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第3章

第404話 罪の理由

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「パルフェが勇者を愛していたかは、正直わからないけれどね。パルフェはただ助ける力をもらうのではなく、世界樹になることから勇者を救おうとしていたのでしょうね。」

「心臓の世界樹の種を発芽させる以外の方法で、魔王を倒そうと……?」
「守護者としては当然の行動でしょうね。だって守護対象が死んでしまうのだから。」

 カナンは神さまを──スローン兄さまを誘惑した罪で、ディダ姉さまに記憶を消され、あわや消失寸前の罰を受けた。

 ディダ姉さまの力もきかないほどに、強かったというカナンの誘惑の力がなければ、スローン兄さまは精霊に誘惑されるなんてことはなかっただろうし、神を誘惑した罪でカナンが断罪されることもなかっただろう。

 それは彼女が精霊王と竜王の娘という、特別に強い精霊だったからこそなんだろうな。
 それが罪だともわからずに、カナンは無邪気に、守護対象である勇者の為に、神から力を得ようとしてしまったんだ。

「神は言ったわ。勇者と聖女をつかわす以上の手助けを、神は人に行うことが出来ないのだと。本来であれば、神が力を貸さずとも、生き物たちに戦う力を与えてあるのだと。」

 世界中の人の中で、かなりの数の人たちが英雄として目覚める可能性を、もとから母さまたちは与えているからだね。だけど人間はそれに気づくことがなかった。

「ましてや神を誘惑することは大罪だと。
 その罪により、パルフェを処罰すると。」
 それがディダ姉さまが言っていた、カナンの罪……なんだね。

「パルフェを消されそうになった勇者は、パルフェの宝石をアイテムボックスの中に入れて、誰にも手出しできないようにして、聖女に自分の心臓を世界樹へと変えさせたの。」

「……勇者が死んでしまえば、神といえどもアイテムボックスから、宝石を取り出すことは出来ないからですね?」
「そう思ったんでしょうね。」

 実際僕が時空の海の力を手にするまで、誰も200年前の勇者のアイテムボックスに、干渉することは出来なかったわけだしね。
 カナンは勇者が命をかけて守ったんだ。

「パルフェとしては勇者を助けようとしての行動だったけれど、結果としてパルフェのその選択が、勇者を死に追いやったのよ。勇者は最後は世界でなく、愛する人の為に死んだの。その行動により、魔王は封じられた。」

「そうだったんですね……。」
「結果として、私たちは何も出来なかったに等しいわ。勇者を世界樹にしない為に行動したのもパルフェなら、世界樹を生み出して世界を救ったのは勇者と聖女だもの。」

「そんなことは……。」
「なんの結果も出せなかったと言われても、仕方がないと私は思っているの。」

 うなだれるエリクソンさんに、今回の魔王討伐に参加して欲しい話を、僕は言い出しにくくなった。エリクソンさんは前回のことでかなり心を折られているみたいだから。

 だけど賢神の先輩として、英雄を育てるのに協力はして欲しい。誰か一人英雄を生み出せたら、せめて賢者まで変化させられたら、もう一度会いにきてみようかな。

「代々の勇者が自分の心臓を使って魔王を封印してきたとして、それが記録として残っていなかったのは、今までの英雄たちが、みんなその時の戦いで亡くなったからですか?」

「中央聖教会が保管している記録簿を、英雄に選ばれると見せてもらえるのだけど、それを見る限りはそのようね。だから当時の情報は何も知ることが出来なかったわ。」

「──でも、エリクソンさんは生きていらっしゃいますよね?今までの英雄の中で、唯一生き残った人だということですよね?」

「……まあ他にもいるけど、人前に姿を表しているという点においてはそうなるわね。」
「他にもいらっしゃるんですか?」
「ええ、隠れ住んでるみたいだけどね。」

 となると、長命種ってことだよね?
 200年前の戦いに参加したんだから、人間なら生きているわけないもの。
 ドワーフとか、獣人とかかな?

「僕、エリクソンさんに、誰も当時の話を聞いてこないというのが、とても不思議なんです。だっていつかまた魔王は復活するのに。
 数少ない生き残った英雄なのに。」

「事情聴取はされたわよ。それこそ中央聖教会からも、ありとあらゆる国からもね。
 個人的に直接聞きに来た人がいないというだけの話よ。」

「なら、どうしてエリクソンさんは、封印の方法を、書籍にしるすなり、なんらかの形で世界に発表しなかったんですか?方法があるならみんな知りたい筈だと思うんですが。」

 だって、毎回封印しか出来ないわけだし、封印の方法だけでも、知識として知っておけるなら事前に知りたい筈だよね?

「それとも秘匿事項として、中央聖教会にだけ保管されているんでしょうか?」
 だったら世間に公表されてないのも理解出来る。倒し方が絵本とかになってないのも。

「いいえ、話していないわ。誰にも。──神に言われたからよ。あるものを持参した人間にのみ、それを話しても構わないと。」

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