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第2章
第351話 静かなる塩戦争
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「奴隷じゃなくしたから返せ……か。こりゃあ、その為にレグリオ王国があらかじめ介入した上での、犯罪歴取り消しだな。ザックスさんの加護を目当てに仕組まれたものだ。」
叔父さんが書状を見ながらそう言った。
「まあ9柱もの神の加護だからな。
どの国でも目の色を変えることだろう。」
「レグリオ王国で、ザックスさんが経営していた店の料理も食べたんですよ?そこにも加護はついている筈だし、ザックスさん自体を手に入れなくても良さそうなのに……。」
「加護はあの店限定だからな。レグリオ王国の加護は。だがザックスさんそのものを手に入れれば、いくらでも加護が手に入ると思っているんだろう。それこそ宮廷料理人にすえたいと考えているのかもな。」
「だけど、リシャーラ王国だって、料理に加護がついているだけで、ザックスさんが加護を得ているわけじゃないのに……。」
「レグリオ王国の店の料理に加護があって、リシャーラ王国の店の料理にも加護がある。
その共通点はザックスさんだ。彼の作る料理に加護があると考えるのは妥当だな。」
「だけど今更こんなことって……。ザックスさんに犯罪者の汚名を着せて、彼の財産も、国1番の料理人の誇りも奪っておいて。」
僕は釈然としなかった。
「なんだ?アレックスは、ザックスさんをレグリオ王国に引き渡すつもりなのか?」
「だって、生まれ故郷に帰れるわけだし。
そうは言っても帰りたいかなって。」
「そうかな。俺なら帰りたくないがな。」
叔父さんはそう言ってくるけど、僕ならそれでも帰って家族に会いたいだろうと思う。
ザックスさんは家族がいないからいいと言ってたけど、友だちだっているだろうし。この先ずっと帰りたくないわけはないよね。
「だがリシャーラ王国も、ザックスさんをレグリオ王国に引き渡すつもりはないようだ。
だからこその、お前に対する神の塩の注文ということだと思う。」
「それが謎なんだけど、ザックスさんを引き渡せと言っているから、僕に神の塩を国に売ってくれって……どういうことなんだろ。」
「俺がアレックスに、神の塩を大々的に売らせないようにしたのはなぜだと思う?」
叔父さんが謎掛けみたいな質問をする。
「貴重だからだよね?商人ギルドにだけ特別に一定数おろしているのは、商人ギルドのレベル引き上げと信用の為に……。」
「そうだ。神の塩は贅沢品だからだ。それを手に入れる為に、他のものを希望したら差し出すくらい、価値のあるものなんだ。」
「神の塩を差し出すことで、代わりにザックスさんを諦めさせようということ?」
「いや。おそらくその逆だ。他の国に神の塩を渡すことで、諦めさせようというんだ。」
「他の国?たとえば?」
「海のある近隣諸国すべて、だな。」
叔父さんの答えの意味がわからない。
「リシャーラ王国にレグリオ王国からの塩しか基本入らないのは、契約があるからでもあるが、レグリオ王国から大量に買い付けているから、レグリオ王国の販売の邪魔をしないように……だな。」
「遠慮があるってこと?」
「元でがかからない貴重な国内製品であるとともに、塩が入らない国へのけん制に使える商品でもあるからだ。」
「たとえば他の国とレグリオ王国から、半分ずつ塩を買っていたら、いざレグリオ王国がリシャーラ王国に塩を入れないとなった場合でも、もう1つの国から入れる数を増やせばいいだけだから、だね?」
「そうだ。うちの国はレグリオ王国に喧嘩を売るつもりはありませんよ、レグリオ王国からリシャーラ王国を奪うつもりはありませんよ、というアピールのためだな。」
だが、と叔父さんは真面目な顔になる。
「リシャーラ王国が神の塩を欲するというのは、神の塩と引き換えに、他国から塩を引き出すつもりだということだ。」
「レグリオ王国を見限るということ?」
「おそらくレグリオ王国側が、塩をリシャーラ王国に売らないという可能性を、考えているということだ。」
「でも、塩戦争後の条約があるのにそういうことをしたら、周辺諸国から白い目で見られるのは、レグリオ王国側なんじゃ?リシャーラ王国が声明文を出したら、終わりだよ?」
「そこでザックスさんだ。奴隷ですらない要人を不当に連れて行った、とすれば、静かなる塩戦争をしかけても不思議じゃない。」
「静かなる塩戦争?ザックスさんはその為の言い訳ということ?」
もともとザックスさんを手に入れるつもりはなくて、狙いはリシャーラ王国そのもの?
「もちろん加護を手に入れるつもりもあるだろうが、それを1番の目的と考えている大臣もたくさんいることだろうな。俺は王宮に神の塩を売るべきだと考える。」
静かなる塩戦争か……。リシャーラ王国に塩を入れないことで、リシャーラ王国もザックスさんも、両方手に入れようと考えているのなら、他の国から塩を手に入れられるところを見せつけないといけないね。
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叔父さんが書状を見ながらそう言った。
「まあ9柱もの神の加護だからな。
どの国でも目の色を変えることだろう。」
「レグリオ王国で、ザックスさんが経営していた店の料理も食べたんですよ?そこにも加護はついている筈だし、ザックスさん自体を手に入れなくても良さそうなのに……。」
「加護はあの店限定だからな。レグリオ王国の加護は。だがザックスさんそのものを手に入れれば、いくらでも加護が手に入ると思っているんだろう。それこそ宮廷料理人にすえたいと考えているのかもな。」
「だけど、リシャーラ王国だって、料理に加護がついているだけで、ザックスさんが加護を得ているわけじゃないのに……。」
「レグリオ王国の店の料理に加護があって、リシャーラ王国の店の料理にも加護がある。
その共通点はザックスさんだ。彼の作る料理に加護があると考えるのは妥当だな。」
「だけど今更こんなことって……。ザックスさんに犯罪者の汚名を着せて、彼の財産も、国1番の料理人の誇りも奪っておいて。」
僕は釈然としなかった。
「なんだ?アレックスは、ザックスさんをレグリオ王国に引き渡すつもりなのか?」
「だって、生まれ故郷に帰れるわけだし。
そうは言っても帰りたいかなって。」
「そうかな。俺なら帰りたくないがな。」
叔父さんはそう言ってくるけど、僕ならそれでも帰って家族に会いたいだろうと思う。
ザックスさんは家族がいないからいいと言ってたけど、友だちだっているだろうし。この先ずっと帰りたくないわけはないよね。
「だがリシャーラ王国も、ザックスさんをレグリオ王国に引き渡すつもりはないようだ。
だからこその、お前に対する神の塩の注文ということだと思う。」
「それが謎なんだけど、ザックスさんを引き渡せと言っているから、僕に神の塩を国に売ってくれって……どういうことなんだろ。」
「俺がアレックスに、神の塩を大々的に売らせないようにしたのはなぜだと思う?」
叔父さんが謎掛けみたいな質問をする。
「貴重だからだよね?商人ギルドにだけ特別に一定数おろしているのは、商人ギルドのレベル引き上げと信用の為に……。」
「そうだ。神の塩は贅沢品だからだ。それを手に入れる為に、他のものを希望したら差し出すくらい、価値のあるものなんだ。」
「神の塩を差し出すことで、代わりにザックスさんを諦めさせようということ?」
「いや。おそらくその逆だ。他の国に神の塩を渡すことで、諦めさせようというんだ。」
「他の国?たとえば?」
「海のある近隣諸国すべて、だな。」
叔父さんの答えの意味がわからない。
「リシャーラ王国にレグリオ王国からの塩しか基本入らないのは、契約があるからでもあるが、レグリオ王国から大量に買い付けているから、レグリオ王国の販売の邪魔をしないように……だな。」
「遠慮があるってこと?」
「元でがかからない貴重な国内製品であるとともに、塩が入らない国へのけん制に使える商品でもあるからだ。」
「たとえば他の国とレグリオ王国から、半分ずつ塩を買っていたら、いざレグリオ王国がリシャーラ王国に塩を入れないとなった場合でも、もう1つの国から入れる数を増やせばいいだけだから、だね?」
「そうだ。うちの国はレグリオ王国に喧嘩を売るつもりはありませんよ、レグリオ王国からリシャーラ王国を奪うつもりはありませんよ、というアピールのためだな。」
だが、と叔父さんは真面目な顔になる。
「リシャーラ王国が神の塩を欲するというのは、神の塩と引き換えに、他国から塩を引き出すつもりだということだ。」
「レグリオ王国を見限るということ?」
「おそらくレグリオ王国側が、塩をリシャーラ王国に売らないという可能性を、考えているということだ。」
「でも、塩戦争後の条約があるのにそういうことをしたら、周辺諸国から白い目で見られるのは、レグリオ王国側なんじゃ?リシャーラ王国が声明文を出したら、終わりだよ?」
「そこでザックスさんだ。奴隷ですらない要人を不当に連れて行った、とすれば、静かなる塩戦争をしかけても不思議じゃない。」
「静かなる塩戦争?ザックスさんはその為の言い訳ということ?」
もともとザックスさんを手に入れるつもりはなくて、狙いはリシャーラ王国そのもの?
「もちろん加護を手に入れるつもりもあるだろうが、それを1番の目的と考えている大臣もたくさんいることだろうな。俺は王宮に神の塩を売るべきだと考える。」
静かなる塩戦争か……。リシャーラ王国に塩を入れないことで、リシャーラ王国もザックスさんも、両方手に入れようと考えているのなら、他の国から塩を手に入れられるところを見せつけないといけないね。
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