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第2章
第350話 奴隷からの開放
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「えっ、奴隷の取り消し……ですか?」
奴隷商人から呼び出されて首を傾げながら店に行くと、ザックスさんが奴隷でなくなったという事実を、僕は突然知らされた。
一緒に呼び出されたザックスさんも、混乱したように僕の顔を見てくる。僕はザックスさんと顔を見合わせた。
「はい。ザックス・ヴァーレンさんは犯罪奴隷でしたが、犯罪歴がこのたび間違いであったと正式に認められました。」
「犯罪奴隷でない……?今更……。」
苦しめられた期間が長すぎて、ザックスはんはギュッと拳を握りしめてうつむいた。
「犯罪者でないのであれば、そもそも奴隷ではない、ということになりました。」
なんか釈然としないけど……。
「その為国に支払った買い取り金額は、我々を通じて返却され、奴隷商人からザックス・ヴァーレンさんに全額返金となります。」
そう言って、奴隷商人はお金の入った布袋をザックスさんに差し出した。僕がザックスさんを購入した金額は小白金貨2枚だったけど、奴隷商人が国からザックスさんを購入した金額が小白金貨1枚だったので、ザックスさんには小白金貨1枚が手渡された。
なるほど……原価が半分なんだね。
いや、ザックスさんだからなのかな?
見た目でお高く売れそうということで。
「それとこちらは買い主さまへの、国からの補償金となります。おおさめください。
間違って奴隷を購入し、損失された金額の補填ということになります。」
そう言って、僕にも小白金貨2枚が差し戻されたよ。これって、逆に儲かっちゃったってことかな?
ザックスさんも大金を手渡されたしね。
彼が奪われた、国1番の料理人の称号も、彼の作り上げた店も、奴隷として過ごした年月も、その金額に見合うものとは僕には思えなかったけれど、それでもかなりの大金だ。
ラナおばさんいわく、平民は月に中金貨1枚稼げればいいほうだと言うから、その100倍だと考えれば、多少は彼の失った年月と財産を埋めるものになるかも知れないね。
「今までのことを考えれば、良かったとは言えないかも知れませんけど、これで晴れてザックスさんは自由の身です。」
ザックスさんがハッと顔を上げる。
「このまま僕の店に勤めてもいいですし、お国に帰られてまた店をやることだって出来ます。ザックスさんはどうされたいですか?」
「俺はもう、あんな国には帰りたくありませんよ。この国は食べたことのない料理を忌避しない。好奇心旺盛で、俺の料理を嬉しそうに食べてくれる人ばかりだ。」
まあ、そうかもね。僕も生魚と聞いてだいじょうぶかな?と一瞬思ったけど、ザックスさんに自信たっぷりに出されると、あ、多分だいじょうぶなんだな、って思ったもの。
そもそも生魚を食べる習慣がないのは、リシャーラ王国も同じだけど、魚自体がそんなに入ってこないから、食べ方が決まっているものだっていう認識がないんだよね。
肉と同じで焼いて食べることが多いから、生で食べられないものとふんわり思っていたけど、食べられるんですよ、と言われれば、ああそうなんですね、って思うというか。
そこらへんはおおらかな国民性かもねえ、リシャーラ王国って。
新しもの好き、新技術大好き、なところがあるから、魔道具工房もたくさんあるしね。
まあ、鍛冶師大国のナムチャベト王国ほどではないけど、他の国に比べたら、平民は変化を好む傾向にあると感じるかな。貴族は他の国同様、伝統を好む性質だけど。
「それに俺を救い出してくれたあんたに、恩もまだ返せていない。あんたが嫌だと言うまで、俺をあんたの店で働かせてくれ。」
ザックスさんが胸に手をあてて言う。
「はい、もちろんです。すぐにでも国に帰りたいと言われたら、どうしようかと思いました。でも、長年慣れ親しんだ土地でしょうし、無理も言えなくて……。」
でも、無理に引き止めることも出来ない。ザックスさんはもう自由なんだから。故郷に帰りたいなんて、当然の人としての感情だよ。……僕だってほんとは帰りたい。
「家族もいないし、犯罪奴隷にされたことで生まれ故郷に愛着もない。それに俺はあんたのそばで働きたい。この国に骨を埋めるつもりだ。これからもよろしく頼むよ。」
「はい、こちらそ。」
良かった。ああは言ったけど、店も軌道に乗りだしたところだし、実際いなくなられたら困っちゃうからね。
けど、恩かあ……。僕はスキルが必要でザックスさんを買っただけだから、そこまで感謝されると、ちょっとこそばゆいな。早くザックスさんが店を持てるよう頑張ろう。
今までと何も変わらない。そう思っていたのに、突然僕のところに王宮の使者が尋ねてきたんだ。レグリオ王国が、ザックスさんを返せと言ってきているという書状とともに。
────────────────────
ちなみに犯罪奴隷は、国にもよりますが、基本国、または領主が売りに出します。
購入した人間がいた場合、それを被害の補填に当てたりもします。
ザックスさんは貴族に対する犯罪だった為、国の売値が高かったのですね。
購入する人が誰もいなかった場合、鉱山などでその金額相当分まで無償で仕事をさせられます。その間にかかる衣食住は、当然働いた分から差っ引かれます。
元冒険者などの動ける人間、見た目がいい人間などは、奴隷商人に買われて売りに出される為、鉱山よりもいいところに行ける場合もあれば、より酷い場所に行かされることもあります。
ザックスさんの奴隷商人の売り出し金額が高かったのは、完全に貴族ウケする見た目の為ですね。顔が良かったのももちろんですが、解体職人もやっているので、ザックスさんはガタイがいいのです。
主人公が奴隷商人に支払った金額はそのまま奴隷商人の懐へ。
奴隷商人が国に支払った購入代金が、返却されザックスさんへ。
それとは別に国から主人公に、奴隷商人に支払った額と同等の金額が支払われ、損をしたのはレグリオ王国だけという図式です。
奴隷商人から呼び出されて首を傾げながら店に行くと、ザックスさんが奴隷でなくなったという事実を、僕は突然知らされた。
一緒に呼び出されたザックスさんも、混乱したように僕の顔を見てくる。僕はザックスさんと顔を見合わせた。
「はい。ザックス・ヴァーレンさんは犯罪奴隷でしたが、犯罪歴がこのたび間違いであったと正式に認められました。」
「犯罪奴隷でない……?今更……。」
苦しめられた期間が長すぎて、ザックスはんはギュッと拳を握りしめてうつむいた。
「犯罪者でないのであれば、そもそも奴隷ではない、ということになりました。」
なんか釈然としないけど……。
「その為国に支払った買い取り金額は、我々を通じて返却され、奴隷商人からザックス・ヴァーレンさんに全額返金となります。」
そう言って、奴隷商人はお金の入った布袋をザックスさんに差し出した。僕がザックスさんを購入した金額は小白金貨2枚だったけど、奴隷商人が国からザックスさんを購入した金額が小白金貨1枚だったので、ザックスさんには小白金貨1枚が手渡された。
なるほど……原価が半分なんだね。
いや、ザックスさんだからなのかな?
見た目でお高く売れそうということで。
「それとこちらは買い主さまへの、国からの補償金となります。おおさめください。
間違って奴隷を購入し、損失された金額の補填ということになります。」
そう言って、僕にも小白金貨2枚が差し戻されたよ。これって、逆に儲かっちゃったってことかな?
ザックスさんも大金を手渡されたしね。
彼が奪われた、国1番の料理人の称号も、彼の作り上げた店も、奴隷として過ごした年月も、その金額に見合うものとは僕には思えなかったけれど、それでもかなりの大金だ。
ラナおばさんいわく、平民は月に中金貨1枚稼げればいいほうだと言うから、その100倍だと考えれば、多少は彼の失った年月と財産を埋めるものになるかも知れないね。
「今までのことを考えれば、良かったとは言えないかも知れませんけど、これで晴れてザックスさんは自由の身です。」
ザックスさんがハッと顔を上げる。
「このまま僕の店に勤めてもいいですし、お国に帰られてまた店をやることだって出来ます。ザックスさんはどうされたいですか?」
「俺はもう、あんな国には帰りたくありませんよ。この国は食べたことのない料理を忌避しない。好奇心旺盛で、俺の料理を嬉しそうに食べてくれる人ばかりだ。」
まあ、そうかもね。僕も生魚と聞いてだいじょうぶかな?と一瞬思ったけど、ザックスさんに自信たっぷりに出されると、あ、多分だいじょうぶなんだな、って思ったもの。
そもそも生魚を食べる習慣がないのは、リシャーラ王国も同じだけど、魚自体がそんなに入ってこないから、食べ方が決まっているものだっていう認識がないんだよね。
肉と同じで焼いて食べることが多いから、生で食べられないものとふんわり思っていたけど、食べられるんですよ、と言われれば、ああそうなんですね、って思うというか。
そこらへんはおおらかな国民性かもねえ、リシャーラ王国って。
新しもの好き、新技術大好き、なところがあるから、魔道具工房もたくさんあるしね。
まあ、鍛冶師大国のナムチャベト王国ほどではないけど、他の国に比べたら、平民は変化を好む傾向にあると感じるかな。貴族は他の国同様、伝統を好む性質だけど。
「それに俺を救い出してくれたあんたに、恩もまだ返せていない。あんたが嫌だと言うまで、俺をあんたの店で働かせてくれ。」
ザックスさんが胸に手をあてて言う。
「はい、もちろんです。すぐにでも国に帰りたいと言われたら、どうしようかと思いました。でも、長年慣れ親しんだ土地でしょうし、無理も言えなくて……。」
でも、無理に引き止めることも出来ない。ザックスさんはもう自由なんだから。故郷に帰りたいなんて、当然の人としての感情だよ。……僕だってほんとは帰りたい。
「家族もいないし、犯罪奴隷にされたことで生まれ故郷に愛着もない。それに俺はあんたのそばで働きたい。この国に骨を埋めるつもりだ。これからもよろしく頼むよ。」
「はい、こちらそ。」
良かった。ああは言ったけど、店も軌道に乗りだしたところだし、実際いなくなられたら困っちゃうからね。
けど、恩かあ……。僕はスキルが必要でザックスさんを買っただけだから、そこまで感謝されると、ちょっとこそばゆいな。早くザックスさんが店を持てるよう頑張ろう。
今までと何も変わらない。そう思っていたのに、突然僕のところに王宮の使者が尋ねてきたんだ。レグリオ王国が、ザックスさんを返せと言ってきているという書状とともに。
────────────────────
ちなみに犯罪奴隷は、国にもよりますが、基本国、または領主が売りに出します。
購入した人間がいた場合、それを被害の補填に当てたりもします。
ザックスさんは貴族に対する犯罪だった為、国の売値が高かったのですね。
購入する人が誰もいなかった場合、鉱山などでその金額相当分まで無償で仕事をさせられます。その間にかかる衣食住は、当然働いた分から差っ引かれます。
元冒険者などの動ける人間、見た目がいい人間などは、奴隷商人に買われて売りに出される為、鉱山よりもいいところに行ける場合もあれば、より酷い場所に行かされることもあります。
ザックスさんの奴隷商人の売り出し金額が高かったのは、完全に貴族ウケする見た目の為ですね。顔が良かったのももちろんですが、解体職人もやっているので、ザックスさんはガタイがいいのです。
主人公が奴隷商人に支払った金額はそのまま奴隷商人の懐へ。
奴隷商人が国に支払った購入代金が、返却されザックスさんへ。
それとは別に国から主人公に、奴隷商人に支払った額と同等の金額が支払われ、損をしたのはレグリオ王国だけという図式です。
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