上 下
255 / 486
第2章

第310話 アイテムボックスの調査・その1

しおりを挟む
「あの娘っ子か。人間にしてはまあまあやりよる。わらわには及ばんがの!」
 レンジアと会ったことのあるミルドレッドさんは、彼女の実力がわかってるみたい。

「うん……。その……。僕の元婚約者であるオフィーリア嬢についてた王家の影の1人を、オフィーリア嬢が僕につけたんだ。
 ──レンジア!出てきて!!」

 呼ばれた途端、スッと目の前に現れて、僕にかしずいてくるレンジア。
「お呼びですか、アレックスさま。」

「彼女がレンジア。オフィーリア嬢がつけてくれた、僕の護衛だよ。ずっと叔父さんにも内緒で僕を守っていてくれて……。そして彼女自身、英雄候補者の1人なんだ。」

「俺に内緒で護衛?まさか、お前が我が家に来てからたびたび人の気配が一瞬したと思ったら消えていたのは、そういうわけか?
 ……こんな幼い娘が俺の目を欺くとは。」

 さすがは王家の影か、と叔父さんが呟く。
 なんだかんだ王家の影としての実力だけはあるんだよね、レンジアは。他がいろいろとアレではあるんだけど……。

「英雄候補者かつ、王家の影か。
 確かに戦力ではある。
 キリカは彼女を連れて行けと?
 こちらの事情は知っているんだな?」

「うん。そうしたほうがいいって。」
「わかった。家には護符を貼っておこう。
 レンジアさん、あんたもついて来てくれ。
 これから時空の扉の調査に向かう。」

「お願い出来る?レンジア。」
「アレックスさまのお願い……。
 わかった。役に立つ。」
 レンジアがこくっとうなずいた。

「ルール改定!レンジアとミルドレッドさんを、時空の海に出入り可能とする!」
 これでレンジアもミルドレッドさんも、時空の海の入口から入ることが出来るね。

 それぞれのアイテムボックスに通じる時空の扉は、制限をかけていないから、それこそ誰でも出入り出来るけど、おおもとの時空の海の鉄の扉は、外から入れない仕様だから。

『キリカは今回お留守番ね。出た先が危ないかも知れないし。叔父さんにミルドレッドさん、それにレンジアもいるから、これ以上人数を増やすとちょっと多過ぎるし。』

【そうですね。アイテムボックスは狭い部屋も多いですし、逃げなくてはいけない場面で人数が多いのはあまりよくないと思います。
 私はここに残りますね。】

 そんなわけでキリカは今回家に残ることになった。1人で残すことになるけど、追手は僕の居場所しか探せないわけだし、近くにいないほうが安全だろうと叔父さんも同意。

 時空の海の鉄の扉を出すと、叔父さん、続いて僕、ミルドレッドさん、レンジアの順番で中に入ったんだけど、レンジアが不思議そうに空中を見上げて首をかしげている。

「どうしたの?レンジア。」
「いつもこのあたりのどこかでオデコをぶつける。今日はぶつからない。」
 ああ、そういうことか。

「今日からレンジアも、また中に入れるようになったからね。もう入口でオデコをぶつけることはないと思うよ。」
「理解。」

 魔道昇降に乗って、84番目の扉の前に降り立った。魔道昇降が出来る前に時空の海にもぐっていたレンジアは、魔道昇降を不思議そうに眺めていた。

 84番目・肉屋(肉たくさん)。
 ということで、まずは84番めの扉に出てみることにする。

「……ここって、魔物の死体置き場?」

 物凄い血の匂いにクラクラする。バラバラにされた魔物の残骸のようなものが打ち捨てられていて生々しすぎる。自分の足元に広がる血だまりに、思わずゾッとした。

「ここは……。おそらく屠殺場だな。
 魔物に限らずたくさんの動物なんかを解体して出荷する工房だな。」
 と叔父さんが言った。

 キリカ!ここはどこ!?

【ビンブツという小国です。
 市が3つしかないようですね。】

「叔父さん、ビンブツっていう、市が3つしかない小さな国みたいだよ。」
「そんなに小さな国じゃ、直通の船便は望めないな、次に行こう。」

 85番目・錬金術師(薬など多数)。
 たくさんのアイテムをかきわけて、85番目の扉の外に出てみることにする。

 研究室のような、薄暗い部屋だけど、人の気配がなくて、ずっと誰も使っていないかのようだった。器具にはホコリがかぶってる。

 人の気配がなくて、だけど外には誰かが通るような音もする。僕らはとりわけ静かに周囲の様子をうかがった。すると、ひとつだけホコリのかぶっていない箱に目が留まった。

 蓋を開けると、中には一冊の本が入っていた。それには鎖が巻き付けられて開かないようになっている。僕はそれをなんとかしようとしたけど、錆びた鎖は外れなかった。

 鎖自体がチャラチャラ音がして、それが更に木箱に当たって、ガチャガチャ音がするから、そっとしか触れられないから余計に。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。