわかる。ギラギラしていないからな。」
「──そういう子どもを狙って専門に襲ってる奴らなんかもいるのよ。町の治安が悪くなるし貴族の側でももう少しどうにかして欲しいものだわ。放逐する子どもにお金を渡せばいいってもんじゃないのよ。お金を持ってて無防備な子どもなんて、そういう奴らからしたらいいカモが来たのと同じことだもの。」
と肩をすくめながらヒルデが言う。
「そうだな。平民は貴族にペコペコすると思っているようだが、平民がそれを恐れるのはその家の権力と兵士だけだ。」
テイラーギルド長が笑いながら言う。
「特定の場所で暮らす平民には、領地をおさめる貴族だったり、その関わりのある貴族たちと、回り回って関わることになる。だから睨まれると怖いんだ。だが犯罪者は違う。」
テイラーギルド長は、サイラスの目の奥を覗き込むようにして言った。
テイラーギルド長の迫力に、サイラスがゴクリ……と、ゆっくりと唾を飲み込んだ。
「貴族を襲ったところで、逃げてしまえばそれまでだ。決まった家や土地がない。いわば奪われる財産がない。──何も持たないやつは強い。なりふり構う必要がない。」
「それに、貴族にあって平民にない習慣を知らないものね。そこで元貴族なんだと、私たち平民にはすぐにわかるわ。」
とヒルデも言う。
「安い服を着ていても、それを知らない貴族は、自分たちが平民とは違うことを、行動で示してしまう。ましてや放逐されたばかりの貴族の子どもは、大半が金を持っている。」
「だからそこを狙われるのよ。
少しでも放逐される可能性があるのなら、貴族は全員知っておくべきことだわ。」
ヒルデは特にサイラスを見ながら言う。
「放逐された後の子どもと、連絡を取ってはいけないだかなんだか知らないけど、放逐された子どもがそこで大半死ぬか、犯罪者になることを知らないのね。」
と言うヒルデの言葉に、テイラーギルド長がうんうんと頷いている。
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