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第2章

第285話 初めての獣人化

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「私が英雄になったら、アレックスさまのの役に立てる?アレックスさま、助かる?」
「そうだね、なってくれたら嬉しいな。」

「わかった。英雄、なる。」
 レンジアがコクコクとうなずいてくれる。
「そう、ありがとう。それなら、レンジアにも力を分け与えるね。」

「力?」
「正確には経験値かな。僕のスキルは、他人に経験値を分け与えることが出来るんだ。」

 なにせエザリス王国で、Bランク以上の魔物の経験値を大量に得たからね。
 スウォン皇国のみんなと同じくらいの経験値を分け与えても、なお余ったんだよね。

 レンジアは経験値を分け与えるという行為に、ちょっとワクワクしてるみたいだ。
 犬の表情を見分けるみたいに、最近レンジアの無表情の区別がついてきた気がするな。

「じゃあ、分けるね。」
 僕はレンジアに手をかざして、経験値の配布をおこなった。するとしばらくして、レンジアが胸をおさえて震えだす。

「レンジア!?どうかしたの!?」
「胸が……、熱い……。」
 花の紋章が反応してるってこと!?
 こんなの初めてのことだよ!!

 キリカ!これってだいじょうぶなの!?

【回答、人間との混血児であることで成長速度が通常の倍となります。一気に得た経験値による成長に、体がついていっていません。

 人間のままでは耐えられませんので、獣化する必要がありますが、レンジア(暗号名:コバルト)は捨て子であったことから、親から獣化の仕方を教わっておらず、あふれでた魔力が体内で暴れまわっているようです。】

 どうすれば獣化出来るの!?

【体内で切り替えをおこなう必要がありますが、本来は成長とともに繰り返し試して会得するものです。口で伝えられてもすぐに実行出来るものではないでしょう。

 ですが幸いなことに、レンジア(暗号名:コバルト)は番いにしたい相手を得た身であることから、相手の魔力を受け入れることが可能となります。魔力が正常に流れるよう、誘導してやることで落ち着くでしょう。】

 つまり具体的にはどうするの!?

【家庭教師の授業で、魔力感知と魔力回路の通し方は学びましたよね?他人に流すやり方も。レンジアさんの魔力回路に、正しく魔力が流れるよう、誘導してあげてください。

 レンジアさんの胸元の花に手を当てて、そこから魔力を流すのが最も効果的です。そこから魔力の流れと魔力回路をたどってください。オニイチャンなら出来る筈です。

 魔力が正しく流れれば、それだけで落ち着く可能性もありますし、それが駄目でも獣化をうながすことが可能でしょう。】

 む、む、む、胸って!?
 直接触れるの!?レンジアの素肌に!?
 魔力回路にうまく魔力が流れない場合は、誰かに誘導して貰うのが確かに有効だけど!

【人命救助ですよ、オニイチャン。
 そこが一番確実なんです。
 こうなったのもオニイチャンのせいなんですから、責任とってあげないとですよ?】

 そ、それもそうだね。レンジアなら、渡した半分でも良かったのかも知れないな。
 ごめんねレンジア、今助けるから!!

「レンジア、手をどけて。レンジアの獣化を僕が助けるから。レンジアは頑張って、銀牙狼族の姿になれるよう、集中するんだ。」

「アレックスさま……?」
 レンジアの胸元の花に手を当てて、目を閉じて魔力回路を探す。──見つけた!!

 ほんとだ、まるで体の中であふれた魔力が暴れまわってるみたい。これをうまく正しく流してやれば、レンジアは落ち着くんだね。

「あっ……。アレックス、さま……。
 怖い……。」
「だいじょうぶ。僕がついてる。集中して。必ず銀牙狼族の姿になれるから。」

 レンジアが痛みを逃がすように、大きくゆっくり深呼吸をしながら、胸に手を当てた僕の右手にすがりつくように、ギュッと抱きしめてくる。──!????

 レンジア、そ、それは……。仕方がないけど、レンジアのオッパイに、僕の右手が左右から挟まれた格好になるわけで……。

「アレックスさま、で、出る、なにか、出ちゃう……!!来る!怖い……!!」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから。」

 レンジアを左腕で抱きしめるように、背中をさすってやる。
「ああっ!!」
 レンジアの体が薄い光に包まれた。

 ハァハァと荒く浅い息を繰り返すレンジアの体は、人間の耳が消えて、牙と耳と尻尾の出た銀色の獣人の姿に変わっていた。

 すると突然レンジアがガウッと吠えたかと思うと、僕の首に噛みついてこようとする!
「レ、レンジア!?どうしたの!?
 落ち着いて!!」

 噛みついてこようとするレンジアの顔を押し戻そうとしたけど、力が強い!
「や、やめ……!いた──くない?」
 まるでじゃれついて甘咬みしてるみたい。
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