405 / 504
第3章
第404話 罪の理由
しおりを挟む
「パルフェが勇者を愛していたかは、正直わからないけれどね。パルフェはただ助ける力をもらうのではなく、世界樹になることから勇者を救おうとしていたのでしょうね。」
「心臓の世界樹の種を発芽させる以外の方法で、魔王を倒そうと……?」
「守護者としては当然の行動でしょうね。だって守護対象が死んでしまうのだから。」
カナンは神さまを──スローン兄さまを誘惑した罪で、ディダ姉さまに記憶を消され、あわや消失寸前の罰を受けた。
ディダ姉さまの力もきかないほどに、強かったというカナンの誘惑の力がなければ、スローン兄さまは精霊に誘惑されるなんてことはなかっただろうし、神を誘惑した罪でカナンが断罪されることもなかっただろう。
それは彼女が精霊王と竜王の娘という、特別に強い精霊だったからこそなんだろうな。
それが罪だともわからずに、カナンは無邪気に、守護対象である勇者の為に、神から力を得ようとしてしまったんだ。
「神は言ったわ。勇者と聖女をつかわす以上の手助けを、神は人に行うことが出来ないのだと。本来であれば、神が力を貸さずとも、生き物たちに戦う力を与えてあるのだと。」
世界中の人の中で、かなりの数の人たちが英雄として目覚める可能性を、もとから母さまたちは与えているからだね。だけど人間はそれに気づくことがなかった。
「ましてや神を誘惑することは大罪だと。
その罪により、パルフェを処罰すると。」
それがディダ姉さまが言っていた、カナンの罪……なんだね。
「パルフェを消されそうになった勇者は、パルフェの宝石をアイテムボックスの中に入れて、誰にも手出しできないようにして、聖女に自分の心臓を世界樹へと変えさせたの。」
「……勇者が死んでしまえば、神といえどもアイテムボックスから、宝石を取り出すことは出来ないからですね?」
「そう思ったんでしょうね。」
実際僕が時空の海の力を手にするまで、誰も200年前の勇者のアイテムボックスに、干渉することは出来なかったわけだしね。
カナンは勇者が命をかけて守ったんだ。
「パルフェとしては勇者を助けようとしての行動だったけれど、結果としてパルフェのその選択が、勇者を死に追いやったのよ。勇者は最後は世界でなく、愛する人の為に死んだの。その行動により、魔王は封じられた。」
「そうだったんですね……。」
「結果として、私たちは何も出来なかったに等しいわ。勇者を世界樹にしない為に行動したのもパルフェなら、世界樹を生み出して世界を救ったのは勇者と聖女だもの。」
「そんなことは……。」
「なんの結果も出せなかったと言われても、仕方がないと私は思っているの。」
うなだれるエリクソンさんに、今回の魔王討伐に参加して欲しい話を、僕は言い出しにくくなった。エリクソンさんは前回のことでかなり心を折られているみたいだから。
だけど賢神の先輩として、英雄を育てるのに協力はして欲しい。誰か一人英雄を生み出せたら、せめて賢者まで変化させられたら、もう一度会いにきてみようかな。
「代々の勇者が自分の心臓を使って魔王を封印してきたとして、それが記録として残っていなかったのは、今までの英雄たちが、みんなその時の戦いで亡くなったからですか?」
「中央聖教会が保管している記録簿を、英雄に選ばれると見せてもらえるのだけど、それを見る限りはそのようね。だから当時の情報は何も知ることが出来なかったわ。」
「──でも、エリクソンさんは生きていらっしゃいますよね?今までの英雄の中で、唯一生き残った人だということですよね?」
「……まあ他にもいるけど、人前に姿を表しているという点においてはそうなるわね。」
「他にもいらっしゃるんですか?」
「ええ、隠れ住んでるみたいだけどね。」
となると、長命種ってことだよね?
200年前の戦いに参加したんだから、人間なら生きているわけないもの。
ドワーフとか、獣人とかかな?
「僕、エリクソンさんに、誰も当時の話を聞いてこないというのが、とても不思議なんです。だっていつかまた魔王は復活するのに。
数少ない生き残った英雄なのに。」
「事情聴取はされたわよ。それこそ中央聖教会からも、ありとあらゆる国からもね。
個人的に直接聞きに来た人がいないというだけの話よ。」
「なら、どうしてエリクソンさんは、封印の方法を、書籍にしるすなり、なんらかの形で世界に発表しなかったんですか?方法があるならみんな知りたい筈だと思うんですが。」
だって、毎回封印しか出来ないわけだし、封印の方法だけでも、知識として知っておけるなら事前に知りたい筈だよね?
「それとも秘匿事項として、中央聖教会にだけ保管されているんでしょうか?」
だったら世間に公表されてないのも理解出来る。倒し方が絵本とかになってないのも。
「いいえ、話していないわ。誰にも。──神に言われたからよ。あるものを持参した人間にのみ、それを話しても構わないと。」
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「心臓の世界樹の種を発芽させる以外の方法で、魔王を倒そうと……?」
「守護者としては当然の行動でしょうね。だって守護対象が死んでしまうのだから。」
カナンは神さまを──スローン兄さまを誘惑した罪で、ディダ姉さまに記憶を消され、あわや消失寸前の罰を受けた。
ディダ姉さまの力もきかないほどに、強かったというカナンの誘惑の力がなければ、スローン兄さまは精霊に誘惑されるなんてことはなかっただろうし、神を誘惑した罪でカナンが断罪されることもなかっただろう。
それは彼女が精霊王と竜王の娘という、特別に強い精霊だったからこそなんだろうな。
それが罪だともわからずに、カナンは無邪気に、守護対象である勇者の為に、神から力を得ようとしてしまったんだ。
「神は言ったわ。勇者と聖女をつかわす以上の手助けを、神は人に行うことが出来ないのだと。本来であれば、神が力を貸さずとも、生き物たちに戦う力を与えてあるのだと。」
世界中の人の中で、かなりの数の人たちが英雄として目覚める可能性を、もとから母さまたちは与えているからだね。だけど人間はそれに気づくことがなかった。
「ましてや神を誘惑することは大罪だと。
その罪により、パルフェを処罰すると。」
それがディダ姉さまが言っていた、カナンの罪……なんだね。
「パルフェを消されそうになった勇者は、パルフェの宝石をアイテムボックスの中に入れて、誰にも手出しできないようにして、聖女に自分の心臓を世界樹へと変えさせたの。」
「……勇者が死んでしまえば、神といえどもアイテムボックスから、宝石を取り出すことは出来ないからですね?」
「そう思ったんでしょうね。」
実際僕が時空の海の力を手にするまで、誰も200年前の勇者のアイテムボックスに、干渉することは出来なかったわけだしね。
カナンは勇者が命をかけて守ったんだ。
「パルフェとしては勇者を助けようとしての行動だったけれど、結果としてパルフェのその選択が、勇者を死に追いやったのよ。勇者は最後は世界でなく、愛する人の為に死んだの。その行動により、魔王は封じられた。」
「そうだったんですね……。」
「結果として、私たちは何も出来なかったに等しいわ。勇者を世界樹にしない為に行動したのもパルフェなら、世界樹を生み出して世界を救ったのは勇者と聖女だもの。」
「そんなことは……。」
「なんの結果も出せなかったと言われても、仕方がないと私は思っているの。」
うなだれるエリクソンさんに、今回の魔王討伐に参加して欲しい話を、僕は言い出しにくくなった。エリクソンさんは前回のことでかなり心を折られているみたいだから。
だけど賢神の先輩として、英雄を育てるのに協力はして欲しい。誰か一人英雄を生み出せたら、せめて賢者まで変化させられたら、もう一度会いにきてみようかな。
「代々の勇者が自分の心臓を使って魔王を封印してきたとして、それが記録として残っていなかったのは、今までの英雄たちが、みんなその時の戦いで亡くなったからですか?」
「中央聖教会が保管している記録簿を、英雄に選ばれると見せてもらえるのだけど、それを見る限りはそのようね。だから当時の情報は何も知ることが出来なかったわ。」
「──でも、エリクソンさんは生きていらっしゃいますよね?今までの英雄の中で、唯一生き残った人だということですよね?」
「……まあ他にもいるけど、人前に姿を表しているという点においてはそうなるわね。」
「他にもいらっしゃるんですか?」
「ええ、隠れ住んでるみたいだけどね。」
となると、長命種ってことだよね?
200年前の戦いに参加したんだから、人間なら生きているわけないもの。
ドワーフとか、獣人とかかな?
「僕、エリクソンさんに、誰も当時の話を聞いてこないというのが、とても不思議なんです。だっていつかまた魔王は復活するのに。
数少ない生き残った英雄なのに。」
「事情聴取はされたわよ。それこそ中央聖教会からも、ありとあらゆる国からもね。
個人的に直接聞きに来た人がいないというだけの話よ。」
「なら、どうしてエリクソンさんは、封印の方法を、書籍にしるすなり、なんらかの形で世界に発表しなかったんですか?方法があるならみんな知りたい筈だと思うんですが。」
だって、毎回封印しか出来ないわけだし、封印の方法だけでも、知識として知っておけるなら事前に知りたい筈だよね?
「それとも秘匿事項として、中央聖教会にだけ保管されているんでしょうか?」
だったら世間に公表されてないのも理解出来る。倒し方が絵本とかになってないのも。
「いいえ、話していないわ。誰にも。──神に言われたからよ。あるものを持参した人間にのみ、それを話しても構わないと。」
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
224
お気に入りに追加
2,084
あなたにおすすめの小説
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる