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第3章

第357話 神の家庭事情

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 リリーフィア王女の教育係は、新しくウエイトレスとして雇ったニーナさんと、ウエイターとして雇ったライナーさんがかわるがわる担当してくれることになった。

 ニーナさんはラナおばさんの次女だ。
 ラナおばさんの息子さんである、ルーベンさんとコナーさんは、魚屋のほうで働いてくれているから、家族総出で世話になるね!とラナおばさんに嬉しそうに言われた。

 魚屋はルーク君とミアちゃんだけでなく、たくさんの孤児院の子たちが交代で手伝いに来てくれているけど、少し高級路線のこの店には、子どもは入れられないからね。

 店もかなり忙しくなって来たし、そりゃ新しく人手は欲しかったとこではあるけど、王女さまを雇いたいなんて思わないからね?

 とりあえず、リリーフィア王女の素性は、当然ながら他の従業員には隠すことにした。
 日頃はフィアって呼ばれてるそうなので、フィアさんと呼ぶことにした。

 万が一フルネームだけでも、知ってる国の人が来てもまずいしね。王族なんてその国の高位貴族でもなきゃ、普通は滅多に会えない存在だから、さすがに気付かれないだろう。

 でも彼女の水色の髪はかなり目立つんだよなあ。魚人なんて、この国で見たことがないからね。おまけにとっても美人だから、かなり目立ってしまう。

 だけど、お客さんたちは、色んな色をした獣人たちに慣れているせいなのか、彼女の美しい顔以外は、あまり気にならないみたいだった。……ラッキーなのかな?

「お姉さん名前なんて言うの?」
「あんたたちに教える名前なんてないわよ。
 でも、そうね。あと1品追加で頼んでくれたら、教えてあげなくもないかもよ?」

 人差し指を唇の前に立てて、ウインクして見せるリリーフィア王女。それを見た男の人たちは大興奮。ガバッと席を立つと、
「注文追加だ!同じものをくれ!」

「俺もだ!」
「俺も!」
「はあーい、ありがとうございまーす!」
 な、慣れてる……。王女さまだよね?

「うちは居酒屋じゃねえぞ。」
「売上げに貢献してるでしょ、うるさい。」
 ザックスさんの文句にツンとソッポを向いて、リリーフィア王女が注文を通す。

 だいじょうぶそう、かな?
 ちゃんとやれるか、もう少し様子を見ておきたいとこだけど、僕も他の店に納品行かなくちゃいけないし、結構忙しいからね。

 僕はザックスさんに店を任せて、自宅に戻って時空の扉を出し、スウォン皇国に向かう為に82番目の扉に入った時だった。

【オニイチャン、面倒くさい人が来てます。
 神格が上がったせいで、私を通さずに連絡出来るようになりましたから、うっとおしかったら接続を切ってくださいね。】

 面倒くさい人?

【アレックス!リリーフィアと関わっておきながら、私に連絡せぬとはどういうことぞ?
 挨拶に来るのが筋であろう!】

 突然甲高い女の子の声が頭に響く。
 え、誰!?

【私はネプレイース。狩りと鍛冶のガレシアと、大地と豊穣のミボルフィアが娘。
 海の神。そしてアレックスの姪だ!!】

 え!?ガルシア兄さまとミボルフィア姉さまの子ども!?
 え?だ、だって、2人は兄弟だよね!?

【オニイチャン、神にはそういうの関係ありませんよ。複数妻をめとろうが、娘や息子と結婚しようが、問題ありません。

 人間が血縁者と結婚しないのは血の問題です。神はその影響を受けませんので。
 レスタト兄さまも、自分の娘何人かとも、結婚してますから。】

 うわあ……。知らなかったよ。

【だからオニイチャンと私だって、結婚出来るんですよ?】

 しないよ!?

【しないんですか?】

 普通しないからね!?
 僕半分は人間だから!

【私を無視するなあっ!】

 あ、ごめんなさい。ネプレイースは、海の神さまなんだよね?

【そうだ!私と同じ海の力を授けられた者が身内にいると知って楽しみにしていたのに、貴様とくれば、挨拶にはこないわ、キリカとばかり楽しそうにしているわ……。

 リリーフィアと親しくなるのであれば、リリーフィアの国の守護神である、私に話を通すのが筋であろう!】

 そ、そうなのかな……?それはいまいちよくわからないけど、家族に挨拶出来なかったのはごめんなさい。でも、僕も初めてネプレイースのことを知ったからさ。

【わ、私を知らなかった……だと?
 私は海の神なんだぞ?
 アレックスは海の力を使うくせに……。
 家族の中で一番近い存在ぞ!?】

 僕は海に関するスキルを人間として与えられているけど、神としては創生神だから、厳密には違うような……?

【そんな……、そんな……。
 うっ……。うっ……。
 うわあああん!!】

 え!?ちょ、ちょっと!?

【子どもの癇癪だから、放っておけばいいですよ。オニイチャンよりだいぶ前に生まれてますけど、見た目が子どもなのに引きずられてか、すーぐ癇癪起こすんです。

 私もワガママな子どもの相手は、いつまでもしていられませんので。
 早く念話を切ってくださいオニイチャン。
 きりないですよ。】

【ウワアアン!!アレックス~!私にも父さまや母さまたちみたいな、体作ってよう!】

 人造人間のこと?
 作ってどうするの?

【アレックスと遊ぶぅ~!!
 神は神としか遊べぬのぞ!
 遊び相手が欲しい!
 ウワアアン!】

 いや、僕もそんなに暇じゃ……!!

【嫌だ嫌だ、遊ぶぅ~!!】

【切りましょう、オニイチャン。】

 ええ……。
 うちの家族って、どうしてみんなこういう感じなんだろう……。

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