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第3章
第402話 辛い記憶
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「勇者の心臓を……、使う?
それってどういうことですか?」
エリクソンさんは、話しにくいことに口が乾いたのか、お酒を一口飲んだ。
「……勇者はね、そうなった時点で、心臓に種を持つのよ。世界樹の種をね。
それを発芽させて育てる力を持つのが、聖女という存在なの。」
「──心臓から種を発芽させたんですか!?
生きている勇者の心臓から!?」
「……ええ、そうよ。」
エリクソンさんが眉間にシワを寄せる。
「私たちの目の前で、勇者の体は世界樹へと変わった。止める間もなく変わってしまったのよ。そして世界樹は魔王の瘴気を吸い上げて、魔王の体はくちていったの。」
なんてことだろうか。
どうしても魔王を倒せなくて、代々封印しか出来ないということは知ってたけど。
まさか代々そんなことをしてたなんて。
それを知ってなお、勇者は自らを犠牲にして、それを知っていてなお、聖女は勇者の体を世界樹に作り変えたってことなのか。
「まるで自爆……ですね。」
「ええ。それに近いわ。魔王に最も近付いた瞬間、……その為に彼は近付いたんでしょうね。世界樹の種は発芽した。」
「え?待って下さい、中央聖教会にある世界樹は、まさか……。」
「そうよ。あれは、初代勇者が世界樹へと姿を変えたものなのよ。」
魔塔もある、中央聖教会近くに、ひと目見てわかる巨大な木。──世界樹。
今も世界を浄化し続ける、人間の住める土地を増やしてくれているという存在。
あれが、初代の勇者だったなんて。
「ですが、世界樹を育む力を持つと予言を受けたのは、初代の聖女さまだけですよね?
なぜ後世の代の聖女さまたちが、世界樹を発芽させられたのですか?」
代々その方法しか取れなかったのだとしても、世界樹を育てる力を持っていたのは、初代さまだけだとして、世界中が認識をしているのに。そうじゃなかったってことなの?
「世界樹を育てる力を持っていたのは、初代の聖女さまだけではなかったと言うことですか?初代さまが世界樹を育てて、世界樹が力を取り戻したということは聞いています。」
「絵本にもなっている、英雄伝説ね。
……あれは正確には、魔王の瘴気を浄化して枯れかけた世界樹に、更に力を与えて、世界樹として根付かせたものだそうよ。」
そんなこと、少なくとも僕が読んだことのある本には書いていなかったし、家庭教師からも教わっていない。誰も知らない。
──実際に戦った英雄たちしか。
魔王をどうすれば倒せるのか。
倒せないまでも封印する方法がわかっているのなら、誰かが何かしらの形で残していてもおかしくないよね。
だって封印は何度もとかれて、魔王は復活しているんだから。だけどエリクソンさんはそれをしなかった。──いったいなぜ?
「中央聖教会の世界樹は、初代の聖女さまが魔王の封印をした際に、魔王の瘴気を吸い尽くして枯れかかった世界樹に、更に力を与えて育み、復活させたものとされているわ。」
「それが出来たのは、初代さまだけだったということですね?他の聖女さまは、魔王の瘴気を吸い尽くして枯れた世界樹を、復活させるほどの力はなかった……。」
「ええ。初代さまは植物に対し、特に力を持っていたそうだから。魔王を封印してもなお残る瘴気を浄化する為に、神が特別に力をお与えになったんでしょうね。」
確かに世界樹が生える前は、人間の住める土地が著しく少なくなっていたけど、聖女さまのおかげで瘴気が浄化されて、中央聖教会を中心に人が住める土地が増えたんだよね。
子どもの頃絵本で読んだよ。
だから中央聖教会は、人間の住む土地のど真ん中に存在しているんだって。
「世界樹が、浄化の為の武器だということでしょうか?世界中の瘴気を薄く出来る世界樹は、魔王の瘴気すらも吸い付くせると。」
「ええ、そうよ。世界樹は瘴気を吸ってなくすことの出来る唯一の存在よ。聖女が育てた世界樹は、魔王の持つ瘴気すらも浄化することが出来る。吸い尽くして枯れるの。」
「中央聖教会には、今も初代の聖女さまが育んだとされる世界樹がありますよね?
あれがもと初代勇者さまだとして、魔王の瘴気を吸い尽くして封印してなお、初代聖女さまによって唯一枯れなかった世界樹が。」
「そうね。魔王の封印に使われて、枯れなかったのは中央聖教会の世界樹だけね。」
「そこから種を採ることは出来ないんでしょうか?勇者の心臓を種にしなくても……。」
僕は時空の海のアイテムボックスから、世界樹の葉を手に入れている。世界樹の葉は、万が一死ぬような目にあったとしても、一度だけ身代わりになってくれるものだ。
勇者さまたちが魔王を倒しに行く際に、中央聖教会から勇者さまたちに、世界樹の葉を手渡されると聞いたことがあるよ。
そこから種をとって育めば、なにも勇者の心臓から発芽しなくてもいい筈だよ。そんな残酷で、勇者として戦いに行ってくれた人にばかり、負担をかけるやり方じゃなくとも。
たとえ勇者になると同時に、心臓が世界樹の種になるんだとしても、発芽しないうちは普通に生活して、戦いに挑んだんだろうし。
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それってどういうことですか?」
エリクソンさんは、話しにくいことに口が乾いたのか、お酒を一口飲んだ。
「……勇者はね、そうなった時点で、心臓に種を持つのよ。世界樹の種をね。
それを発芽させて育てる力を持つのが、聖女という存在なの。」
「──心臓から種を発芽させたんですか!?
生きている勇者の心臓から!?」
「……ええ、そうよ。」
エリクソンさんが眉間にシワを寄せる。
「私たちの目の前で、勇者の体は世界樹へと変わった。止める間もなく変わってしまったのよ。そして世界樹は魔王の瘴気を吸い上げて、魔王の体はくちていったの。」
なんてことだろうか。
どうしても魔王を倒せなくて、代々封印しか出来ないということは知ってたけど。
まさか代々そんなことをしてたなんて。
それを知ってなお、勇者は自らを犠牲にして、それを知っていてなお、聖女は勇者の体を世界樹に作り変えたってことなのか。
「まるで自爆……ですね。」
「ええ。それに近いわ。魔王に最も近付いた瞬間、……その為に彼は近付いたんでしょうね。世界樹の種は発芽した。」
「え?待って下さい、中央聖教会にある世界樹は、まさか……。」
「そうよ。あれは、初代勇者が世界樹へと姿を変えたものなのよ。」
魔塔もある、中央聖教会近くに、ひと目見てわかる巨大な木。──世界樹。
今も世界を浄化し続ける、人間の住める土地を増やしてくれているという存在。
あれが、初代の勇者だったなんて。
「ですが、世界樹を育む力を持つと予言を受けたのは、初代の聖女さまだけですよね?
なぜ後世の代の聖女さまたちが、世界樹を発芽させられたのですか?」
代々その方法しか取れなかったのだとしても、世界樹を育てる力を持っていたのは、初代さまだけだとして、世界中が認識をしているのに。そうじゃなかったってことなの?
「世界樹を育てる力を持っていたのは、初代の聖女さまだけではなかったと言うことですか?初代さまが世界樹を育てて、世界樹が力を取り戻したということは聞いています。」
「絵本にもなっている、英雄伝説ね。
……あれは正確には、魔王の瘴気を浄化して枯れかけた世界樹に、更に力を与えて、世界樹として根付かせたものだそうよ。」
そんなこと、少なくとも僕が読んだことのある本には書いていなかったし、家庭教師からも教わっていない。誰も知らない。
──実際に戦った英雄たちしか。
魔王をどうすれば倒せるのか。
倒せないまでも封印する方法がわかっているのなら、誰かが何かしらの形で残していてもおかしくないよね。
だって封印は何度もとかれて、魔王は復活しているんだから。だけどエリクソンさんはそれをしなかった。──いったいなぜ?
「中央聖教会の世界樹は、初代の聖女さまが魔王の封印をした際に、魔王の瘴気を吸い尽くして枯れかかった世界樹に、更に力を与えて育み、復活させたものとされているわ。」
「それが出来たのは、初代さまだけだったということですね?他の聖女さまは、魔王の瘴気を吸い尽くして枯れた世界樹を、復活させるほどの力はなかった……。」
「ええ。初代さまは植物に対し、特に力を持っていたそうだから。魔王を封印してもなお残る瘴気を浄化する為に、神が特別に力をお与えになったんでしょうね。」
確かに世界樹が生える前は、人間の住める土地が著しく少なくなっていたけど、聖女さまのおかげで瘴気が浄化されて、中央聖教会を中心に人が住める土地が増えたんだよね。
子どもの頃絵本で読んだよ。
だから中央聖教会は、人間の住む土地のど真ん中に存在しているんだって。
「世界樹が、浄化の為の武器だということでしょうか?世界中の瘴気を薄く出来る世界樹は、魔王の瘴気すらも吸い付くせると。」
「ええ、そうよ。世界樹は瘴気を吸ってなくすことの出来る唯一の存在よ。聖女が育てた世界樹は、魔王の持つ瘴気すらも浄化することが出来る。吸い尽くして枯れるの。」
「中央聖教会には、今も初代の聖女さまが育んだとされる世界樹がありますよね?
あれがもと初代勇者さまだとして、魔王の瘴気を吸い尽くして封印してなお、初代聖女さまによって唯一枯れなかった世界樹が。」
「そうね。魔王の封印に使われて、枯れなかったのは中央聖教会の世界樹だけね。」
「そこから種を採ることは出来ないんでしょうか?勇者の心臓を種にしなくても……。」
僕は時空の海のアイテムボックスから、世界樹の葉を手に入れている。世界樹の葉は、万が一死ぬような目にあったとしても、一度だけ身代わりになってくれるものだ。
勇者さまたちが魔王を倒しに行く際に、中央聖教会から勇者さまたちに、世界樹の葉を手渡されると聞いたことがあるよ。
そこから種をとって育めば、なにも勇者の心臓から発芽しなくてもいい筈だよ。そんな残酷で、勇者として戦いに行ってくれた人にばかり、負担をかけるやり方じゃなくとも。
たとえ勇者になると同時に、心臓が世界樹の種になるんだとしても、発芽しないうちは普通に生活して、戦いに挑んだんだろうし。
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