上 下
200 / 485
第2章

第255話 叔父さん無双

しおりを挟む
「くっ……、調子に乗るなよ。」
 双剣を使っていた男の武器は、刃を連ねた2つの扇になっていた。男がぐるりと回転すると、それがシャワーのように降ってくる。

 叔父さんはそれを空中を蹴りながら、縦横無尽に左右に飛んでよけ回りつつ、時に双剣で刃を跳ね返しながら近付いて行く。

「──子どもだましだな。双剣の時のほうがまだ動きが良かったぞ?武器を変えないほうがっ……、良かったんじゃないのか?」

「抜かせっ……!」
 扇を閉じるとそれは双剣へと変わった。近距離に詰め寄った叔父さんの攻撃を、双剣に戻した扇で受け止めて押し戻そうとしてる。

「俺はすべての武器を習得した剣聖だ。本来のお前たちの力で勝てる相手じゃないってことは、今のお前が1番よく分かってる筈だ。」

 自分と同じ武器を使われて、自分の攻撃を受け止めつつ、もう片方の刃で脇腹に攻撃してくる叔父さんの攻撃を、受け止めるだけで力負けし、押し戻すことが出来ないでいる。

 その彼が1番叔父さんとの実力差を理解しているのは明白だろう。
「ぐっ……!」
 汗をかきながらこらえるのに必死だ。

「うおおお!」
 長剣だった男は、光の剣に変わっていた。
 後ろから攻撃された叔父さんの、右手で受け止めた双剣の刃にヒビが入る。

 長剣だった男がニヤリとした。あの武器相当強いやつなんだ!叔父さんは直ぐ様刃こぼれした片方の双剣を捨てて、くるりと向きを変え、もう片方の左手の双剣で受け止めた。

 マジックバッグから長剣を取り出して、双剣と交差するように、長剣だった男の光の剣を受け止めつつ押し戻していく。

「早く行け!」
「あ、ああ……。
 お前が助けてくれるとはな。」

 双剣だった男がそう言って、叔父さんから距離を取ると、離れた位置まで飛んでった。
「お前も武器だよりか。」
「それでもお前より強いぜ?」

「それは……どうかな!!」
「がっ……!」
 長剣同士で押し合っている隙に、叔父さんの双剣が長剣だった男の腹を切り裂いた。

 前回も今回もなんだけと、こいつらは自分の力を過信してるのか、まったく防具といえるものを身に着けていないんだ。

 僕も叔父さんも、叔父さんのすすめで普段から防具にもなる革のベストを着てるし、ダンジョンの時は防具も身に着けてたのにね。

 前回の襲撃の時は、叔父さんは頭をやられてしまったから、血まみれになっちゃったけど、彼らの武器では防具を切り裂けなくて、お腹とかはちゃんと無事だったからね。

 咄嗟のことだったから、叔父さんも今はそのベストしか着てないけど、それでも胸やお腹は守ることが出来る。だけど彼らはむき出しだから、お腹に深傷をおってしまった。

「──長剣は両手持ちなら、確かにその分攻撃力は増すが、攻撃も防御も1つの武器だけで行わなくてはならない。防御もろくに出来ないやつが、選んでいい武器じゃない。」

「エリアヒール!」
 唯一の回復役の男が、遠くから長剣だった男にエリアヒールをかける。ついでに他の仲間も回復させたみたいだ。

「バラバラに行くな!全員でかかれ!」
 大剣だった男が叫ぶ。この人も武器が変わってる。あれは……巨大なナタ?みたいだ。

「叔父さん!」
 叔父さんがダンジョンの時のように彼らに囲まれた!僕は生命の海で水刃を出して、彼らを攻撃しようとした。

「──問題ない。」
 一斉に襲いかかる彼らを、叔父さんが空中で踏み込み、ぐるりと一回転をすると、全員がどこかしらを切られて吹っ飛んだ。

「踏み込みが甘いな。近接職が踏み込めなくて、じゅうぶんな力を出せるとでも?
 空中に浮かぶ戦法を取ったのが敗因だな。
 今の俺相手じゃ、それは通じない。」

 叔父さん強い……!9人が相手だろうと、力を増していようと、実戦で身につけた叔父さんの実力だと、相手にならないんだ!

 今の叔父さんはキリカいわく、前回の彼らなら対等に戦えるということだったけど、今の彼らは前回よりも力を増してて、更に新しい力まで手に入れているっていうのに。

 多少の力の差なら、実力差でねじ伏せられるんだ!彼らは無理やり力をつけただけの、もとはBランク程度の冒険者だものね。

 経験値配布で力を増した、現役Sランク冒険者の叔父さんだと、相手にならなかった。
 回復役が回復してるけど、完全に心を折られている感じがする。

 それが証拠に、こちらを睨んだまま、少しも近寄って来ようとしないんだ。叔父さんの力を警戒してるんだろう。叔父さんは長剣と双剣の片方を交差して待ち構えている。

 たぶん彼らは僕だけが来る場合を想定していたんだろうね。完全に待ち構えていたという感じだったし、この結界が僕のものであるということは、彼らには分かっていたんだ。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。