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第3章
第364話 もう1人の兄弟
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ネプレイースの体が、パチパチと瞬きをすると、パッと笑顔になって、
「アレックス?」
と僕に尋ねてきた。
「うん、ネプレイース。」
「ようやく顔が見れた!」
ネプレイースが嬉しそうに笑った。
「え?僕の顔を知らないの?神さまなのに?他の兄弟たちは、僕の顔を知っていたけど。
海の神さまだから?」
人間の顔を見られないとか?
「神というのは、自分が加護や祝福をしてる人間の顔しか見られないぞ?神の世界で生まれていないアレックスの顔は、父さまや母さまたちも自分では見れない筈だぞ?」
「え?じゃあ、どうやって僕の顔を知ったんだろう。みんな僕の顔を知ってたけど。」
あれは絶対、はじめましてだけど、はじめましてじゃない雰囲気と言うか。
今のネプレイースみたいに、知らない人を見てその人だと確認する感じが、少しもなかった気がするんだよね。
「あれは母さまと私の力です。母さまはオニイチャンに祝福も加護も授けてますから。
オニイチャンは神格が上がる前は、私を通じてみんなと念話をしましたよね?
話すのはオニイチャンのスタミナを使いますけど、姿を見せるだけなら、母さまを通じて私が行うことが可能です。せがまれてオニイチャンの姿を見せました。」
「あ、それでだったんだ……、ネプレイースはその場にいなかったの?」
「持ち場が違うから、基本父さまや母さまたちのいる神殿には立ち寄らないぞ。」
「じゃあ、日頃はずっと1人?」
こんなに小さいのに?
「私には私の守護する存在を見守る仕事があるからな。基本1人だそ。」
笑顔で言うネプレイースに、ちょっぴり寂しい気持ちがこみ上げる。こんなに小さい頃から仕事をして、父さまや母さまたちと離れて暮らしていたなんて。
そりゃあ遊べそうな年の近い親戚に、なんとか遊んで欲しくもなるよね。
しかも遊べるのが僕しかいないときたら。
まあ、今はキリカもここにいるけど。
「魔族を守護する神たちも、母さまたちと同じ神殿にはいませんね。だからオニイチャンの顔は知らない筈です。」
「あ、そうか。他にも親戚がいるんだっけ。
その人たちにも会えたらいいなあ。」
「人間の国を滅ぼして、魔族で世界統一するのに力を貸している神ですよ?」
会いたいですか?と、キリカが不思議そうに首を傾げる。魔族はすべてを瘴気に包ませて、魔物や魔族が暮らしやすい世界を作ろうとしているから、人間としては敵だ。
母さまたちは、人間も亜人も動物も魔族も魔物も、等しく暮らしていかれる世界を望んでいる。人間や亜人寄りというだけで、魔族に滅んで欲しいとは考えていない。
あくまでも、瘴気に世界が満たされて、バランスを崩す行為をよしとしていないというだけなんだ。人間が魔族を根絶やしにすることも、当然よしとはしていない。
だけど最近は、母さま以外の兄弟たちは、人間を見限りつつあると感じる。
そのほうが世界の為になるのなら、人間はいなくてもいいと考えてるんだ。
竜人なんかの他の亜人たちがたくさん増えれば、信仰する生き物の数はそれで変わらないし、別に人間でなくてもいいというのが、神さま──兄さまたちの本音。
神さまの与えた、加護や祝福を有効活用して、世界を発展させ、自らも強く進化し、人間の世界を脅かすまでに成長した魔族という存在は、神さまとしては、それが願った進化の最終形態なんだと兄さまたちは言った。
人間はそれに対してサボっていると。
神さまがそんな感覚で人間を見てるんじゃあ、人間の味方になる神さまは少ないよね。
「うーん……。どう考えているのかは知りたいから、会ってみたいとは思う。単純に会ったことのない親戚だって言うのもあるけど。
魔王とも一度話してみたい。変かな?」
「その気持ちはわからなくもないですが、私はあまりオススメはしません。」
「え?そうなの?」
なんでだろ?
「人間という弱い生き物は、個別に祝福を授けられなければ、他の動物と変わらなかった生き物です。その意識が特に強い神なので、魔王も人間を食べ物だと思ってますから。」
「ええ……。魔族って、人間を食べるの?
それは聞いたことがなかったよ。」
「アイバーリュスを強く信仰している種族は特に食べますね。魔王もそうです。」
「アレックスは半分人間なのだろ?
魔王やアイバーリュスに会ったら、食べられてしまうんじゃないか?」
「アイバーリュスは一応、僕と兄弟なんだよね!?兄弟でも食べるの!?
怖いんだけど!」
「食べ物が神と同じ姿をしていることを、よくは思っていない神です。半分人間の方を強く取るか、半分神であることを強く取るのかは、私にはわかりません。それに……。」
「半分神であるアレックスを食べたら、アイバーリュスの力が増すだろうな。人間は魔族に勝てなくなるんじゃないか?」
「え?僕を食べるとそんなことになるの?」
「神は他の神を食べることで力を増します。
アイバーリュスはそれを私たちに教えた神です。……私たちの兄弟は、本当はもう1人いたのですよ、オニイチャン。」
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「アレックス?」
と僕に尋ねてきた。
「うん、ネプレイース。」
「ようやく顔が見れた!」
ネプレイースが嬉しそうに笑った。
「え?僕の顔を知らないの?神さまなのに?他の兄弟たちは、僕の顔を知っていたけど。
海の神さまだから?」
人間の顔を見られないとか?
「神というのは、自分が加護や祝福をしてる人間の顔しか見られないぞ?神の世界で生まれていないアレックスの顔は、父さまや母さまたちも自分では見れない筈だぞ?」
「え?じゃあ、どうやって僕の顔を知ったんだろう。みんな僕の顔を知ってたけど。」
あれは絶対、はじめましてだけど、はじめましてじゃない雰囲気と言うか。
今のネプレイースみたいに、知らない人を見てその人だと確認する感じが、少しもなかった気がするんだよね。
「あれは母さまと私の力です。母さまはオニイチャンに祝福も加護も授けてますから。
オニイチャンは神格が上がる前は、私を通じてみんなと念話をしましたよね?
話すのはオニイチャンのスタミナを使いますけど、姿を見せるだけなら、母さまを通じて私が行うことが可能です。せがまれてオニイチャンの姿を見せました。」
「あ、それでだったんだ……、ネプレイースはその場にいなかったの?」
「持ち場が違うから、基本父さまや母さまたちのいる神殿には立ち寄らないぞ。」
「じゃあ、日頃はずっと1人?」
こんなに小さいのに?
「私には私の守護する存在を見守る仕事があるからな。基本1人だそ。」
笑顔で言うネプレイースに、ちょっぴり寂しい気持ちがこみ上げる。こんなに小さい頃から仕事をして、父さまや母さまたちと離れて暮らしていたなんて。
そりゃあ遊べそうな年の近い親戚に、なんとか遊んで欲しくもなるよね。
しかも遊べるのが僕しかいないときたら。
まあ、今はキリカもここにいるけど。
「魔族を守護する神たちも、母さまたちと同じ神殿にはいませんね。だからオニイチャンの顔は知らない筈です。」
「あ、そうか。他にも親戚がいるんだっけ。
その人たちにも会えたらいいなあ。」
「人間の国を滅ぼして、魔族で世界統一するのに力を貸している神ですよ?」
会いたいですか?と、キリカが不思議そうに首を傾げる。魔族はすべてを瘴気に包ませて、魔物や魔族が暮らしやすい世界を作ろうとしているから、人間としては敵だ。
母さまたちは、人間も亜人も動物も魔族も魔物も、等しく暮らしていかれる世界を望んでいる。人間や亜人寄りというだけで、魔族に滅んで欲しいとは考えていない。
あくまでも、瘴気に世界が満たされて、バランスを崩す行為をよしとしていないというだけなんだ。人間が魔族を根絶やしにすることも、当然よしとはしていない。
だけど最近は、母さま以外の兄弟たちは、人間を見限りつつあると感じる。
そのほうが世界の為になるのなら、人間はいなくてもいいと考えてるんだ。
竜人なんかの他の亜人たちがたくさん増えれば、信仰する生き物の数はそれで変わらないし、別に人間でなくてもいいというのが、神さま──兄さまたちの本音。
神さまの与えた、加護や祝福を有効活用して、世界を発展させ、自らも強く進化し、人間の世界を脅かすまでに成長した魔族という存在は、神さまとしては、それが願った進化の最終形態なんだと兄さまたちは言った。
人間はそれに対してサボっていると。
神さまがそんな感覚で人間を見てるんじゃあ、人間の味方になる神さまは少ないよね。
「うーん……。どう考えているのかは知りたいから、会ってみたいとは思う。単純に会ったことのない親戚だって言うのもあるけど。
魔王とも一度話してみたい。変かな?」
「その気持ちはわからなくもないですが、私はあまりオススメはしません。」
「え?そうなの?」
なんでだろ?
「人間という弱い生き物は、個別に祝福を授けられなければ、他の動物と変わらなかった生き物です。その意識が特に強い神なので、魔王も人間を食べ物だと思ってますから。」
「ええ……。魔族って、人間を食べるの?
それは聞いたことがなかったよ。」
「アイバーリュスを強く信仰している種族は特に食べますね。魔王もそうです。」
「アレックスは半分人間なのだろ?
魔王やアイバーリュスに会ったら、食べられてしまうんじゃないか?」
「アイバーリュスは一応、僕と兄弟なんだよね!?兄弟でも食べるの!?
怖いんだけど!」
「食べ物が神と同じ姿をしていることを、よくは思っていない神です。半分人間の方を強く取るか、半分神であることを強く取るのかは、私にはわかりません。それに……。」
「半分神であるアレックスを食べたら、アイバーリュスの力が増すだろうな。人間は魔族に勝てなくなるんじゃないか?」
「え?僕を食べるとそんなことになるの?」
「神は他の神を食べることで力を増します。
アイバーリュスはそれを私たちに教えた神です。……私たちの兄弟は、本当はもう1人いたのですよ、オニイチャン。」
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