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第2章

第311話 アイテムボックスの調査・その2

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「認識阻害がかけられておるからの、安心して行動するがよいぞ!声さえださなければ、気付かれることもそうあるまい。」
 と、突然ミルドレッドさんがドヤる。

 シーッと、僕は唇に指を立ててミルドレッドさんに静かにして貰った。
 声出したら意味がないのに、そんな大きな声だされたら、気付かれちゃうでしょ!

「すまぬ……。」
 とミルドレッドさんが小声でそう言って、シュンとうなだれた。

 キリカ!ここはどこ?

【シンセイ国─

 キリカがそう言った瞬間だった。

「誰だ!?」
 扉を開けて飛び込んで来た人物はリュミエール・ラウズブラス男爵。魔塔の賢者だ!
 王宮に遊びに行った時に見たことがある!

「お前は……?」
 どこかで見たものを思い出そうとするような表情で、僕と目があった。というか、なんでこの人僕らが見えてるの!?

 次の瞬間、僕らはレンジアの手によって、時空の扉の85番目の中にいた。扉もきっちり閉められていて、もう向こう側では扉そのものが消えている筈だ。

「レ、レンジア、ありがとう助かったよ。
 だけどどうして気付かれたんだろう?」
 声が聞こえたんだとしても、認識阻害魔法で僕らの姿は視認出来ない筈なのに。

「おそらくあそこは魔塔の中なのだろう。彼が魔塔の賢者で間違いないのであれば。」
 と叔父さんが言う。

「認識阻害魔法は、スキルの隠密と違って、魔法禁止の魔道具のあるところでは使う事が出来ないものだ。魔塔の中は王宮同様、魔法禁止の魔道具があると聞いたことがある。」

「それで認識阻害魔法がきかなかったのか。
 ふう、肝が冷えたよ。」
 キリカの言う通り、レンジアについて来てもらって正解だったな。

 キリカ!あの場所はどこ?

【シンセイ国、魔塔34階層の中です。
 中央聖教会と魔塔のある国ですね。】

 やっぱり魔塔の中だったのか。
 アイテムボックスの中にあった、あの不思議な道具の数々は、魔塔の賢者が研究したものだったってことだね。

 箱の扉を開けるたびに、収納されているものの種類が変わる、不思議な魔道具みたいのが入っていたんだよね。

 魔塔の中は、父さまがたまに集まりに呼ばれる、強い魔法使いだけが入れるとされる場所なんだ。許可がないと入れないから、どんな場所なのかは叔父さんも知らないと思う。

 シンセイ国は、アジャリベさまを敬う宗教の、もっとも権威ある中央聖教会がある国でもあるね。ここに“選ばれしもの”や、偉い祭司さまたちが集まって暮らしているんだ。

「シンセイ国だったみたい、叔父さん。」
「シンセイ国は確かに、どの国にも向かうことの出来る船便があるが、旅人が気軽に出入りすることが出来ないから無意味だな。」

「そうだね、次に行ってみよう。」

 86番目・鍛冶職人(武器防具多数)。
 ということで次は86番目の扉へ。
「な、なにここ……。」

 薄暗くて空が見えない。光るコケのようなものが、国全体を照らして明るくしている。
 巨大な何本もの柱が天を支えるように、はるか先まで伸びているつくりだった。

 見上げれば、まるで天井から太い縄のような、一見糸にも見えるような何かで吊られているかのような、大きな建物がいくつか見える。うわあ……。不思議な光景だなあ。

 キリカ!ここはどこ?

【ドワーフの国、シュルベスタン王国のようですね。シュルベスタン王国は地下帝国になっており、光がささない国です。】

「ドワーフの国、シュルベスタン王国らしいよ。ここはどう?叔父さん。」
「シュルベスタンか!懐かしいな。1度俺の武器をつくりに立ち寄ったことがあるが。」

 こんなだったかな?と叔父さんは首をかしげていた。以前は魔道昇降で直接地下に連れて来られたらしいけど、その時はもっと背の低いアーケードに囲まれた場所だったそう。

 ドワーフの鍛冶職人のアイテムボックスだったんだ!どうりで僕でもわかる、質の良い武器や防具がたくさんあったわけだね!

「シュルベスタン王国は、陸地に囲まれた場所にあるから、ここも変わらないな。」
「わかった、次に行こう。」

 87番目・現時点で開かない。

 88番目・薬師(ポーション類多数)。
 ということで、次は88番目の扉だ。
 さっきの錬金術師の部屋と同様に、薬の素材やら調合に使う道具やらが多数ある。

 違う点は、この部屋はすごく明るいっていうことだ。清潔感があって、ジメジメしていた錬金術師の部屋とは空気がだいぶ違う。大きな窓が中庭に面しているせいかな。

 テーブルや作業台は使い込まれた感じに汚れてはいたけど、きちんと整理整頓されていた。資料が詰まった本棚がいくつもあって、貴重な研究書のようなものも見受けられる。
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