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第2章

第256話 空中戦

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 僕は本来空中でなんか戦えないし、空中からあの布のムチなんかで襲いかかられたら、血の海も範囲外で攻撃出来ないから。

 僕の攻撃は血の海だけだと思っていたみたいだし。近接攻撃しか出来ない相手だとしたら、空中に素早く逃げるのは確かに手強い。

 鳥の魔物だって、近付いて来てくれなければ、近接職には倒せないからね。創生の海を解放する前だったら、倒せなかったかも。

 果たして彼らがそれを知っていたのか、気付いていたのかすらも分からないけど。
 もしくはザザ・アイワナ・バイツウェル2世から教わることが出来たかも知れないね。

 彼らに新しい力を何度も授けられるくらいなんだもの。だけど生命の海から水刃を出せるのが分からなかったのは、彼らの目線で見たものしか分からないということなのかな。

「──待て、女がいるぞ。」
 そう言った彼らの視線の先には、開いたままの83番目の扉の中にいるキリカがいた。

「あいつを人質に取れば、まだ勝機はある!
 あの女を奪え!」
「言われなくとも!」

 9人の男たちが、叔父さんの頭の上を飛び越えて、83番目の扉の中のキリカへ迫る。
 キリカは神さまだけど、情報と通信をつかさどる女神さまだ。ましてや今は仮の体。

 キリカに戦う力なんてないんじゃないだろうか。叔父さんも慌てて後を追いかけ、僕は生命の海から水刃を出して彼らに投げた。
「キリカ!扉を閉めて!」

 咄嗟のことに動けないでいるキリカ。精神をつないでいるだけだと言っていたから、あの人造人間が壊されても、キリカは痛くないかも知れないけど、正直それを見たくない。

 僕の出した水刃を、やつらが打ち払い、跳ね返すと、83番目の扉にたどり着いて、勢い良く中に飛び込もうとして、──透明な板のようなものに勢い良く跳ね返されていた。

 あ、そうか!僕、僕が許可した人以外、時空の海の中に入れない設定にしてたんだったっけ。レンジアがそれで毎回入口で、オデコをぶつけているんだよね。

 83番目の扉も時空の海で出したものだから、その設定が生きていたってことか!
 彼らは全身をひどく打ち付けて、この為の陽動か、クソッ!とこちらを睨んだ。

 僕も叔父さんもそれが頭になかったから、これは決してわざとなんかじゃないんだけどなあ。まあ別に彼らに違うと説明してもね。

 その時、ビキビキビキビキ!ドカーン!と音がしたかと思うと、水の結界の一部に見知らぬ文字の書かれた魔法陣が出来ていた。

 なんなの?あれ。ひょっとしてあれが、魔族の使う、悪魔の力を借りたという魔法陣なのかな?結界は水の魔法陣なのに、魔法陣を魔法陣で上書きするなんて!

 キリカ!あの穴が空いているところは防げないかな?あそこから逃げられちゃうよ!
 もっとスピードをあげる方法はない?

【回答、未完成の結界の為、自然に塞がれるのを待つしかありません。自動的に塞がりますが、速度を早めることは出来ません。】

 そうなのか……。ならなんとかするしかないね。9人の男たちをなんとか叔父さんにおさえて貰って、僕が追いかけるしかない!

 けど、魔族の魔法は現代魔法とは相反するものと教わったことがあるよ。僕のスキルが通じるだろうか。魔族は魔族にとっての神さま、悪魔の力を借りて魔法を使うんだ。

 それもアジャリべさま──母さまが生み出した子どもであり、僕の兄弟神らしいけど。
 彼らは魔族のほうが正直に生きているから好きらしいと、前回念話で教わったんだ。

 ザザ・アイワナ・バイツウェル2世の体が魔法陣の中をスッと通って外に出てしまう。
 まずい!逃げられる!

「行かせるかよ。」
 慌てて追いかけようとした僕の前を、再び飛んで来た9人の男たちが塞ぐ。

「俺たちはお前の足どめの為にいるんだ。」
「退いてよ。君たちを倒して、僕はそこを通る。あいつをこのまま行かせるもんか。」

「アレックス、ここは任せろ。ザザ・アイワナ・バイツウェル2世を頼む!」
「叔父さん、お願い!」

 僕が地面を蹴ってよけると、叔父さんが単身彼らに突撃して行く。
「……アレックスの邪魔はさせん。」
「この……!」

 叔父さんと大鉈の刀身を打ち付け合っている、大剣だった男を尻目に空へ駆け上がる。
「行かせるか!」

 後ろから布のムチが僕の体にまとわりついて、グイッと引っ張られた。しまった!
 僕のスキルの弱点と言っていいもの。
 それは後ろからの攻撃に弱いこと。

 僕が向いている方にしか、扉を出すことが出来ないんだ。このままだと、生命の海から水刃を出しても相手には当たらないんだ。
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