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第2章
第241話 遺品の返却
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「はい。噂程度には。」
「よそで家族を作ったのか、生きているのか死んだのかどうかすらも分からん。なにせこの国には、手紙も届かないからな。」
失われた大地、禁忌の土地っていうのは、世間からそういう扱いなんだね。
通信手段すら断たれてるなんて。
「お袋を捨てた親父はともかく、世間知らずな兄貴は親父に半ば騙されたようなものだからな。いつか帰ってきてくれると信じていたが、戻る手段がなかったのかも知れん。」
通信手段が断たれているくらいだものね。
「……叔父さん。」
僕は叔父さんにコソッと話しかける。
「さっきのアイテムボックスの中で、僕あの窓にある絵と同じものを見たんだ。ひょっとしてあのアイテムボックスは、このお爺さんのお父さんのものなんじゃないかな?」
「……本当か?」
「うん。なんとか中身を返せないかな。」
「……やってみよう。」
叔父さんがそう請け負ってくれる。
「そうでしたか。では、やはりあなたがオンスさんだったのですね。」
「な、なぜワシの名を!?」
お爺さんが驚いている。
なぜって、さっきエルサちゃんが呼んだのを偶然聞いたから、だけどね……。
「実は俺はかつて、あなたのお父さんに世話になった者です。」
「お、親父に世話に!?」
「あの頃はギーテと名乗られていました。
本名は分かりません。」
「ギーテは親父のファミリーネームだ。」
え?まさかのつながった!?
それとも偶然!?
「……。これを。」
「これは……俺が親父の誕生日に作って渡した、革紐の首飾り……。間違いない、裏にギーテと名前が彫ってある。汚え字だ……。」
オンスさんは涙を浮かべて笑いながら、その革紐の首飾りを受け取った。
ギーテって結構珍しい名前だよね。ほんとに叔父さん、ギーテさんと知り合いなの?
「……お父さんはダンジョンで亡くなられました。その形見の品です。
お兄さんの行方は分かりませんが。」
「そうかい……。」
「実は他にもお父さんから託されたものがあるのですが、マジックバッグか、倉庫はお持ちですか?」
「倉庫ならあるよ。空っぽだがな。」
「なら都合がいい。アレックス。」
「うん、叔父さん。
──倉庫に案内していただけますか?」
「別に構わんが……。」
僕と叔父さんは、オンスさんの案内で倉庫に連れられ、扉を開けてもらった。かなり大きくて、これなら全部入りそうだね。
時空の海。83番目の扉。抽出!!
「こ、こりゃあ……。」
オンスさんの目の前で、時空の海の扉の中から飛び出した農作物たちが、どんどんと倉庫に器用に積まれながら収まっていく。
最後にマジックバッグの中身も積んでいると、ヒラヒラと姿絵が天井から降ってきた。
それをオンスさんに手渡す。
「これもどうぞ。」
「親父……。たくさん食い物を持って帰るからって……。てめえが帰ってこれなきゃ、意味ねえじゃあねえかよう……。」
オンスさんは絵姿を抱きしめて泣いた。
「……叔父さん、あの革紐の首飾り、いったいどうしたの?」
「俺が昔ダンジョンで死体から双剣を貰ったことがあると言っただろ。あれがそれだ。」
「……じゃあ、かなり以前にお亡くなりになられていたんだね。」
「そういうことだな。持ち歩いてたが、まさか本当にご家族に返せる日が来るとはな。」
「ある意味本当にお世話になってたんだね。
オンスさんのお父さんに。」
「……そうだな。」
叔父さんはその双剣も、オンスさんに返そうとしたんだけど、形見分けとしてぜひ、叔父さんに持っていて欲しいとオンスさんに言われて、そのまま貰い受けることにした。
叔父さんも思い入れのある品だし、ありがたく受け取ることにしたみたい。
さて、オンスさんはだいじょうぶとして、とにかくこの国の食料事情だよね!
「ちなみにこの国の市場はどうなってるんですか?少しは食料が入ってきたり?」
「……いや。みんなそれを期待して毎日市場をうろついちゃいるが、何も来やしねえ。」
「オンスさん!僕ここで魚屋の支店を開きたいんですが、従業員を募集してるんです!」
「じゅ、従業員?」
「ぜひ、僕の店で働きませんか?」
「食べ物が手に入るのは有り難いが……、どうやってここまで運ぶんだ?」
「僕、転送スキルが使えるんです!」
「て、転送?っていうと、引っ越しとかに使う、まとめて荷物を送れる、あれか?」
「はい、そのスキルで、月に1回程度、まとめて魚の入ったマジックバッグを、オンスさんに預けますので、他に何人か、信用できそうな人を紹介して欲しいです!」
「それは別に構わんが……。この国の通貨は、よその国じゃ使えんだろ?」
失われた大地だから、そうなんだね。
でも、これはお金だけの問題じゃないよ。
僕は人間を救う方を選びたい!
施すのは簡単だけど、仕事を与えて稼いで欲しいから、僕の稼ぎにならなくても、オンスさんには魚屋をして欲しいんだ。
「よそで家族を作ったのか、生きているのか死んだのかどうかすらも分からん。なにせこの国には、手紙も届かないからな。」
失われた大地、禁忌の土地っていうのは、世間からそういう扱いなんだね。
通信手段すら断たれてるなんて。
「お袋を捨てた親父はともかく、世間知らずな兄貴は親父に半ば騙されたようなものだからな。いつか帰ってきてくれると信じていたが、戻る手段がなかったのかも知れん。」
通信手段が断たれているくらいだものね。
「……叔父さん。」
僕は叔父さんにコソッと話しかける。
「さっきのアイテムボックスの中で、僕あの窓にある絵と同じものを見たんだ。ひょっとしてあのアイテムボックスは、このお爺さんのお父さんのものなんじゃないかな?」
「……本当か?」
「うん。なんとか中身を返せないかな。」
「……やってみよう。」
叔父さんがそう請け負ってくれる。
「そうでしたか。では、やはりあなたがオンスさんだったのですね。」
「な、なぜワシの名を!?」
お爺さんが驚いている。
なぜって、さっきエルサちゃんが呼んだのを偶然聞いたから、だけどね……。
「実は俺はかつて、あなたのお父さんに世話になった者です。」
「お、親父に世話に!?」
「あの頃はギーテと名乗られていました。
本名は分かりません。」
「ギーテは親父のファミリーネームだ。」
え?まさかのつながった!?
それとも偶然!?
「……。これを。」
「これは……俺が親父の誕生日に作って渡した、革紐の首飾り……。間違いない、裏にギーテと名前が彫ってある。汚え字だ……。」
オンスさんは涙を浮かべて笑いながら、その革紐の首飾りを受け取った。
ギーテって結構珍しい名前だよね。ほんとに叔父さん、ギーテさんと知り合いなの?
「……お父さんはダンジョンで亡くなられました。その形見の品です。
お兄さんの行方は分かりませんが。」
「そうかい……。」
「実は他にもお父さんから託されたものがあるのですが、マジックバッグか、倉庫はお持ちですか?」
「倉庫ならあるよ。空っぽだがな。」
「なら都合がいい。アレックス。」
「うん、叔父さん。
──倉庫に案内していただけますか?」
「別に構わんが……。」
僕と叔父さんは、オンスさんの案内で倉庫に連れられ、扉を開けてもらった。かなり大きくて、これなら全部入りそうだね。
時空の海。83番目の扉。抽出!!
「こ、こりゃあ……。」
オンスさんの目の前で、時空の海の扉の中から飛び出した農作物たちが、どんどんと倉庫に器用に積まれながら収まっていく。
最後にマジックバッグの中身も積んでいると、ヒラヒラと姿絵が天井から降ってきた。
それをオンスさんに手渡す。
「これもどうぞ。」
「親父……。たくさん食い物を持って帰るからって……。てめえが帰ってこれなきゃ、意味ねえじゃあねえかよう……。」
オンスさんは絵姿を抱きしめて泣いた。
「……叔父さん、あの革紐の首飾り、いったいどうしたの?」
「俺が昔ダンジョンで死体から双剣を貰ったことがあると言っただろ。あれがそれだ。」
「……じゃあ、かなり以前にお亡くなりになられていたんだね。」
「そういうことだな。持ち歩いてたが、まさか本当にご家族に返せる日が来るとはな。」
「ある意味本当にお世話になってたんだね。
オンスさんのお父さんに。」
「……そうだな。」
叔父さんはその双剣も、オンスさんに返そうとしたんだけど、形見分けとしてぜひ、叔父さんに持っていて欲しいとオンスさんに言われて、そのまま貰い受けることにした。
叔父さんも思い入れのある品だし、ありがたく受け取ることにしたみたい。
さて、オンスさんはだいじょうぶとして、とにかくこの国の食料事情だよね!
「ちなみにこの国の市場はどうなってるんですか?少しは食料が入ってきたり?」
「……いや。みんなそれを期待して毎日市場をうろついちゃいるが、何も来やしねえ。」
「オンスさん!僕ここで魚屋の支店を開きたいんですが、従業員を募集してるんです!」
「じゅ、従業員?」
「ぜひ、僕の店で働きませんか?」
「食べ物が手に入るのは有り難いが……、どうやってここまで運ぶんだ?」
「僕、転送スキルが使えるんです!」
「て、転送?っていうと、引っ越しとかに使う、まとめて荷物を送れる、あれか?」
「はい、そのスキルで、月に1回程度、まとめて魚の入ったマジックバッグを、オンスさんに預けますので、他に何人か、信用できそうな人を紹介して欲しいです!」
「それは別に構わんが……。この国の通貨は、よその国じゃ使えんだろ?」
失われた大地だから、そうなんだね。
でも、これはお金だけの問題じゃないよ。
僕は人間を救う方を選びたい!
施すのは簡単だけど、仕事を与えて稼いで欲しいから、僕の稼ぎにならなくても、オンスさんには魚屋をして欲しいんだ。
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