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第2章
第254話 穢れた土地からの解放
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2番目に最年長のグルドゥリィンも言う。
「恐らくは“ななつをすべしもの”に関連した事柄でしょう。“ななつをすべしもの”は今、かの土地にいるのです。」
「“ななつをすべしもの”が失われた大地にいるだと!?ついに現れたのか!」
「2000年の時を経て、再びあの土地に救い主が舞い降りたということか!」
「失われた大地を再び国として認めさせんが為に、神が彼の土地に“ななつをすべしもの”を出現させた……。あり得ない話ではないな。神の憂いを思えば当然にすら思える。」
「彼の土地以外に現れれば、恐らく国が権利を主張してることでしょう。関連国や属国もその限りではありますまい。」
「なれば失われた大地の出自でなくとも、そうしてしまったほうが、争いが生まれなくてよいだろう。かの土地に関わる国は存在せぬのだからな。むしろ良き機会かも知れぬ。」
「……いや、むしろそのほうが争いが生まれるのではとわたくしは思います。」
最高祭司のひとつ下の役職、管轄祭司が懸念を示した。皆が管轄祭司を振り返る。
「今までどの国とも関わらなかったということは、技術なども前時代のままでしょう。かの国の国力が弱いと見て“ななつをすべしもの”を我がものせしめんたる国が現れる。」
「その懸念は大いにあるだろう。代々聖女や勇者、その周辺を補佐する英雄たちが現れるたびに、各国で奪い合い権利を主張してきたのだからな。取り入ろうとするのは明白だ。」
「我らで彼の土地を守護するべきではないだろうか?国力がないのであればなおのこと。
他の国では不可能なことだが、政治的なしがらみがない土地だからこそ可能だ。」
「果たして彼の土地がそれを受け入れるでしょうか……。未だに彼の土地の名を呼ぶことを恐れる我々を。お告げがあってなお、禁忌に触れるのではと懸念している状態で。」
「確かに……。あちらからすれば、再び勇者が現れたからと、手のひらを返して関わろうとしているように見えることでしょう。」
「それは……。慎重に慎重を重ねて協議せねばならんな。彼の土地への対応の仕方を。本来中立な立場ではあるが、彼の土地を歴史の中に封印してきたのは我々とて同じこと。」
「──なれば我々“選ばれしもの”が、使者として参りましょう。」
年齢が上から3番目のレドグランスが、胸に手を当て、一歩前へ出てそう言った。
「我々は神の使徒たる存在。エザリス王国が今も敬虔なアジャリべさまの信者であるのなら、我らが1人でも訪問する意味がわかりましょう。──それが全員ともなれば。」
「確かに、“選ばれしもの”は敬虔なアジャリべさまの信者の国にしか、訪問出来ぬ決まりごと。祝福を授けられる“選ばれしもの”に訪問されるというのは大変な栄誉だ。」
「それが7人全員というのは、どの国でもいまだかつてなしえなかったことだ。──まさに前代未聞。中央聖教会が今後どう接していくのか、国内外に広く知らしめられよう。」
「はい。中央聖教会はエザリス王国を、敬虔なアジャリべさまの信徒として扱うということを、広くアピール出来ましょう。」
最年少のスザーリンが言った。
「中央聖教会がそれを率先して示せば、諸国の見方も変わるのではないでしょうか。
失われた大地ははるか昔のこと。今のエザリス王国は穢れてなどいない、と。」
「我々の敵意のなさも伝わろう。そして今まで見ないようにしてきた問題を、謝罪したい意思も伝わるのではないだろうか。」
祭司たちも次々に同意する。
「──行ってくれるか?エザリス王国に。」
最高祭司が、ついにエザリス王国の名を口にした。この時をもって、エザリス王国は失われた大地ではなくなったのだった。
祭司たちは皆一様にほっとしたような表情を浮かべていた。聖女を生み出した土地を廃地としたこと、聖女を救えなかったことに、代々責任を感じて気に病んでいた。
またそうでありながらも、民衆の声に手をこまねいていたのも事実だ。あくまで教会を束ねる立場として、国に対する影響力を持ちながらも、民衆の意向は無視出来ない。
お告げもない中で、民衆の反発を受けてまで、5大大国が滅んだのは神罰であり、エザリス王国は穢れた土地ではないと発言するには、根拠も勇気も足りなさ過ぎたのだ。
「もちろんです。穢れた土地とされながら、今日まで国が続いているのなら、それは彼らがアジャリべさまの敬虔な信者であり、かつそのご加護があるからに他なりません。」
真ん中の年齢のスーウェイが言う。
「それを証明すべきは我ら“選ばれしもの”をおいて他にないでしょう。これはアジャリべさまの使徒たる我らが使命ですので。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「恐らくは“ななつをすべしもの”に関連した事柄でしょう。“ななつをすべしもの”は今、かの土地にいるのです。」
「“ななつをすべしもの”が失われた大地にいるだと!?ついに現れたのか!」
「2000年の時を経て、再びあの土地に救い主が舞い降りたということか!」
「失われた大地を再び国として認めさせんが為に、神が彼の土地に“ななつをすべしもの”を出現させた……。あり得ない話ではないな。神の憂いを思えば当然にすら思える。」
「彼の土地以外に現れれば、恐らく国が権利を主張してることでしょう。関連国や属国もその限りではありますまい。」
「なれば失われた大地の出自でなくとも、そうしてしまったほうが、争いが生まれなくてよいだろう。かの土地に関わる国は存在せぬのだからな。むしろ良き機会かも知れぬ。」
「……いや、むしろそのほうが争いが生まれるのではとわたくしは思います。」
最高祭司のひとつ下の役職、管轄祭司が懸念を示した。皆が管轄祭司を振り返る。
「今までどの国とも関わらなかったということは、技術なども前時代のままでしょう。かの国の国力が弱いと見て“ななつをすべしもの”を我がものせしめんたる国が現れる。」
「その懸念は大いにあるだろう。代々聖女や勇者、その周辺を補佐する英雄たちが現れるたびに、各国で奪い合い権利を主張してきたのだからな。取り入ろうとするのは明白だ。」
「我らで彼の土地を守護するべきではないだろうか?国力がないのであればなおのこと。
他の国では不可能なことだが、政治的なしがらみがない土地だからこそ可能だ。」
「果たして彼の土地がそれを受け入れるでしょうか……。未だに彼の土地の名を呼ぶことを恐れる我々を。お告げがあってなお、禁忌に触れるのではと懸念している状態で。」
「確かに……。あちらからすれば、再び勇者が現れたからと、手のひらを返して関わろうとしているように見えることでしょう。」
「それは……。慎重に慎重を重ねて協議せねばならんな。彼の土地への対応の仕方を。本来中立な立場ではあるが、彼の土地を歴史の中に封印してきたのは我々とて同じこと。」
「──なれば我々“選ばれしもの”が、使者として参りましょう。」
年齢が上から3番目のレドグランスが、胸に手を当て、一歩前へ出てそう言った。
「我々は神の使徒たる存在。エザリス王国が今も敬虔なアジャリべさまの信者であるのなら、我らが1人でも訪問する意味がわかりましょう。──それが全員ともなれば。」
「確かに、“選ばれしもの”は敬虔なアジャリべさまの信者の国にしか、訪問出来ぬ決まりごと。祝福を授けられる“選ばれしもの”に訪問されるというのは大変な栄誉だ。」
「それが7人全員というのは、どの国でもいまだかつてなしえなかったことだ。──まさに前代未聞。中央聖教会が今後どう接していくのか、国内外に広く知らしめられよう。」
「はい。中央聖教会はエザリス王国を、敬虔なアジャリべさまの信徒として扱うということを、広くアピール出来ましょう。」
最年少のスザーリンが言った。
「中央聖教会がそれを率先して示せば、諸国の見方も変わるのではないでしょうか。
失われた大地ははるか昔のこと。今のエザリス王国は穢れてなどいない、と。」
「我々の敵意のなさも伝わろう。そして今まで見ないようにしてきた問題を、謝罪したい意思も伝わるのではないだろうか。」
祭司たちも次々に同意する。
「──行ってくれるか?エザリス王国に。」
最高祭司が、ついにエザリス王国の名を口にした。この時をもって、エザリス王国は失われた大地ではなくなったのだった。
祭司たちは皆一様にほっとしたような表情を浮かべていた。聖女を生み出した土地を廃地としたこと、聖女を救えなかったことに、代々責任を感じて気に病んでいた。
またそうでありながらも、民衆の声に手をこまねいていたのも事実だ。あくまで教会を束ねる立場として、国に対する影響力を持ちながらも、民衆の意向は無視出来ない。
お告げもない中で、民衆の反発を受けてまで、5大大国が滅んだのは神罰であり、エザリス王国は穢れた土地ではないと発言するには、根拠も勇気も足りなさ過ぎたのだ。
「もちろんです。穢れた土地とされながら、今日まで国が続いているのなら、それは彼らがアジャリべさまの敬虔な信者であり、かつそのご加護があるからに他なりません。」
真ん中の年齢のスーウェイが言う。
「それを証明すべきは我ら“選ばれしもの”をおいて他にないでしょう。これはアジャリべさまの使徒たる我らが使命ですので。」
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