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第2章

第303話 新しい技術の登録

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 あ、そうなんだ。
 名前と言っても、個体名じゃなくて、物体としての固有名詞ってことだよね?
 空中を歩く呪文の発動の言葉と同じく。

 なら……。ギアホースかな!!
 機械仕掛けの馬だしね!うん。

【空中移動用の魔道具の名前を、“ギアホース”と名付けました。】

 とキリカが言う。これで僕の魔道具が完全にこの世に定着したわけだね。
 この子自体の名前も決めないとなあ。
 うーん……。

「お前はデルタだ!
 目の形がデルタだからね!」
「ブルルル……。」
 デルタが嬉しそうに身を擦り寄せてくる。

「え?なに、乗れっていうの?」
 デルタが僕の股の間に首を突っ込んで、グイグイと押し上げてくる。

「キリカ!ちょっと試乗してくるよ!」
 窓を開けて、デルタにまたがると、僕の腰ろに抱きついてくる腕。

「レンジア!?」
「──違う。」
 そうだ、この部屋を見張ってるんだった。
 僕の護衛に付いてくるつもりかな。

「いいよ、一緒に行こうか!
 デルタ!飛んで!!」
 デルタがいなないて窓の外に飛び出る。

「わあっ!ほんとに飛んでる!」
 地面を歩くより、ずっと早いし安定感があるね!馬に乗れる人間であれば、操作も簡単だし意外と馬よりオシリが痛くない!

 これは移動手段が変わるし、戦力にもなるし、戦い方が変わるかも知れないぞ。
 このままギアホースを、魔道具として登録しに行こうかな。

「レンジア、僕、職人ギルドに行きたいんだけど、このまま行っても構わないかな?」
「問題ない。」
「よし、デルタ!アタモの町まで飛んで!」

 僕はデルタで町の近くまで飛ぶと、デルタから降りて市場の中を歩いた。デルタを連れた僕の姿に、みんな興味津々みたいだ。

 職人ギルドに到着して、ギアホースを登録したいことを告げると、職人ギルドに登録は必要ないと教えてもらった。だけど、
「図面などはありますか?」

「え?図面?」
「はい、技術を登録するのに使います。」
 能力で出しただけだから、そんなものないよ、どうしよう!?

「あの……。図面、ないんですが。」
「そうですか。ではこちらで作成致しますので、手数料が登録料小金貨5枚とは別に、小金貨2枚かかりますがよろしいですか?」

「用意してなくてもいいんですか?」
「はい、感覚で作られる方も多いので。」
 むしろ平民は文字がわからないから、正確な図面なんて作れない人のが多いんだそう。

 だけど技術を登録したり、登録した技術を使うのに図面は必要らしい。人によっては正確な設計図がないと作れないこともあるみたいだけど、大抵の人は図面でいけるそう。

 図面はざっくりとした配置や技術の説明なんかが書いてあるもので、設計図は寸法とかまで正確に載ってるものなんだって。

 図面を作る為に、ギアホースの内部構造を専門のスキル持ちの人がスキャンする。そしてそれを図面に書きおこすのだそうだ。

 図面を作るのと登録に3日かかると言われて、僕はお金を支払って受付票をもらった。
 他の人の技術を利用した部分があれば、それを除いて僕の製品として登録される。

 もしも他の人の技術を流用した部分があれば、そこには僕がお金を払わないと、ギアホースを作れないことになるんだとか。

 もしもその技術を持ってる人に、技術の使用許可がもらえなかったら、お金どうこう関係なく作れなくなってしまう。

 逆に言えば、僕が作らせたくない人がいれば、お金を払えば誰でも勝手に作れるものでもないということだね。

 戦争目的で大量に作りたい人がいても、僕が許可しなければ作ることは出来ないってことだ。各国の騎士団に販売したいと考えてはいるけど、納入数は考えなくちゃね。

 もしもギアホースが世界中に定着したら、ギアホースの所持数が、戦局を変える可能性だってあるもの。

「レンジア、用事は終わったし、このまま少し空を散歩してみない?」
「……する。
 アレックスさまと、空のデート。」

 え?別にデートとか、そういうつもりじゃなかったんだけど……。
 デルタに乗るのは楽しいから、一緒に楽しめる相手がいたら嬉しいなって程度で。

「いいよ、デートしようか、レンジア。」
 レンジアが楽しそうだし、それでいっか。
 レンジアがコクッとうなずきギュッと抱きついて、胸が背中に当たってドキッとする。

【オニイチャンが特別に気に入ってるから、祝福が与えられています。オニイチャンはミーニャさんの他に、オフィーリアさんとレンジアさんのことを特別に思ってるんです。】

 キリカの言葉をなぜか思い出してしまう。
 僕は、レンジアのことを、好きになりかけてるんだろうか。急に意識しだしてしまう。
 その時、僕の上に急に影が出来た。

 見上げると、ボロボロの赤いマントをはおって、黒と赤の、ベルトがたくさんある服を着た、背中までの赤いくせ毛に、ツリ目の男の人が空に浮いて僕を睨んでいた。

 高い魔力保持者であることを示す、金色の目をしている。
「お前がミルドレッドを連れ去ったのか。」
 こ、この人、誰!?
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