上 下
228 / 504
第2章

第228話 ダンジョンボスの最後

しおりを挟む
「さあ、これで鬼が消える心配はなくなりましたな。さすればそれがしの出番なり。
 種族スキル、──共闘!!」
 ギギルさんが種族スキルを発動させる。

「共闘?それってどんなスキルなの?」
「共闘は、仲間のステータスを一時的に5割引き上げるのにゃ!さあ、こっからにゃ!」
 5割!?凄い!!

 だから役に立つって言っていたんだ!
 獣人は、本来のスキルの他に、種族スキルまであるんだよなあ、いいなあ。
 人間にもあったらいいのにね。

「“爆炎”。“疾風”。“轟雷”。“暗黒”。」
 オニは次々と連続で魔法を放ってくる。
 普通の魔法は相殺出来たり、ノーベルさんの反射で防げるけど、暗黒が面倒くさい。

「み、見えぬ、くっ……!聖水を!」
「はい!」
 これ、僕がもともと持ってた聖水じゃ、全然足らないよ!全員がかからないとはいえ!

 そうこうしている間に、エルシィさんがオニと間合いを詰めてハンマーを振りかぶる。
「どーっせい!にゃあ!」
 ドガン!オニの頭に痛烈な一撃だ!

 オニの頭の防具がパカッと2つに割れた。
 オニがふらついてめまいを起こしている。
「アタシのスキル、重撃と会心の威力はどうにゃ!かなりこたえたにゃりね!?」

 エルシィさんは部位破壊に特化したスキル持ちなんだね。部位破壊でしか得られない素材があるから、冒険者をしたら高位ダンジョンで引く手あまたになりそうだね。

「“爆炎”。“疾風”。“轟雷”。“暗黒”。」
 オニはふらつきながらも、しつこく魔法を放ってくる。今度は僕もかかっちゃった!

「見えないですぅ。」
「下手に動いてはなりませんぞ!」
「とりあえず反射は出してるけど、どっちから来るのか分からないよ!」

「見えないにゃあ!しつこいのにゃあ!」
「わらわもか……。くっ……。」
「しもうた……!これでは戦えぬ……!」
「まさか全員か?アレックス!どうだ?」

「叔父さんまで!?僕もだよ!
 生命の海!抽出!真水!祝福を与える!」
「ぐあっ!!!?」
「にゃああああ!!!」

 被弾した音とともに、みんなの悲鳴が聞こえてくる。抽出が間に合わない!!
「みんなどこ!?」

「右斜め3アガ、エルシィさんですぅ。
 左斜め5アガ、マリーアさんですぅ。
 正面右手9アガ、エルシィさんですぅ。
 正面左手7アガ、セオドアさんですぅ。」

 ヒナさんがみんなの位置を正確に知らせてくれる。
「ヒナさん!ヒナさんは見えるの!?」

「僕もぉ、見えないですぅ。けどお、僕の種族スキルはぁ、気配察知なんですぅ。
 誰がどこにいるかぁ、分かるんですぅ。」

「そうなんだ!ありがとう!」
 僕は火力の4人を優先的に回復してから、自分に聖水を振りかけた。

 見えるようになった僕の目に入ってきたのは、高い位置に飛び上がり、真下目掛けて一直線にオニの甲冑を切り裂くルルゥさんだ。
 そうか!ルルゥさんは無事だったんだ!

「そこだ!」
 無防備なオニの腹を、叔父さんの一閃が切り裂く。連続攻撃は槍で食い止められた。

「“大爆炎”。“斬疾風”。“激轟雷”。」
「攻撃が強くなったにゃ!体力が半分を切った証拠なのにゃ!ここから先はみんなは下がるにゃ!当たったら即死もありうるにゃ!」

 エルシィさんが攻撃しつつ振り返って、ノーベルさん、ギギルさん、ヒナさんを1人ずつ見ながらそう言った。

「わかり申した!
 スキルは発動させておきまする!」
「助かるのにゃ!」

「みんなぁ、僕の周囲に集まって下さいぃ。ノーベルさんはぁ、もう反射しなくてもいいですぅ。種族スキル絶対防御発動ですぅ。」
 ヒナさんの周囲にシールドが展開する。

 絶対防御──!?なにそれ!?
「了解だよ!」
 シールドの効果を分かっているのか、ノーベルさんは反射をといてしまった。

「一定時間しかぁ、ききませんからぁ、その間にぃ、倒して下さいねぇ。」
 ヒナさん、一定時間なら僕のスキルで必ず守れるとか、そう言えば言ってた!

「ヒナさん、オニが魔法を放てなくなったらパラライザーを頼む!」
 と、叔父さんが叫ぶ。了解ですぅ、とヒナさんがのんびりと答えた。

「ぐっ……!」
 オニの強まった攻撃に、マリーアさんとルシーアさんの魔法で相殺しきれなくなる。
 僕、少しも近付けそうにないよ!だけど、

「“大爆炎”。“斬疾風”。“激轟雷”。」
 オニが呪文を唱えたのに、魔法が発動しなくなった。──魔力切れだ!!
 オニが最後の力で槍を振りかざす。

「ヒナさん、パラライザーを!」
「はいですぅ。」
 オニは槍を振りかざした体勢で固まった。

「アレックス!今だ!」
「うん!」
「──近くまで運びます。」
「え?」

 ルルゥさんが僕を抱えてオニの近くまで跳躍すると、高い場所から僕を落っことした!
「ち、血の海!!固定ダメージ!!」
 ──1、2、3、4、5。

 ドサッ。地面に着地、というか落ちる寸前で、再びルルゥさんが僕を抱きかかえた。
「グ、オォ……。」
 短い声を最後に、オニが消滅した。

────────────────────

ちなみに種族スキルが2つ以上ある種族は、獣神候補者の特記事項の種族だけです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...