上 下
220 / 485
第2章

第275話 人型になれる魔物

しおりを挟む
 そして僕と目が合うと、
「そなたが“ななつをすべしもの”であるな!
 わらわにはすぐわかったぞよ!
 さあ!今すぐこの身を差し出そうぞ!」

 そう言うと、強い風がクリスタルドラゴンの体を取り巻いて、僕と叔父さんは目を開けていられなくなった。両腕で顔の前を多いながら、風がおさまるのを待ってやり過ごす。

 そして風がやんで目を開けると、足元までの銀色の髪に、金色の目をした──一糸まとわぬ幼い美少女がそこにいて、いそいそとベッドに潜り込むと、ブランケットをめくり、

「さ、優しくしてたもれ……。」
 と、ポッと頬を染めてモジモジしだした。
 え!?どういうこと!?
 ていうか、そのベッドどっから出したの?

 僕と叔父さんはポカーン。
「なんじゃ、こぬのか?あまりおなごに恥をかかすものではないぞ?」

「え!?ま、待って下さい、僕はあなたが僕と話をしたいというから来たのであって!
 それに僕が欲しいのはあなたの鱗です!そう事前に聞かれていらっしゃいますよね?」

「鱗?鱗とな?わらわは、“ななつをすべしもの”が現れた場合その身を差し出せとしか聞いておらぬぞよ。──違うのか?」

 そ、その身って……。
 あのベッドは、そういうこと!?
 僕は思わず全身が真っ赤になる。

「“ななつをすべしもの”が……いずれやって来る、……現れた場合その身……にまといし鱗……を差し出せ。なるほど。ところどころが途切れて聞こえていたというわけか。」

 叔父さんが1人納得している。
「ち、違います!僕、そんなつもりありませんから!勘違いです!鱗が欲しいだけで!」

「なんじゃ、つまらぬのう。ついにわらわは鏡を愛でなくともすむと思うたのに。わらわは美しいものが好きなのじゃ。ここに住んだのもわらわをうつす鏡がらあるからじゃ。」

「鏡?この水晶群のことですか?」
「そうじゃ。ここにおれば、いつでも美しいわらわの姿を見ることが出来るのじゃ。じゃがわらわも、つがいが欲しゅうてのう。」

「つがい?旦那さんですか?」
「そうじゃ。じゃから長年神に願っておったのじゃ。わらわの審美眼にかないし、美しいおのこをここに寄越せとの。」

「はあ……。」
「ついに神から返事があったのじゃ!
 じゃからわらわの願いを聞き届けて、美しいおのこを寄越したと思うたのじゃ。」

「なんかすみません……。」
「神の答えはわらわの思うておったものとは違ったが、そなたは実に美しい。お互いがよければよいであろ?さ、抱いてたもれ。」

「で、出来ません!そんなこと!
 僕、好きな子がいるんです!」
「なんじゃ、人間の娘か?構わん構わん。
 わらわは2番目以降を気にせんのでな。」

「僕が気にします!」
「なんじゃ……。わらわを美しいと申したであろ。この身が欲しくはないのか?」

 そう言ってスルリとベッドから出ると、全裸のまま僕に近寄って来た!長い髪の毛でほとんど隠れた幼い姿は、まるで絵画のように美しいけど、あれは見ちゃ駄目だ!

「どうじゃ……。美しいであろ!」
 髪の毛をスッと片手で持ち上げたのが、僕の腕の下からチラリと見える。

 まるで僕に見せつけるみたいに、堂々と自分の裸をお披露目してくる。
「わかりましたから服を着てください!」

「なんじゃ、つまらん。勇者のようなことを言うのだの。人間のおのこというものは、裸の美しいおなごを前にすると、むしゃぶりついてくるものと聞いておったのじゃが。」

 人によってはそうかも知れないけど……。
 僕はそういうの、無理だから!!
「申し訳ありません、うちの子には刺激が強いので、そういうのはちょっと……。」

 叔父さんもそう言ってくれる。
「なんじゃ、仕方がないの。」
 そう言うと、再び強い風が吹いて、
「さ、もう服を着たぞよ。」

 クリスタルドラゴンがそう言ったので、僕と叔父さんが目を開けると、どうやって着たのか、ちゃんとドレスを身にまとっていた。

「あの……、クリスタルドラゴンさん。」
「ミルドレッドじゃ。」
「ミルドレッドさん、」

「んん~~……!!美しいおのこに名前を呼ばれるというのはいいのう!」
 ミルドレッドさんは体を震わせて、目をギュッと閉じて嬉しそうにそう言った。

 な、なんかやり辛いなあ……。
「そなた、名はなんと申す?」
「挨拶が遅れて申し訳ありません。
 俺はセオドア・ラウマンと申します。」

「僕はアレックス・キャベンディッシュと申します。」
「アレックス!良い名じゃ!
 実にわらわのつがいに相応しいの!」

 マナーとして、年長者の叔父さんが先に名乗ったんだけど、叔父さんのことはガンとして無視して、嬉しそうにしていた。

────────────────────

ようやく登場、ロリババア枠、魔物っ娘、かつナルシストキャラポジション。
人型になれる魔物は今後も出てきます。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。