304 / 485
第3章
第359話 待っていた人
しおりを挟む
リリーフィア王女は、自宅も同じように歌声で支払おうとしたのだけど、さすがにそれは大家さんが近くにいなくて無理だった。
代わりに不動産屋さんが、大家さんに魔法の手紙を飛ばしてくれて、かなり破格の家賃になるようかけあってくれた。
「うん!まーまーね!」
リリーフィア王女が選んだ部屋は、割と新しめで、とても明るく光が差し込んでいた。
2階建てで、ご近所さんは冒険者や、町で働く女性ばかりで、近くに役人の詰め所なんかもあって、若い女性の一人暮らしにオススメとのことだった。
ご近所さんに冒険者がいて、役人の詰め所まで近くにあったら、可愛い女の子が住んでいるからって、そうそう不埒なことを考える人はいないかもね。
キッチンとトイレは共同で、その分1人1人の部屋が広く取られている。清掃の人が来るそうだから、支払いが月に1回ってこと以外は、宿屋とあまり変わらない作りかもね。
生活に必要なものは、おいおい買い揃えていくことにして、必要最低限のものだけ、先に注文して届けてもらうことになっている。
「明日からは普通の勤務体系になるので、よろしくお願いしますね?」
「任せておいてよ、ああいうのは得意なの。
ちゃんと戦力になってみせるわ。」
「拝見させていただいた限り、そこは心配してないのでだいじょうぶです。」
と僕は笑った。
問題はこの先、リリーフィア王女がいることで、何かしらの問題にならないかってことなんだよね。王女さまをこんなところで、そうと知ってて働かせるのは、ちょっと怖い。
リリーフィア王女が町を案内して欲しいと言うので、すべての手続きを終えた僕は、アタモの町を案内することにした。
一緒に買い食いをしながら、冒険者ギルドの前を通ると、クエスト帰りのヒルデとオフィーリア嬢たちと出くわした。ジャックさんとグレースさんも血で汚れている。
今日もかなり頑張ったんだろうな。先日のお茶会で、ヒルデはついにBランクに上がったと教えてくれた。オフィーリア嬢たちも、全員がDランクになったらしい。
……早すぎない?
僕もDランクではあるけど、アイテムボックスの海から出した素材を納品したことで、強制的に引き上げたものだからね。
実力でのし上がったオフィーリア嬢たちとは、雲泥の差だ。実際の実力は、スキルをのぞけばFランクもないだろうな。
さすが英雄候補なだけはあるよね。
そこを考えると、ミーニャのBランクは驚異的だね。もうすぐAランクに手が届くとキリカが言っていたし、僕の加護があれば、叔父さんすら抜いちゃうんじゃ?
「あら?アレックス。」
「アレックスさま。ご機嫌麗しゅう。」
「こんにちは、オフィーリア嬢、ヒルデ。
ジャックさんにグレースさんも。」
「従者のわたくしどもにまで、ご挨拶いたみいります。」
ジャックさんとグレースさんが、深々と頭を下げてくる。
「やめてください!僕はもう平民なので!」
僕が慌てて制すると、
「アレックスさま、ついに貴族籍から抜けてしまわれたのですね……。」
と、オフィーリア嬢が悲しそうになる。僕が貴族のままなら、双方の両親さえ許せば、また婚約者に戻る可能性があったからね。
そこは少し申し訳なくなる。
だけどこればっかりはどうしようもない。
「ねえ、紹介してくれないの?」
僕の横のリリーフィア王女を見て、ヒルデがそう聞いてくる。
僕はリリーフィア王女を、うちの新しい従業員のフィアさんだと紹介した。
「そう、従業員なの。またアレックスが新しい女の子連れてる、と思ったけど。」
「またって……。僕はいつも1人だよ?」
「そうかしら?」
ヒルデが面白くなさそうな表情で、ジト目で僕を見つめてくる。
「そうですわね、とてもお美しい方なので、わたくしも気になっておりました。
アレックスさまは常に女性に囲まれていらっしゃる方なので……。」
「オフィーリア嬢まで、そんな風に僕のことを見ていらっしゃったんですか?」
「貴族の集まりでも、わたくしが少し席を外すと、すぐ女性に囲まれていらしたもの。」
「そうでしたっけ?同年代の方たちと、いろいろお話はしていましたけど……。
僕はオフィーリア嬢の印象しか残っていないので、よく覚えていないですね。」
僕がそう言うと、オフィーリア嬢は嬉しそうに頬を染めてうつむいた。
「またお茶会にお誘いいたしますわ。
ぜひいらしてくださいね。」
「はい、ぜひ。」
元婚約者だけど、幼馴染かつ、昔の僕を知っている数少ない人だからね。無下にも出来ないし、昔話は僕も楽しい。楽しみだな。
オフィーリア嬢たちと別れて、自宅に帰った僕を、叔父さんが、客が来てるぞ、とダイニングキッチンにうながした。
お客さん?
待っていたのは王宮からの書状をたずさえた、使いの人だった。王宮からと聞いて、僕は思わずギョッとする。
まさか、カーリー嬢との婚約の打診!?
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
代わりに不動産屋さんが、大家さんに魔法の手紙を飛ばしてくれて、かなり破格の家賃になるようかけあってくれた。
「うん!まーまーね!」
リリーフィア王女が選んだ部屋は、割と新しめで、とても明るく光が差し込んでいた。
2階建てで、ご近所さんは冒険者や、町で働く女性ばかりで、近くに役人の詰め所なんかもあって、若い女性の一人暮らしにオススメとのことだった。
ご近所さんに冒険者がいて、役人の詰め所まで近くにあったら、可愛い女の子が住んでいるからって、そうそう不埒なことを考える人はいないかもね。
キッチンとトイレは共同で、その分1人1人の部屋が広く取られている。清掃の人が来るそうだから、支払いが月に1回ってこと以外は、宿屋とあまり変わらない作りかもね。
生活に必要なものは、おいおい買い揃えていくことにして、必要最低限のものだけ、先に注文して届けてもらうことになっている。
「明日からは普通の勤務体系になるので、よろしくお願いしますね?」
「任せておいてよ、ああいうのは得意なの。
ちゃんと戦力になってみせるわ。」
「拝見させていただいた限り、そこは心配してないのでだいじょうぶです。」
と僕は笑った。
問題はこの先、リリーフィア王女がいることで、何かしらの問題にならないかってことなんだよね。王女さまをこんなところで、そうと知ってて働かせるのは、ちょっと怖い。
リリーフィア王女が町を案内して欲しいと言うので、すべての手続きを終えた僕は、アタモの町を案内することにした。
一緒に買い食いをしながら、冒険者ギルドの前を通ると、クエスト帰りのヒルデとオフィーリア嬢たちと出くわした。ジャックさんとグレースさんも血で汚れている。
今日もかなり頑張ったんだろうな。先日のお茶会で、ヒルデはついにBランクに上がったと教えてくれた。オフィーリア嬢たちも、全員がDランクになったらしい。
……早すぎない?
僕もDランクではあるけど、アイテムボックスの海から出した素材を納品したことで、強制的に引き上げたものだからね。
実力でのし上がったオフィーリア嬢たちとは、雲泥の差だ。実際の実力は、スキルをのぞけばFランクもないだろうな。
さすが英雄候補なだけはあるよね。
そこを考えると、ミーニャのBランクは驚異的だね。もうすぐAランクに手が届くとキリカが言っていたし、僕の加護があれば、叔父さんすら抜いちゃうんじゃ?
「あら?アレックス。」
「アレックスさま。ご機嫌麗しゅう。」
「こんにちは、オフィーリア嬢、ヒルデ。
ジャックさんにグレースさんも。」
「従者のわたくしどもにまで、ご挨拶いたみいります。」
ジャックさんとグレースさんが、深々と頭を下げてくる。
「やめてください!僕はもう平民なので!」
僕が慌てて制すると、
「アレックスさま、ついに貴族籍から抜けてしまわれたのですね……。」
と、オフィーリア嬢が悲しそうになる。僕が貴族のままなら、双方の両親さえ許せば、また婚約者に戻る可能性があったからね。
そこは少し申し訳なくなる。
だけどこればっかりはどうしようもない。
「ねえ、紹介してくれないの?」
僕の横のリリーフィア王女を見て、ヒルデがそう聞いてくる。
僕はリリーフィア王女を、うちの新しい従業員のフィアさんだと紹介した。
「そう、従業員なの。またアレックスが新しい女の子連れてる、と思ったけど。」
「またって……。僕はいつも1人だよ?」
「そうかしら?」
ヒルデが面白くなさそうな表情で、ジト目で僕を見つめてくる。
「そうですわね、とてもお美しい方なので、わたくしも気になっておりました。
アレックスさまは常に女性に囲まれていらっしゃる方なので……。」
「オフィーリア嬢まで、そんな風に僕のことを見ていらっしゃったんですか?」
「貴族の集まりでも、わたくしが少し席を外すと、すぐ女性に囲まれていらしたもの。」
「そうでしたっけ?同年代の方たちと、いろいろお話はしていましたけど……。
僕はオフィーリア嬢の印象しか残っていないので、よく覚えていないですね。」
僕がそう言うと、オフィーリア嬢は嬉しそうに頬を染めてうつむいた。
「またお茶会にお誘いいたしますわ。
ぜひいらしてくださいね。」
「はい、ぜひ。」
元婚約者だけど、幼馴染かつ、昔の僕を知っている数少ない人だからね。無下にも出来ないし、昔話は僕も楽しい。楽しみだな。
オフィーリア嬢たちと別れて、自宅に帰った僕を、叔父さんが、客が来てるぞ、とダイニングキッチンにうながした。
お客さん?
待っていたのは王宮からの書状をたずさえた、使いの人だった。王宮からと聞いて、僕は思わずギョッとする。
まさか、カーリー嬢との婚約の打診!?
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
325
お気に入りに追加
3,021
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。