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第2章

第312話 アイテムボックスの調査・その3

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 紙はまだまだ貴重だし、本なんて平民が持ってることは少ないんだよね。
 この部屋の持ち主は貴族か、平民でもかなり格上の薬師なのかも知れないなあ。

 さっきまで誰かがいたかのように、テーブルの上に開きかけの本がある。急がないと、すぐに戻って来ちゃうかも。
 キリカ、ここはどこ?

【アタラヤ王国、コモノ研究所内です。】

「アタラヤ王国、コモノ研究所内だって。
 叔父さん知ってる?」
 一度88番目の扉の中に戻って尋ねる。

「アタラヤ王国は聞いたことがないが、コモノは聞いたことがあるな。質の高いポーションは、だいたいコモノ製なんだ。冒険者の間では有名なのさ。あそこで作ってたのか。」

 叔父さんも詳しくは知らないんだね。
 キリカ!アタラヤ王国はどんな国なの?

【薬師が多く産まれる土地柄で、薬の研究が盛んです。コモノ研究所はアタラヤ王国の代表的な研究所ですが、それ以外にもたくさん研究所が存在します。

 薬を専門に作る工房も多数存在する、薬師王国といったところですね。精霊信仰のお国柄で、妖精がたくさんいることにより、祝福された良質の植物が育ちやすいです。

 周囲を山々に囲まれた高山地帯ですが、今まで飢饉とは無縁で、いっさい食べ物には困っていません。】

「山に囲まれた土地みたい。
 ここも違うね。
 次に行こう、叔父さん。」

 けど、山に囲まれてるなら、海の魚は珍しい筈だよね。優先的に魚を売る場所の候補の1つとして、ここは覚えとこ。

 89番・大工(木材多め)。
 お次は大工のアイテムボックスだ。ここは木材ばかりで、あまりたいしたものが入ってなかったから、正直期待が薄いんだよね。

 外に出ると、枝が切り落とされたたくさんの木が並んでいる山の中だった。
「ここは、建築に使う木材ばかり育ててるみたいだな。伐採場が近くに見える。」

 叔父さんが遠くを見渡してそう言った。
「大工道具みたいのがアイテムボックスにあったんだけど、木材の切り出し場から木を選ぶタイプの大工さんてことかな?」

「そうかも知れんな。」
 休憩してるのか、木を四角く細長く切り出す場所の近くに集まって、お茶を飲んでいる男の人たちが見えた。どの人も筋肉隆々だ。

 休憩場所のそばの切り出し場から、ちょうど木材を切り出している人がいる。
 遠目だと持ち物が小さく見えて分かりにくいけど、あの道具はどうやら斧のようだ。

 キリカ!ここはどこ?

【マルテン公国です。木材の輸出に頼った小国で、周囲に小国が集まった地域です。】

「マルテン公国だって。周囲に小国が集まった地域だって言うから、ここも違うね。
 なかなか当たらないなあ。」

「ナムチャベト王国に当たらずとも、せめて直通便が出ている、もう少し近い、海のある国に出られたらいいんだがな。」

「そうなんだよね……。」
 けど、やっぱり僕が以前思ったみたいに、それぞれ違う国につながってるみたいだ。

 僕のお祖父さまと、リシャーラ王国の先代王のアイテムボックスは、同じ国につながってるけど、それ以外は今のところ全部違う。

 だから探していけばそのうち、ナムチャベト王国にも当たる筈なんだよね。
 90番目・商人(商品大量)。
 というわけで、次は90番目の扉だ。

 扉を開けた瞬間、たくさんのショーケースが並んだ、まるで王都の家具屋さんのような豪華な店の中に出た。

 お客さんもたくさんいて、認識阻害魔法のおかげで、みんなこちらの様子に気が付いてないけど、思わずドキッとする。

 というか、王都の家具屋さんよりも、敷地面積がかなり広いかも?夏なのに毛皮を大量に扱ってるみたいだ。
 ファッションの先取りってやつかな?

 キリカ!ここはどこ?

【ルカフィア王国、王都、マルグリット商会店内です。マルグリット商会はルカフィア王国の中でも、1、2を争う大商会であり、卸商人も営んでいることから、良質の商品を格安で販売している店舗を持っています。】

 一度90番目の扉を閉める。
「ルカフィア王国のマルグリット商会の店内だって。ルカフィア王国は僕も知ってるよ。
 商業大国で有名だよね。」

「そうだな。うちの国とも鉱石の輸出や毛皮の輸入で取引がある。1番の取引先であるルカンタ王国の経済に影響を受ける国ではあるが、大国と言って差し支えないだろうな。」

「ここはどう?」
「海に面している国ではあるし、直通便は確かある筈だが、ルカンタ王国から行くのとそう変わらないな。むしろ遠い。」

「そっか……。じゃあ次だね。」
 91番目・貴族(装飾品など高級品多数)。というわけで次は91番目。

 初めて91番目のアイテムボックスに入った叔父さんが目の色を変えた。
「これは……、すべてルビリオの家具か!?
 物凄い数だ……。」

 そう言えばルビリオの弟子の家具屋さんに行った時に、いつか叔父さんに見せようと思って忘れてたよ。叔父さん好きなんだよね。
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