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第3章

第387話 懸念材料

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 そういや、ヒルデの家族構成をキリカが教えてくれた時、お祖母さまって、いたっけ?

【同居していない人間は、家族構成にカウントしてないですね。例えば結婚して新たな家族を持った場合、両親や兄弟などと、もとの家族は別生計になりますので。

 あの時オニイチャンは、私に詳しいことを言わせないようにしましたから。あのまま聞いていたら、特筆事項として教えましたよ。

 聞かれなかったので、言わなかったまでですね。さっきもわざわざここに来て、直接本人に確認しなくても、私に聞いてくれたら教えられたのに。】

 ああ、そういう……。
 いや、ヒルデの聞いちゃいけない秘密を話し始めるんだもの!それは止めるよ!

 どっちにしろ、キリカに聞いて先に知れたとしても、これはあなたの親御さんのものですよね?なんてヒルデのお祖母さまに尋ねられないし、結局確認する必要があったよ。

【まあ、確かに。それはそうですね。】

 でしょ?
 僕は器用じゃないからね。
 下手に情報を先に知ってると、普通の態度が取れなくて、困ることもあると思うよ。

 特に他人の秘密はね。
 だから危険が迫ってるっていうんでもなければ、あんまり秘密は教えないで欲しいな。

【わかりました。確かにオニイチャンは嘘をつくのが下手ですからね。早くオニイチャンの役に立つところを見せたくて、私も焦っていたかも知れません。】

 いつも助かってるよ、ありがと、キリカ。

【……また頭をナデナデしてくださいね。
 膝に抱っこもつけてください。】

 ええ?抱っこ?キリカもう大きいでしょ?

【この大きさで生まれただけですよ。
 人間のように、家族にそういうことをしてもらったことはありません。
 だからもっとたくさんして下さい。】

 そっか。わかった。ならしてあげる。

【約束ですからね。】

 キリカの嬉しそうな声がする。

「それにしても、ヒルデがイーニオ王国の王族の血を引いていたとはね。」
「……私もびっくりよ。
 まだ半信半疑。」

 ヒルデのお祖母さまとご家族に別れを告げて、森に戻る道すがら、さっきの出来事を話していた。

「オフィーリア嬢と同じ立場だからね。
 レグリオ王国に知られたら、ヒルデのお祖母のおっしゃるとおり、狙われる可能性はなくはないけど、イーニオ王国に行ったら、王族か貴族との縁談を要請されるかもね。」

「冗談でしょ?お断りよ、貴族も王族も。」
 本当に嫌そうな表情でヒルデが言う。
「平民のほうがいい?」

「そうね。お金は冒険者で稼げるし、なにより自由だもの。オフィーリアの話を聞いてる限り、貴族って面倒だわ。」
「叔父さんもそう言ってたなあ……。」

「アレックスは違うの?」
「まだ平民になって浅いっていうのもあるけど、別に向いてないとは思うけど、そこまで嫌かって言われると別にって感じかな。」

「あえて戻りたいわけじゃないのね。」
「そうだね。別にどっちでも、って感じかなあ。貴族にも平民にも、それぞれいいところと悪いところがあると思うよ。」

「……ふうん、そう。私も平民が好き。
 アレックスが貴族に戻りたいわけじゃなくてよかったわ。」
 ヒルデはなぜか、少し嬉しそうだった。

 自宅に戻って、叔父さんに、95番目のアイテムボックスがヒルデのお祖母さまの父親のもので、フレシィティ王妃と逃げた近衛兵のものだったことを伝えた。

「そうか。フレシィティ王妃の……。
 アレックスの世代はあまり聞き及びがないだろうが、俺の世代の貴族の子どもたちは、塩の独占契約問題のせいで多少反発もあってか、レグリオ王国は王妃に逃げられた国だと揶揄する人間も多かったんだ。」

「結構根深いんだね。」
「レグリオ王国にとっては、まだ生々しい傷だと思う。ヒルデのお祖母さまの警戒は間違ってないかも知れないな。知られないようにしたほうがいいと、俺も思う。」

「わかりました、そうします。」
 叔父さんの言葉にヒルデがうなずいた。
 僕らの世代の貴族は話題にものぼらせないけど、あちらがどうだかわからないしね。

 叔父さんの世代の貴族がそうだったということは、今要職についている貴族たちは、レグリオ王国をそういう国だという風に見ながら、外交しているということだから。

 僕らからしたら今更子孫をとらえてどうこうなんて、馬鹿らしいことに思えるけど、諸外国にそういう目で見られる原因を作った人間を、末代まで呪ってないとも限らないし。

 明日ザックスさんにも話しを聞いてみようかな。王侯貴族の意見とは違うかも知れないけど、参考になる話が聞けるかも知れない。

 もしも平民の間でまで、フレシィティ元王妃に対する根深い反発があるのなら、ヒルデの身の安全に、最悪の場合も想定しておかないといけないかも知れないな。レグリオ王国がまだ子孫を探していたら、だけど。

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