314 / 504
第2章
第314話 パブリミ商会、商会頭の娘
しおりを挟む
「レンジア、どうにか出来るの?」
「ご命令いただければ。」
レンジアの話し方がいつもと違う。これが王家の影としての、任務の時の顔なんだ。
「わかった。レンジア。
あの女の人を救って。」
「御意。」
そう言った途端、レンジアがフッと姿を消したかと思うと、男の人の首に、デビルスネークに刺さっていたのと同じ、暗器がプスッとささり、男の人がグラリと倒れる。
バシャーン!
男の人が後ろの噴水に仰向けに倒れたと同時に、レンジアがまた僕の横に姿を現した。
「任務完了。」
「やった!そいつを捕まえろ!」
「オーナー!ご無事ですか!」
「ええ……。」
警備兵が無事女の人を保護した。
「凄いや、レンジア!」
「大したことない。」
レンジアがうっすら頬を染めている。
噴水に仰向けに浮かんでいる男の人は、大きなイビキをかいて眠っていた。暗器の先に強い眠り薬が塗ってあったんだね。
叔父さんは噴水の中に入って行って、男の人の首からレンジアが投げた暗器を抜いて、それをマジマジと見つめている。
襲われた時にデビルスネークに刺さった暗器を叔父さんも見てるから、あの時投げたのがレンジアだって、気が付いたんだろうな。
「──まずいの。アレックス、今のでそなたの叔父は認識阻害魔法から外れたぞよ。
あの武器、なにか特殊な仕様なのかの?」
ミルドレッドさんがコッソリと僕に告げてくる。え!?そうなの!?僕はレンジアを振り返った。レンジアがコクッとうなずく。
「対魔法武器。あれを持っていると魔法にかかりにくい。魔法を跳ね返すことも出来る。
状態異常に耐える。」
と言った。
認識阻害魔法は、範囲魔法かつ、対象者を指定する魔法ってことなんだね。僕が同じ武器を持って戦いつつ、認識阻害魔法をかけてもらうのは不可能ってことだ。
レンジアがこれを使っているのは、王家の影が殆ど持っていると噂される、隠密のスキルの持ち主だからなんだろう。
スキルは魔法と違って、魔法禁止の魔道具の対象にはならないから、魔法禁止の魔道具のある王宮なんかにも、潜入し放題なんだ。
「あんたが助けてくれたのか!凄い腕だな!
よくやってくれたよ!」
「いや、俺は……。」
噴水から出た叔父さんを人々が囲む。
「旅の冒険者か?見慣れない顔だな。」
「謙遜するなって!助かったよ!」
暗器を手にした叔父さんを見て、町の人たちは口々に叔父さんを褒めそやした。
「あの……。助けていただいて本当にありがとうございました。
何かお礼が出来ればよいのですが。」
人質になっていた女の人が、警備兵に支えられながら、叔父さんにそう言ってくる。怖い思いをしたばかりなのに、気丈な人だな。
「それより早く店に戻らなくてもよいのですか?警備兵がここにいるということは、あなたの店は危険なのでは?
この隙に泥棒でも出たらことだ。」
確かに。鍵もかけないで宝石店がもぬけの殻なんだものね。警備兵もここにいるし、その隙に盗ろうと思ったら盗り放題だよ。
女の人は叔父さんにそう言われて、あっ、という顔になる。警備兵に、私はもうだいじょうぶなので、先に戻って店を守って下さいと告げると、再び叔父さんに向き直った。
「改めまして、シャイラ・パブリミと申します。ナムチャベト王国パブリミ商会、商会頭の娘です。商会後継者たる、商会頭の娘を救っていただいたのです。商会をあげて恩に報いませんと、パブリミ商会の名折れです。」
僕と叔父さんは顔を見合わせる。
キリカ!ここって!?
【ナムチャベト王国で、間違いないですね。
彼女の言っていることは、すべて本当のことです。ようやく当たりが来ましたね。】
やった!ナムチャベト王国だ!
船を探さなくて良くなったね!
「それでは、もしもいつかお力が必要になった時にお貸しいただけますか?
俺はセオドア・ラウマン。リシャーラ王国のSランク冒険者をしている者です。」
「まあ、はるばるリシャーラ王国から。
あなたさまが偶然いらしていただけて、本当に助かりましたわ。」
「オーナー、いくら助けていただけたからって、素性の分からない方を簡単に信じるのはいかがなものかと……。あの元恋人の時だってそうだったじゃないですか。」
別の女性がシャイラ嬢に、心配そうにそう告げる。商会頭の娘で次期後継者なんていう狙われやすい立場なのに、あんまり人を疑わない人なのかな?確かにその心配もわかる。
「俺は以前にナムチャベト王国王太子、スレイン・アシット・エイシャオラ殿下の護衛をしたことがあり、俺の素性はそちらで保証していただけるかと。」
「おお、スレインさまの護衛を……。」
「こりゃ、本物の英雄だ。」
周囲の人が叔父さんの経歴を知ってまたザワザワしだす。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「ご命令いただければ。」
レンジアの話し方がいつもと違う。これが王家の影としての、任務の時の顔なんだ。
「わかった。レンジア。
あの女の人を救って。」
「御意。」
そう言った途端、レンジアがフッと姿を消したかと思うと、男の人の首に、デビルスネークに刺さっていたのと同じ、暗器がプスッとささり、男の人がグラリと倒れる。
バシャーン!
男の人が後ろの噴水に仰向けに倒れたと同時に、レンジアがまた僕の横に姿を現した。
「任務完了。」
「やった!そいつを捕まえろ!」
「オーナー!ご無事ですか!」
「ええ……。」
警備兵が無事女の人を保護した。
「凄いや、レンジア!」
「大したことない。」
レンジアがうっすら頬を染めている。
噴水に仰向けに浮かんでいる男の人は、大きなイビキをかいて眠っていた。暗器の先に強い眠り薬が塗ってあったんだね。
叔父さんは噴水の中に入って行って、男の人の首からレンジアが投げた暗器を抜いて、それをマジマジと見つめている。
襲われた時にデビルスネークに刺さった暗器を叔父さんも見てるから、あの時投げたのがレンジアだって、気が付いたんだろうな。
「──まずいの。アレックス、今のでそなたの叔父は認識阻害魔法から外れたぞよ。
あの武器、なにか特殊な仕様なのかの?」
ミルドレッドさんがコッソリと僕に告げてくる。え!?そうなの!?僕はレンジアを振り返った。レンジアがコクッとうなずく。
「対魔法武器。あれを持っていると魔法にかかりにくい。魔法を跳ね返すことも出来る。
状態異常に耐える。」
と言った。
認識阻害魔法は、範囲魔法かつ、対象者を指定する魔法ってことなんだね。僕が同じ武器を持って戦いつつ、認識阻害魔法をかけてもらうのは不可能ってことだ。
レンジアがこれを使っているのは、王家の影が殆ど持っていると噂される、隠密のスキルの持ち主だからなんだろう。
スキルは魔法と違って、魔法禁止の魔道具の対象にはならないから、魔法禁止の魔道具のある王宮なんかにも、潜入し放題なんだ。
「あんたが助けてくれたのか!凄い腕だな!
よくやってくれたよ!」
「いや、俺は……。」
噴水から出た叔父さんを人々が囲む。
「旅の冒険者か?見慣れない顔だな。」
「謙遜するなって!助かったよ!」
暗器を手にした叔父さんを見て、町の人たちは口々に叔父さんを褒めそやした。
「あの……。助けていただいて本当にありがとうございました。
何かお礼が出来ればよいのですが。」
人質になっていた女の人が、警備兵に支えられながら、叔父さんにそう言ってくる。怖い思いをしたばかりなのに、気丈な人だな。
「それより早く店に戻らなくてもよいのですか?警備兵がここにいるということは、あなたの店は危険なのでは?
この隙に泥棒でも出たらことだ。」
確かに。鍵もかけないで宝石店がもぬけの殻なんだものね。警備兵もここにいるし、その隙に盗ろうと思ったら盗り放題だよ。
女の人は叔父さんにそう言われて、あっ、という顔になる。警備兵に、私はもうだいじょうぶなので、先に戻って店を守って下さいと告げると、再び叔父さんに向き直った。
「改めまして、シャイラ・パブリミと申します。ナムチャベト王国パブリミ商会、商会頭の娘です。商会後継者たる、商会頭の娘を救っていただいたのです。商会をあげて恩に報いませんと、パブリミ商会の名折れです。」
僕と叔父さんは顔を見合わせる。
キリカ!ここって!?
【ナムチャベト王国で、間違いないですね。
彼女の言っていることは、すべて本当のことです。ようやく当たりが来ましたね。】
やった!ナムチャベト王国だ!
船を探さなくて良くなったね!
「それでは、もしもいつかお力が必要になった時にお貸しいただけますか?
俺はセオドア・ラウマン。リシャーラ王国のSランク冒険者をしている者です。」
「まあ、はるばるリシャーラ王国から。
あなたさまが偶然いらしていただけて、本当に助かりましたわ。」
「オーナー、いくら助けていただけたからって、素性の分からない方を簡単に信じるのはいかがなものかと……。あの元恋人の時だってそうだったじゃないですか。」
別の女性がシャイラ嬢に、心配そうにそう告げる。商会頭の娘で次期後継者なんていう狙われやすい立場なのに、あんまり人を疑わない人なのかな?確かにその心配もわかる。
「俺は以前にナムチャベト王国王太子、スレイン・アシット・エイシャオラ殿下の護衛をしたことがあり、俺の素性はそちらで保証していただけるかと。」
「おお、スレインさまの護衛を……。」
「こりゃ、本物の英雄だ。」
周囲の人が叔父さんの経歴を知ってまたザワザワしだす。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
461
お気に入りに追加
2,084
あなたにおすすめの小説
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる