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第2章
第268話 新しい英雄
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「アイオロス・クロッグスです。」
「シャーリー・クロッグスです……。」
不安げな様子で2人が王宮に現れた。
シャーリー嬢は右手で左手を掴んで、
「こんな格好でお恥ずかしいです。
先ほどまで戦っていて……。」
と頬を染めて目線をそらした。
先ほどまで武器を携帯していたのだろう痕跡が、アイオロスさんの背中にかついでいる弓を背負う道具から見て取れた。
王族の前で武器の携帯が許されるのは、護衛の人たちだけだからね。広間に入る前に誰かに預けたんだろう。確かに2人とも妙にボロボロだ。返り血のような跡も見て取れた。
クエスト帰りに冒険者ギルドに報告に来たところを、そのまま呼び出されたのかな?
王宮に来るなら、もう少し身ぎれいにして来たかったんだろうね、女の子だもの。
「よいよい、こちらが急に呼び立てたのだ。
王宮の礼儀作法は気にするでない。
さて、まずはこれにサインと血判をして欲しい。口外せぬという魔法の契約書だ。」
カミーザさんが新しい契約書を見せた。
「魔法の契約書……?」
「今から話すことは国家秘密だ。決して口外することまかりならぬ。よいな?」
困惑しつつも、国王命令とあって、アイオロスさんもシャーリー嬢も、カミーザさんの渡した契約書にサインをして血判をおした。
「うむ。これでよいな。さておぬしたちを呼んだのは外でもない。おぬしたちには英雄の可能性があることがわかったのだ。ぜひ勇者と聖女を支える英雄になっては貰えぬか。」
「英雄?英雄というと……、勇者さまや聖女さまについて、魔王と戦う、あの、英雄ですか?俺たちがそれになれると?」
「そうだ。お前たちも聞いたことがあるだろうが、勇者さまや聖女さまは、突然この世界に降臨されたり、突如として目覚めた者がなるのが基本なのは知っているな?」
「はい。ですが英雄はこの世界の人間から選ばれる。それは知っています。ですが、俺たちはSランクとはいえ、まだなったばかりの新人にも等しい存在です。それが……。」
「英雄に選ばれるなど、おこがましいです。
まだまだ勉強中の身ですし……。」
2人はそう言って身動ぎした。
本来なら、もっとベテランの人たちが選ばれるものだからね、代々の英雄って。
僕は家庭教師から教わったけど、これは平民のミーニャも知ってるくらいの常識だ。
「本来ならばな。だが、なれるのであれば、なりたくはないか?もっと力が欲しいと思ったことはないか?たくさんの人たちを救える存在に、おぬしたちがなれるとしたら?」
「力……。もっと力があれば、俺たちはさっきの魔物にも勝てたかも知れない。
なんでか突然魔物は消えたけど、あれがなかったら、俺たちは死んでいたんだ。」
バイツウェル3世の言葉に、アイオロスさんがうつむいて、グッと両手の拳を握りしめると、悔しそうにつぶやいた。
「そうね……。もっと強くなりたい。
正直にそう思います。」
とシャーリー嬢も言った。
ん?勝って戻って来たんじゃないのかな?
突然魔物が消えた……?
──あ。
さっきのあれかあ……。僕の水の結界で魔物が死んだんだ。あの時、アイオロスさんとシャーリー嬢は、魔物と戦っていたんだね。
「突然魔物が消えた?ああ、おぬしらはあの時戦っておったのか。それはな、ここにいるアレックスの力よ。我が国に水の結界をしいてくれた。悪しき者をはらう結界だ。」
「結界?この国にですか?」
「そうだ。この国は世界で唯一の、ダンジョンスタンピードのおこりえぬ国となったのだよ!もう失われた大地ではないのだ。」
「ダンジョンスタンピードが……。」
「おこらない?」
うん、2人ともキョトンとしてるね。
「そうであったの、セオドアよ。」
「はい。Bランク以上の魔物は干からびさせる結界です。今後冒険者は、Bランク以上はダンジョン内で狩ることになりましょう。」
叔父さんがうなずいた。
「それほどの力を持つアレックスはな、更に英雄を育てる力をも持っているのだ。お前たちに力を授けることが出来る。どうかその力を使って、英雄となって欲しいのだ。」
「もしもそれが本当なら、俺たちは神に選ばれたということですか?本当に……?」
ギクッ。ま、まあ、半分だけね。
「そうだ。ただいきなりたくさんの力は与えられないらしい。なのでいずれは、というのが正確なところになるが、おぬしらはやがて英雄になりし者たちということになるな。」
「それでもいい。力が……、欲しいです。
みんなを救える力が……!!」
「私も、同じです。」
シャーリー嬢がうなずいた。
「シャーリー・クロッグスです……。」
不安げな様子で2人が王宮に現れた。
シャーリー嬢は右手で左手を掴んで、
「こんな格好でお恥ずかしいです。
先ほどまで戦っていて……。」
と頬を染めて目線をそらした。
先ほどまで武器を携帯していたのだろう痕跡が、アイオロスさんの背中にかついでいる弓を背負う道具から見て取れた。
王族の前で武器の携帯が許されるのは、護衛の人たちだけだからね。広間に入る前に誰かに預けたんだろう。確かに2人とも妙にボロボロだ。返り血のような跡も見て取れた。
クエスト帰りに冒険者ギルドに報告に来たところを、そのまま呼び出されたのかな?
王宮に来るなら、もう少し身ぎれいにして来たかったんだろうね、女の子だもの。
「よいよい、こちらが急に呼び立てたのだ。
王宮の礼儀作法は気にするでない。
さて、まずはこれにサインと血判をして欲しい。口外せぬという魔法の契約書だ。」
カミーザさんが新しい契約書を見せた。
「魔法の契約書……?」
「今から話すことは国家秘密だ。決して口外することまかりならぬ。よいな?」
困惑しつつも、国王命令とあって、アイオロスさんもシャーリー嬢も、カミーザさんの渡した契約書にサインをして血判をおした。
「うむ。これでよいな。さておぬしたちを呼んだのは外でもない。おぬしたちには英雄の可能性があることがわかったのだ。ぜひ勇者と聖女を支える英雄になっては貰えぬか。」
「英雄?英雄というと……、勇者さまや聖女さまについて、魔王と戦う、あの、英雄ですか?俺たちがそれになれると?」
「そうだ。お前たちも聞いたことがあるだろうが、勇者さまや聖女さまは、突然この世界に降臨されたり、突如として目覚めた者がなるのが基本なのは知っているな?」
「はい。ですが英雄はこの世界の人間から選ばれる。それは知っています。ですが、俺たちはSランクとはいえ、まだなったばかりの新人にも等しい存在です。それが……。」
「英雄に選ばれるなど、おこがましいです。
まだまだ勉強中の身ですし……。」
2人はそう言って身動ぎした。
本来なら、もっとベテランの人たちが選ばれるものだからね、代々の英雄って。
僕は家庭教師から教わったけど、これは平民のミーニャも知ってるくらいの常識だ。
「本来ならばな。だが、なれるのであれば、なりたくはないか?もっと力が欲しいと思ったことはないか?たくさんの人たちを救える存在に、おぬしたちがなれるとしたら?」
「力……。もっと力があれば、俺たちはさっきの魔物にも勝てたかも知れない。
なんでか突然魔物は消えたけど、あれがなかったら、俺たちは死んでいたんだ。」
バイツウェル3世の言葉に、アイオロスさんがうつむいて、グッと両手の拳を握りしめると、悔しそうにつぶやいた。
「そうね……。もっと強くなりたい。
正直にそう思います。」
とシャーリー嬢も言った。
ん?勝って戻って来たんじゃないのかな?
突然魔物が消えた……?
──あ。
さっきのあれかあ……。僕の水の結界で魔物が死んだんだ。あの時、アイオロスさんとシャーリー嬢は、魔物と戦っていたんだね。
「突然魔物が消えた?ああ、おぬしらはあの時戦っておったのか。それはな、ここにいるアレックスの力よ。我が国に水の結界をしいてくれた。悪しき者をはらう結界だ。」
「結界?この国にですか?」
「そうだ。この国は世界で唯一の、ダンジョンスタンピードのおこりえぬ国となったのだよ!もう失われた大地ではないのだ。」
「ダンジョンスタンピードが……。」
「おこらない?」
うん、2人ともキョトンとしてるね。
「そうであったの、セオドアよ。」
「はい。Bランク以上の魔物は干からびさせる結界です。今後冒険者は、Bランク以上はダンジョン内で狩ることになりましょう。」
叔父さんがうなずいた。
「それほどの力を持つアレックスはな、更に英雄を育てる力をも持っているのだ。お前たちに力を授けることが出来る。どうかその力を使って、英雄となって欲しいのだ。」
「もしもそれが本当なら、俺たちは神に選ばれたということですか?本当に……?」
ギクッ。ま、まあ、半分だけね。
「そうだ。ただいきなりたくさんの力は与えられないらしい。なのでいずれは、というのが正確なところになるが、おぬしらはやがて英雄になりし者たちということになるな。」
「それでもいい。力が……、欲しいです。
みんなを救える力が……!!」
「私も、同じです。」
シャーリー嬢がうなずいた。
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