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第3章

第385話 ヒルデの家族

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「えっ。このアイテムボックスの持ち主は、おそらく90歳以上だよ?ヒルデのお祖母さまって、そんなに年が離れてるの?」

「ううん、まだ60代よ。
 じゃあ違うのかしら……。」
「ひょっとしてご先祖とか?ねえ、ヒルデの家に行ってお話を伺えないかな?」

「お祖母様に?」
「もしもこれがヒルデのご先祖さまのものだとするなら、お返ししたいんだ。」

「そう……。そうね、なんだか他人だとは思えないし、いいわ、お祖母様に聞いてみましょ。はっきりさせたほうがいいものね。」

「じゃあ、ミーティアで早速、ご家族に手紙を出してくれる?いきなり行ったらびっくりさせるだろうし、先触れは大切だからね。」

「貴族の決まりってやつ?
 別にいいのに。まあいいわ。」
 ヒルデが僕に新しく手渡されたミーティアを使って、ご家族に手紙を出した。

「でも、向こうはこれを持ってないんだから返事はもらえないけどいいの?」
「あ、それもそっか。まあ何もないよりはいいかな。じゃあ、行こうか。」

「いこうか、って?」
「リシャーラ王国内に出る扉もあるんだ。」
 僕はヒルデを連れて、お祖父さまの扉の中へと入った。

「ヒルデの家ってどのあたり?」
「ホドナ領区のルナリア村よ。」
 そういえば、前に勝手にキリカがヒルデについて教えてくれた時に聞いたっけ。

「指定、ホドナ領区、ルナリア村!」
 僕はそう言って、お祖父さまのアイテムボックスの扉を開けた。

 扉を開けて出た場所は、明るい森の中だった。極力ひと目につかないように、森の中をイメージして扉を開けているんだけど、なんとか近くに森があったみたいで良かったよ。

「ここが……、うちの近くなの?」
「うん、その筈だよ。」
 光がより強くさして見える方に向かって、ヒルデとともに歩いていく。

 森を抜けると道に出た。
「ここがどのあたりかわかる?」
 ヒルデがキョロキョロとして、

「ここ、うちの近くの森だわ。
 危ないから入っちゃ駄目って言われて入ったことがなかったけど、こんな感じだったのね。こっちに向かえば家があるわ。」

 と言うので、ヒルデについて行くことにした。しばらく歩くと村の入口が見えて来た。
 魔物対策なのか、背の高い柵に囲まれて、入口の前に槍を持った村人が立っている。

「──ヒルデ!ヒルデじゃないか!
 久しぶりだなあ!」
「久しぶり、オットさん。」

 入口に立っていた村人に嬉しそうに話しかけられて、ヒルデも嬉しそうにしてる。
「それで?今日は結婚の報告に帰って来たのか?ヒルデもついに結婚かあ。」

「なっ……!ち、違うわよ!」
 ヒルデの傍らにいる僕を見て、ニヤニヤしながら言うオットさんに、ヒルデが慌てて訂正している。

「お祖母様に聞きたいことがあるって言うから連れて来たのよ。単なる里帰り。」
「そうか。喜ぶだろうな。早く行ってやれ。
 それよりもう少し帰って来たらどうだ?」

「そのうちね。今はまだやることがあるから定期的には無理よ。遠いもの。」
「そうか……。まあ仕方ないな。」
「じゃあもう行くわね。」

「ああ。またな。」
 ひらひらと手を振るオットさんと別れて、村の中に入って行く。

 2階建ての家はひとつしかなくて、あとは全部平屋だ。その唯一の2階建ての家がヒルデの家で、ルナリア村の村長宅らしい。

「ただいま。お祖母様は?」
「ヒルデ!よく帰ったな!」
「まあまあ、元気にしてた?」
「お姉ちゃん!おかえりなさい!」

 ヒルデのご両親と、弟さんが、ヒルデを見た途端駆け寄って来る。弟さんはリアムと同じくらいの年頃かな?お父さんと弟さんが赤髪で、お母さんは金髪だ。

「お祖母様にお客さんを連れて来たのよ。
 手紙に書いて先に送ったんだけど。」
「アレックス・ラウマンと申します。突然お邪魔させていただき申し訳ありません。」

 僕が胸に手を当て丁寧にお辞儀をすると、
「こ、この人は……、ひょっとしてヒルデの旦那になる人か?それで家族に挨拶に?」
「ちーがーうーわーよー!」

 ヒルデが両手の拳を握りししめて、力いっぱい否定する。
「うちのご先祖の物かも知れない遺品を見つけた人なの。お祖母様に確認して欲しくて、それで連れて来たのよ。──2階?」

「そうか。ああ、2階にいるから挨拶して来たらいい。後でお茶を持って行こう。」
「お願い。」

 僕は改めてご家族にお辞儀をしつつ、ヒルデと共に2階の階段を上がった。部屋のドアを開けると、揺り椅子に揺られながら、白髪交じりの金髪に青い目の女性が振り返る。

「ただいま、お祖母様。」
「おかえり、ヒルデ。
 そちらが手紙に書いていた方?」
 目の前で微笑む女性は、肖像画にとてもよく似ている、美しい人だった。

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