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第3章

第395話 魔法の手紙の実演

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「──イレギュラー?」

「アレックスさま、なにか来る。」

 レンジアの言葉とほぼ同時に、目の前に渦のようなものが広がっていく。
 一見禍々しい感じがして、ちょっと怖い。
「な、なに、これ……?」

【これは空間がつながる魔法ですよ、オニイチャン。空気の渦と同じような仕組みです。
 あちらは強制的なものですけどね。
 応接室が迎えに来ました。】

 とキリカがが教えてくれてほっとする。
 広がった渦がまた収束していったかと思うと、目の前に四角い飾り彫りを入れた焦げ茶色の木の扉が現れた。

「応接室の扉みたいだ。入ってみよう。」
 レンジアにそう言うと、レンジアがコックリとうなずいた。
「……失礼します。」

 応接室の扉を開けると、ソファーに腰掛けた、プラチナブロンドに、高い魔力保持者でることを示す金色の目のダークエルフの女性と、茶色い髪に青い目の男性の姿が見えた。

 2人とも、美男美女だなあ。
 バウアーさんは顎髭と胸元から見える胸毛がワイルドで、賢者というより近接職に見えるたくましい感じの人だね。

 エリクソンさんは一見冷たそうな切れ長の目をしていて、程よく筋肉がついた体が、やっぱり近接職の冒険者のように見える。
 英雄として戦うことが多かったからかな。

「アレックス・ラウマンさんだね。はじめまして。俺はエリック・バウアーだ。」
「……ミューレ・エリクソンよ。
 よろしく。どうぞ、座ってちょうだい。」

「失礼します。」
「申し訳ない、あんたのデータの解析が、なぜかエラーになっちまってな。何度か繰り返してて、それで時間がかかったんだ。」

 え?やっぱりそうなの?

「認識阻害魔法がかかっていたのはわかったんだが、それが原因とも思えん。
 まあ魔法使いじゃないことはわかったし、とりあえず通すことにした。」

「そうだったのですね。」
 スキルのせいか、僕が半分神さまだからなのか、どっちが原因なんだろう……。
 僕は内心汗ダラダラだった。

「マジックバッグを持っているよな?
 あと呪いのペンダントも。護衛は武器だ。
 それは預からせてくれ。」
「はい。」

 僕はマジックバッグとカナンのペンダントをバウアーさんに手渡した。レンジアも素直に暗器を出してバウアーさんに手渡した。

 王家の影に武器を手放させたことが知られたら、後で大変そうだなあ……。
 後で返すからな、と言って、バウアーさんがそれらをどこかの空間に放り込んだ。

 僕とレンジアは、並んでソファーに腰掛けた。エリクソンさんが無言でパチンと指を鳴らすと、テーブルの上にティーセットが現れた。わっ、凄い!これも無属性魔法かな?

「新しい無属性魔法を開発したんだってな?
 無属性魔法を研究しているとは珍しいな。
 さっそくで悪いが、見せてくれるか?」

「はい、3種類あります。」
「3種類も!?」
 バウアーさんが驚愕した表情を見せ、無表情だったエリクソンさんも眉を動かした。

「あ、魔法としては魔法の手紙という、ひとつの魔法なんですが、出し方に合わせて種類を作りました。それで3つです。」
 と僕は説明した。

「まず、“リーティア”。」
 僕は魔法の手紙を発動させた。
 僕の目の前に紙が現れる。

「魔法によって作成された手紙で、頭の中で思い浮かべた文字を文章にする為の物です。
 リーティアと唱えることで発動します。」

「これは、どうやって使うものなんだ?
 魔法なのに、あるものを出すのではなく、魔法で作られた物体が出て来るとは……。
 手に取って見ても?」

 それを見ただけでわかるなんて凄いな。
 ということは、さっきのティーセットを出した無属性魔法は、もともと存在していたティーセットを、この場に出現させる魔法か。

「どうぞ。」
 リーティアを手にしたバウアーさんは、リーティアを透かしてみたりしている。

「頭の中でなにか文章を思い浮かべてみて下さい。消す、と考えることで文字を消すことが可能です。固定、と考えることで文字が消えないようになります。」

「おお……!」
 紙に浮かんでくる文字を見て、バウアーさんが嬉しそうに驚嘆する。

「それをエリクソンさんに送ってみてください。蝶々の姿になって飛んでいきます。
 受け取ったエリクソンさんが手紙を読む時に、作成者の音声で、記載された文字を頭の中に自動で再生します。」

 バウアーさんが固定、と考えたのだろう、リーティアが蝶々の姿になって、エリクソンさんのところに飛んで行った。

 エリクソンさんの目の前で、蝶々が手紙の姿になって、エリクソンさんの広げた両手の上にポトリと落ちる。

「……本当だわ。
 バウアーの声で再生された。
 どうでもいいけど、もっとマシな手紙を送れないの、あなた。」

 そうエリクソンさんに言われたバウアーさんは、てへっと上向きに舌を出して、ウインクし、片手で頭を掻く真似をする。
 何が書いてあったんだろう?

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