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第2章

第194話 81番目の扉。料理人(料理あり)。

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「バイデン伯爵令息は、英雄候補者の1人だったよ、叔父さん。
 ──それも弓神で7%だった。
 叔父さん以外だと、最も高い数値だよ。」

「そうか。バイデン伯爵とその娘さんたちにはお会いしたことがあるが、ご子息がおられたのか。跡取りが出来ないと嘆いていたが。
 協力はして貰えそうな方なのか?」

 叔父さんも昔、キャベンディッシュ侯爵令息として、この国に来た時にお会いしたことがあるのかな?
 その時既に爵位を引き継いでいたんだね。

 遅くに出来たお子さんだとかで、かなり可愛がっている様子だったしなあ。お姉さんが3人いるんだけど、僕が会った時点で既に3人とも嫁いだっておっしゃってたし。

「バイデン伯爵令息の性格からして、ノリノリで協力してくれるとは……思うけど。
 ノリノリで人に話す気もするんだ。」
 僕は思わず眉を下げて目線を落とした。

「なるほどな。確かにそれはまずいな。」
「今はまだ話されると困っちゃうから、そこをどうにかしてからだよねえ……。」
「そうだな。そのほうがいいと思う。」

 僕としては、戦う意思のある人にやって欲しいと思っているから、そういう意味ではピッタリな人なんだけどね。
 己を誇示するのが大好きな方だからさ。

「そこは他の候補者も探してみてから考えることにするよ。先に他の扉を確認しよう?」
「そうだな、そうしようか。」

 僕と叔父さんは、次の扉の向こうを確認することにした。その次の扉は、81番・料理人(料理あり)とメモした部屋だ。

 お祖父さまくらいの大きさの部屋で、丁寧に手入れされている調理器具や、その人が作ったとおぼしき料理が、所狭しと並んでる。

「……どこかで見たことのある料理だな?
 どこの郷土料理だったか……。」
 叔父さんが首を傾げている。叔父さんはここにある料理に見覚えがあるみたいだね。

「とりあえず、行ってみよう。」
 心の中で時空の扉!と唱えて、出てきた扉を開けると、林のすぐ近くに煙の出ている煙突のある、小さなレストランが見えた。

 可愛らしいデザインの建物で、2階建てのクリーム色の壁に、赤っぽい茶色の屋根、周囲には花の鉢植えやら植物やらが、置いてあったり植えられたりしていた。

 お昼の時間じゃないからか、お客さんらしき人の姿も、店員さんの姿も、ここからは確認出来なかった。周囲に他の家がなくて、独立した建物だけど、お客さん来るのかな?

 少し高い丘の上にあるから、店の窓からの見晴らしは良さそうかも。
 このレストランの持ち主が、アイテムボックスの持ち主の子孫かも知れないな。

 僕らは林の中でいったん、時空の扉を消すと、人に見られていないことを確認しながら周囲を散策する。すると、遠くに海があるのが目で確認出来た。どこなんだろ?ここ。

「ここは……。そうか!ドッパーナ王国だ!あれはドッパーナ王国の郷土料理だったんだ!卵をふんだんに使った独特のパイは、ドッパーナ王国でしか作られていないからな。」

 と叔父さんが言った。
 ……ドッパーナ王国!!
 リシャーラ王国の敵対国じゃないか!

 地図でいうとリシャーラ王国の下。
 リシャーラ王国との間に他の国がいくつか存在していて、過去の塩戦争の時に、戦争をしかけてきた国の1つだよ。

 戦争が終わって、塩に関する協定が世界各国で結ばれた際に、自分たちの条件を飲まなかった、海のない国を恨みに思っているとかなんとかで、未だに仲が悪いままなんだ。

 交流も殆どないし、僕も歴史でしか知らない。ドッパーナ王国人に会ったことのある、リシャーラ王国人は少ないと思うし、それはドッパーナ王国側もそうなんじゃないかな。

 敵対国の人に協力を頼むとか、候補者がいたとしても難しそうだなあ……。
 でも、一応探してみないとだよね。
 むしろ、どうかいませんように。

 情報の海さん!候補者がいたら教えて?

【回答、勇者、聖女、賢神、闘神、弓神、獣神、龍神に変化出来うる候補者について。

 現時点で勇者に変化する可能性のある者について。
 ●セオドア・ラウマン。 
 勇者に変化する可能性、16.8%。

 現時点で聖女に変化する可能性のある者について。
 半径20リオ以内に該当者がいません。

 現時点で賢神に変化する可能性のある者について。
 半径20リオ以内に該当者がいません。
 
 現時点で闘神に変化する可能性のある者について。
 ●カワシー・チュムラ。
 闘神に変化する可能性、3%。

 現時点で弓神に変化する可能性のある者について。
 半径20リオ以内に該当者がいません。

 現時点で獣神に変化する可能性のある者について。
 半径20リオ以内に該当者がいません。

 現時点で龍神に変化する可能性のある者について。
 半径20リオ以内に該当者がいません。

 以上です。】
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